最後に、Wi-Fi(無線LAN)の電波を使った「人体スキャン」のデモを紹介する。
電波にとって、人体というものは“やっかいな”障害物である。とりわけ比較的高い周波数帯を利用する携帯電話やWi-Fi(無線LAN)は、手や体によってアンテナが遮られるだけでスループット(実効通信速度)が有意に低下しやすい。普段は問題なく通信できているように見えるWi-Fiだが、実は人やモノの動きによって電波状況は目まぐるしく変わっているのだ。
しかし、視点を変えてこのことを捉えると、専用の人感センサーが無くても人物の接近を検知できるかもしれないということになる。「Wi-Fi Sensing」と名付けられたこのデモは、遮られた電波をもとに人の接近を検知しよう、という趣旨のものだ。
近年のPCはスリープからの復帰も早くなり、ユーザーのストレスもかなり低減された。しかし、それでも復帰までに数秒のラグが発生することも少なくない。Wi-Fi Sensingでは、人の接近を検知したタイミングでスリープの解除を始めるので、着席するタイミングまでには解除が完了してログイン操作を行えるため、スリープにまつわるストレスを軽減できる。
ここで気になるのは「誤反応」だが、このWi-Fi Sensingは「PCの近くに手を伸ばした」というだけでは反応しないようになっており、あくまでも「人が近づいて着席しようとしている」動きに対して反応するようにチューニングされている。
逆に、Wi-Fi Sensingでは人の離席を検知して自動的にPCをスリープに移行させることもできる。PCの操作は不要で、シンプルに席を離れるだけでよい。スリープに移行するまでの待機時間もない。
Wi-Fi SensingをWindows Helloなどの生体認証と組み合わせれば、利便性とセキュリティの両立を図りやすい。使い方次第では、かなり面白い技術となりそうである。
無線LANの電波の遮蔽(しゃへい)具合から人物の接近/離隔を検知する「Wi-Fi Sensing」のデモ。写真の右側にあるデスクトップPCがそのデモ機で、本体に近づくとスリープが自動的に解除され、イスから離れると自動的にスリープに移行する以上が、Intelが公開した技術デモの様子である。意外と地味なものが多かったと感じるかもしれない。
しかし、デモで披露された技術の中には、Intel Computational Cameraのように既に商用製品に反映されているものもある。そうでないものも、将来の商用化を前提にして研究されているようだ。
思うに、今回のデモの狙いは「IDCではこんなに“身近な”技術を開発していますよ」改めてアピールすることにあったのだろう。遠い中東の地で研究開発されたものが、日本へとやってきて私たちの生活にちょっとした変化をもたらしているというのはなかなかに感慨深い。
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