「ラインインタラクティブ方式」の基本的な設計は、先に紹介した常時商用給電方式と同一だ。違いは商用電源の入力にトランス(変圧器)を通している点にある。
基本的にその長短も常時商用給電方式と同じ……なのだが、トランスの搭載が大きなメリットになることもある。
常時商用給電方式では通常時に商用電源を供給する。そのため、先述の通り停電以外の商用電源におけるトラブルには対処しきれない。
その点、ラインインタラクティブ方式では途中にトランスを挟み込むため、商用電源の電圧変動に対してある程度の耐性がある。電源の電圧変動に弱い機器と組み合わせやすいことがメリットである。
常時商用給電方式と比べると、この方式は回路にトランスを組み込む分サイズと重量が増してしまう。もちろん、価格もその分だけ上がる。この方式は電源の周波数までは安定化できないため、周波数変動が問題となりうる環境には適さない。
その他のデメリットは常時商用給電方式と同じ……なのだが、最近はラインインタラクティブ方式でも停電時に(疑似)正弦波を出力できるUPSが増えている。
常時商用給電方式と比べると大きく重たく高いとはいえ、後述する常時インバータ給電よりは小型軽量で手頃なことは間違いない。よほどのミッションクリティカル用途でない限りは、オフィスユースのUPSはラインインタラクティブ方式で十分である。
「常時インバーター方式」では、商用電源“も”コンバーターでいったん直流に変換し、インバーターで交流に再変換してから機器に電源を供給する。バッテリーへの充電も常時行われており、停電が発生した際に電源の“瞬断”が発生しないことが大きな特徴だ。
常時インバーター方式は、商用電源もいったん直流に変換し、それを交流に再変換してから機器に供給している。一見すると無駄に見えるかもしれないが、何らかの理由で商用電源の電圧や周波数が揺らいだり、商用電源に瞬断が発生したりした場合でも、電圧や周波数の安定した電気を供給できるというメリットがある。
このようなメリットから、電源の瞬断や電気の不安定化によるデータ破損を避けたいミッションクリティカルなワークステーションやサーバでは、この方式のUPSが好んで使われる傾向にある。
その仕組み上、常時インバータ給電方式のUPSは前の2方式と比べると電気回路が複雑になる傾向にある。そのため、どうしても価格は高くなってしまう。同じバッテリー容量なら、サイズも大きめになってしまう。
また、常にコンバーターとインバーターを稼働することになるため、交流⇔直流の変換に伴う電力効率の低下も避けられない。言い換えると、他の方式と比べて電気代がかさみやすいということだ。
率直にいうと、家庭や一般的なオフィスに常時インバータ給電方式のUPSは基本的に“オーバースペック”である。それでも、非常に大切なデータを保存するサーバやNASには常時インバータ給電方式のUPSを組み合わせることも検討した方が良い。
説明が長くなってしまったが、3つの方式のメリットとデメリットを改めてまとめると、以下の表に示した通りとなる。
次回は、本連載のまとめとしてUPSを具体的に選ぶ際の注意点について詳しく紹介していく。
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