Appleは9月7日(米国太平洋夏時間)、米国本社にある「Steve Jobs Theater」においてスペシャルイベントを開催した。毎年、この時期のイベントはiPhoneやApple Watchの新製品を披露するために行われるが、2022年は両製品に加えて第2世代「AirPods Pro」も合わせて発表された。
今回のイベントはオンライン配信もある基調講演をメインに据えつつ、6月に開催されたWWDC22と同様に米国本社でも関係者を招いてハンズオン(体験会)などを開催するハイブリッド形式で開催された。情報密度の濃いプレゼンテーション動画で製品の概要を世界中に伝えると共に、現地に来た報道関係者は展示会場で実際の製品に触れることで、新製品の機能や性能を“実体験”として体感できるという二段構えである。
前段の基調講演は、現地取材をした報道関係者も配信されたのと同じものを視聴している。筆者自身も、基調講演についてはオンライン配信で見た皆さんと“同じ”情報を得たことになる。まだ見ていないという人は、Appleのスペシャルイベントサイトでアーカイブ版を視聴できる。
今回は、基調講演の全体をカバーするレポートではなく、そこで発表された「iPhone」「AirPods Pro」「Apple Watch」について、会場での取材から判明したことと、ハンズオンで感じたインプレッションを中心に語っていくことにしたい。
ここ数年のiPhoneを振り返ると、「iPhone 11」の世代から、搭載するプロセッサ(SoC)の構成、レンズ、OSなどを複数年に渡り継続して改良することで、カメラの性能を向上させることに力を入れてきた。
2022年の新しいiPhoneも、この路線から大きな変更はない。しかし、今回は「通常版(Proの付かないモデル)」と「Pro版(Proの付くモデル)」との間で“熟成”する方法論に違いがあるように思える。
今回、両者のディスプレイサイズがそろえられた。ベースモデルは6.1型、大画面モデルは6.7型のディスプレイを搭載している。
通常版に加わる大画面モデルは、「iPhone 14 Plus」と名付けられた。iPhone 8以来、実に5年ぶりの“Plus”である。一方で、iPhone 12(2020年モデル)から続いてきたminiモデルは投入が見送られている。
通常版とPro版を比較すると、アルミニウムとステンレスという素材の違いに由来する質感の違いからも異なる製品であることは明らかだ。通常版は「最高クラスのSoCを搭載しつつ、コストパフォーマンスを追い求める」という方向性で、Pro版は「入手しうる限り最高の技術やコンポーネントと素材を用いて最高級を目指す」ことを志向している。
同じ世代だけに、通常版とPro版のコンセプト、手法や一部の機能は共通している。しかし、今回のモデルは熟成の方向性に違いが見られる。
通常版(iPhone 14とiPhone 14 Plus)は、ここ数年のiPhoneが注力している「コンピュテーショナル・フォトグラフィー(演算による写真生成技術)」を生かしてカメラの品質を引き上げている(この点は後でもう少し詳しく説明する)。加えて、実はオーディオ性能も向上している。
一方、iPhone 14 Pro/Pro Maxは、入手できる中で最良なコンポーネント、それに見合う信号処理や演算性能を備えるSoC、そしてディスプレイを始めとするハードウェアを積極的に活用すべく、OSレベルで新要素を組み込んで“最高の1台”として仕上げられている。ステンレスフレームを始めとする外観だけでなく、中身でも上質さを追求した印象だ。
iPhone 14/14 PlusとiPhone 14 Pro/14 Pro Max、どちらも手抜きはなく、発売タイミングにおけるベストを尽くしていることは間違いない。しかし、開発の方向性に違いがあることははっきりとしている。
ちなみに、新しいiPhoneでは「衛星通信」と「物理SIMカードスロットの廃止」が話題となっているが、前者は米国とカナダのみで提供され(※1)、後者は米国モデル限定の要素だ。ミリ波の5Gへの対応も、引き続き米国モデルに限られている。
(※1)編集者注:日本で販売されるiPhone 14/14 PlusとiPhone 14 Pro/14 Pro Maxは、カナダと同一モデルとなる。ゆえに「衛星通信機能自体はあるが日本では有効化できない」という状況になると思われる
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