「iPhone」「Apple Watch」「AirPods Pro」の“熟成”を選んだApple 現地で基調講演を見て得た実感本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/5 ページ)

» 2022年09月10日 11時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

思った以上にインパクトが強い「Apple Watch Ultra」

 Apple Watchは、いつも通りのアップデートとして「Apple Watch Series 8」が登場した。そして廉価モデルという位置付けの「Apple Watch SE」もハードウェアを刷新して第2世代となった。

 これら2モデルは、新たに自動車事故時の衝突検出機能が搭載された(iPhone 14シリーズにも新規搭載されている)。不意の事故に遭遇した際に自動的に通報してくれるという意味で便利な機能だ。

Apple Watch Apple Watch Series 8(左)と、第2世代のApple Watch SE(右)の登場は、ある意味で順当といえる
衝突検出 両モデルに新たに搭載された衝突検出機能。自動車の衝突事故が発生した際に自動的に緊急機関へ通報してくれる

 Apple Watch Series 8については、常時点灯モードの画面輝度が改善され、炎天下での見やすさが改善している。新たに皮膚温センサーを搭載することで基礎体温の計測も可能となった。

 今回の発表では特に女性の健康について強く訴求していた。基礎体温の測定機能は代表例で、基礎体温の継続的な計測を通して女性の排卵サイクルを推測し、適切な健康アドバイスを受けられる機能も備えている。

 なお、このアドバイスを受け取るには、5日以上連続して睡眠時にApple Watch Series 8を身につける必要がある。睡眠時にも身につけなければならないとなると、バッテリー駆動時間が気になる所ではある。バッテリー駆動時間は最長18時間(低電力モード時でも36時間)とされているが、睡眠時にも身につけるとなると、充電するタイミングと合わせて悩ましい部分もある。

 継続的な着用で、継続的なヘルスチェックを行う――そのことを実現するための道のりは、まだまだ途上なのかなと思う。ある意味で、今回のSeries 8は「スタート地点」ともいえそうだ。

体温計測 基礎体温を計測して、女性の排卵サイクルを予測し、健康上のアドバイスを受けられるようになった。ただ、5日以上連続して睡眠時にApple Watchを装着する必要があるので若干ハードルが高いようにも思える

 一方で、Apple Watchの一員に加わった「Apple Watch Ultra」は、Apple Watchを含む既存のスマートウォッチにはない魅力を備えている。

 「アウトドア向けスマートウォッチ」あるいは「本格的なスポーツ向けスマートウォッチ」といえば、Garmin(ガーミン)が草分け的存在である。同社のスマートウォッチと比べると、Apple Watchはスポーツ愛好者向けに訴求したとしてもカジュアル層にしか響かないと筆者は感じていた。同じように感じる読者の皆さんもいらっしゃるだろう。

 Apple Watch Ultraは、このような「カジュアル層向けでしょ?」という声に真っ正面から答えた新モデルである。軽量かつタフなデザインを実現するために、ケースはチタンを採用した。ディスプレイガラスは、従来のApple Watchのイメージから一線を画する“平面の”サファイヤガラスを採用している。ガラスをフラットとしたのは、岩などに当てた際にガラスへの直接的なダメージを軽減するためだ。MIL-STD-810H(MIL規格)に準拠した耐衝撃/耐環境性能も備えている。

 頑丈ゆえにケースは49mmと大きいが、そのより明るいディスプレイとより大きなバッテリーを搭載している。駆動時間は最長36時間と、Apple Watch Series 8の2倍だ。2022年内に行われる予定のソフトウェア更新で追加される「低電力モード」を使えば、最長で60時間の電池持ちを実現する。

 手袋をしたまま操作することを想定して、デジタルクラウンやボタンも大きくなっている。屋外利用を想定して、大きなスピーカーと2基のマイクも備えている。

Apple Watch Ultra Apple Watchに新たに加わる「Apple Watch Ultra」は、カジュアルなスポーツ向けという印象を大きく覆す「ガテン系」のモデルである
右側面 サイドボタンとデジタルクラウンは従来のApple Watchよりも明らかに大型化している。画面ガラスもフラットになっている
左側面 左側面にはカスタマイズできるアクションボタンが搭載されている。こちらもサイズが大きく押しやすい

 想定する用途が用途だけに、測位機能も強化されている。従来のApple WatchではGPSはL1波(1575.42MHz)のみ対応していたが、Apple Watch UltraではL5波(1176.45MHz)も受信できるようになっている。

 L5帯はL1帯よりも電波が強く、屋内や高層建造物が立て込んでいる地域でもナビゲーションを行えるようになるという。両方の電波をつかめる状態なら、位置や方向の精度がより高まる。

L5 GPS Apple Watch Ultraでは、GPSにおいてL1波に加えてL5波も受信できる。両方を受信できる環境では位置や方向の精度が向上する他、L1波の届きにくい屋内や高層建造物が立て込んでいる地域でもL5波を使ってナビゲーションを継続できる。なお、Apple Watch Ultra(とSeries 8)はGLONASS、Galileo、QZSS(みちびき)、BeiDouによるナビゲーションにも対応している

 個人的に気になっているのが、Apple Watch Ultraで利用できる「Oceanic+アプリ」だ。

 このアプリはキューバダイビングとフリーダイビングでの利用を想定しており、Apple Watch Ultraをダイビングの際に利用する「ダイビングコンピュータ」に変身させる。ダイビングプランの作成、ダイビング中の情報表示、エグジット後の潜行深度の履歴確認、エントリー/エグジットポイントの記録など、ダイビングコンピュータに求められる機能を一通り備えているという。

 このアプリは、iPhone版の同名アプリとも連動する。iPhoneを使えばダイビングログの作成が楽になりそうである。実際に使ってみなければわからない点も多いが、それにも増して個人的な期待は大きい。

 Apple Watchは長年、スマートウォッチの分野でナンバーワンだったが、一方で良くも悪くも安定飛行を続けていた感もある。Apple Watch Ultraは、久々に「これは使ってみたい!」と思わせるモデルである。

EN13319 Apple Watch Ultraは水深40mまでのスキューバダイビング/フリーダイビングでの利用を想定して開発された。ダイビングデバイスの国際規格「EN13319」にも準拠している
Oceanic+アプリ Oceanic+アプリを使うと、Apple Watch Ultraをダイビングコンピュータとして利用できるようになる。潜水中はデジタルクラウンで必要な操作を行える。減圧限界、急速な浮上や安全停止に関するアラートもしっかりと出せるようになっている
実際に装着 Apple Watch Ultraを実際に身につけてみる。このループ(バンド)は、トレイルランでの利用を想定した「トレイルループ」である
オーシャン こちらは、水泳やダイビングでの利用を想定した「オーシャンバンド」。ウエットスーツの上から着用することも考慮済みだという

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