最後に、初めてモデルチェンジされることになった「AirPods Pro」についてもお伝えしたい。より詳しい評価は実機でじっくりと試してから下したいが、初代モデルとほとんど同じ見た目ながらも、中身がガラッと変わっている。
まず、音響や通信をつかさどるSoCが「Apple H2チップ」に変更された。H2チップは従来の「H1チップ」比で2倍の10億個のトランジスタを集積したことが特徴だ。
トランジスタの増加は、必ずしも音質の改善につながるとは限らない。しかし、演算能力の向上は音響処理の精度の向上にもつながる。中身の変化の多くは、このH2チップがもたらしている。
サウンドドライバーは、先代と同じ11mmサイズである。しかし、アンプが改良されたことで、特に低音域の再生能力が大きく改善している。実際に聞いてみると、その差は歴然である。
加えて、M2チップの演算能力を生かしてアクティブノイズキャンセルの性能も向上した。Appleによると、先代の最大2倍の雑音を消せるようになったという。ノイズは低域はもちろん、かなり高い帯域まで低減できており、明らかに先代よりも雑音をしっかりと消せるようになっている。「最大2倍」というのは、デシベル(dB)という単位で分かるものというものよりは、体感的な値であるようだ。
発売から2年たったこともあり、初代のAirPods Proは、ノイズキャンセリング能力において昨今のソニーやファーウェイのハイエンドイヤフォンから遅れを取っていた。しっかりと試さないと断言はできないが、第2世代のAirPods Proは業界トップのソニーを超えるノイズキャンセリング能力を持っているかもしれない。早くじっくりと比較したい所である。
イヤーチップは、従来の「S」「M」「L」に加えて「XS」サイズが追加された。耳穴が小さい人には朗報といえる。iOS 16から実装される予定の「空間オーディオ」の個別最適化(※2)を使えば、より個々人に合ったサウンド体験を期待できる。なお、この個別最適化は、新しいAirPods Proなら従来のAirPodsシリーズよりも高い精度で行えるという。
(※2)空間オーディオの個別最適化を利用するには、TrueDepthカメラを搭載するiPhoneが必要です
個人的に気に入ったのは、周囲の音が聞こえるようにノイズキャンセリングしてくれる「トランスペアレントモード」の改良だ。以前よりも自然に周囲の音を把握できる上、不自然に強調される音もない。このモードで極めてうるさい場所に行くと、80〜85dB程度の騒音レベルを基準に自動的にノイズキャンセリングが働き、耳を騒音から自動的に保護してくれる。
新しいAirPods Proでは、感圧センサーに加えてタッチセンサーを新規搭載している。これにより、スライド操作によるボリューム調整が“やっと”実現した。
このスライド操作には機械学習が導入されており、タッチセンサーによる誤動作がほとんど起きないように工夫されている。
バッテリー駆動時間も改善している。アクティブノイズキャンセリングを有効にした場合、単体では最長約6時間、充電ケース込みで最長約30時間使えるようになった。
充電ケースもパッと見では先代と変わりないが、良く見ると大きな変化が2箇所ある。まず、ストラップホールが追加された。「落下や紛失を防ぐためにストラップを付けたい」というニーズに応えた結果だろう。
そして、スピーカーが付いた。このスピーカーは音楽を再生するためではなく、ペアリングの完了通知、バッテリー残量の警告や紛失時の捜索のために使うものだ。紛失時の捜索にはUWB(超広帯域無線)を利用しており、ケースには「Apple U1チップ」が新規搭載されている。
ケースの充電はLightningケーブル、Qi規格に準拠するワイヤレスチャージャーに加えてApple Watch用の充電ケーブルも使えるようになった。Apple Watchユーザーは、より簡便にケースの充電ができるようになる。
こうして新製品を見ていると、Appleの製品に対する“自信”があらゆる側面から伺える。どのジャンルの製品においても、その自信は揺らぎない。
言い換えると、このことは「実物を見て使えば絶対に気に入ってもらえる」ということでもある。実物を使ってみてこそ、出来の良さが良く分かるというものだ。
発売に向けての実機レビューに期待してほしい。
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