IntelのCPUでは、モバイル向け第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)から「Thunderbolt 4」に対応している。同社では、最新かつ協力な接続インタフェースとして、このThunderbolt 4をプッシュしているのはご存じの通りである。
IDCによると、Thunderbolt 4にはIDC発祥の技術が盛り込まれているという。デモンストレーションでは、そのパフォーマンスをアピールする「Thunderbolt Monitor Stand」という周辺機器が展示されていた。その名前から察せられる通り、Thunderbolt 4ドッキングステーションとしても利用できるディスプレイスタンドである。
Thunderbolt 4では、2台の4Kディスプレイに同時出力できる。今回のデモ機では、ノートPCから出た1本のケーブルが、2台の4Kディスプレイにつながる構成とされていた。
Thunderbolt Monitor Standは、自身を“ハブ”として複数のThunderbolt 4デバイスをデイジーチェーン接続(数珠つなぎ)できるようになっている。スタンドにはWebカメラが付けられており、その他の周辺機器はThunderbolt 4ポート、HDMI出力端子やUSB Type-A端子などを介して接続する格好だ。
このスタンドにあらかじめ周辺機器をつないでおけば、1本のThunderbolt 4ケーブルでさまざまな周辺機器を一発でつなげる――Intelとしてはこの利便性をアピールしたかったようである。
冒頭でイスラエル国内のスタートアップ企業の話に触れたが、Intelが同国において実行した企業買収は、ソフトウェアやAI(人工知能)関連のものが中心である。特に、画像の処理/認識やデータ処理に関するものを始めとして、機械学習などAIに関連する技術に強みを持つ企業の買収が目立つ。
その具体例としては、2017年に実行されたMobileye(モービルアイ)の買収がよく知られている。同社はイスラエルが本拠地であり、自動車の自動運転を実現する上で欠かせない画像処理技術などの研究/開発を手がけている。
その他、2016年にはVPU(Visual Processing Unit)の開発を手がけるMovidiusを、2019年にはNPU(Neural Processing Unit)の開発を手がけるHabana Labsを買収している。Habana Labsはイスラエルが本拠地である一方、Movidiusはアイルランド発祥の米国企業である。IDCは、Intelが買収したイスラエル国内外のAI関連企業の技術を“統合して”研究/開発する拠点としても機能しているという。
近年、ArmアーキテクチャのSoC(System-On-a-Chip)では、機械学習の演算処理に特化したNPUやVPUをCPUとは別に搭載する傾向が強まっている。この点においてIntelも同様の動きを見せており、第13世代Coreプロセッサ(開発コード名:Raptor Lake)の次世代CPUとして開発が進んでいる「Meteor Lake(開発コード名)」ではプロセッサ内にVPUを統合する予定となっている。
今回のデモでは、既存のPCにMovidiusが開発したVPUを搭載する形でデモ展示されていたが、2023年に登場するであろうMeteor Lakeでは、追加のハードウェアを用意することなく高速な画像解析処理を行えるようになる。現在、Movidius上で動作する機械学習フレームワークとして「OpenVINO」や「Windows ML」が用意されているが、今後はx86ベースのPCで使うことを念頭に置いたライブラリやアプリケーションが登場することになりそうだ。
一方で、今後は「Neural Compute Stick」のような形でのMovidiusの単体提供がフェードアウトしていくことになると思われる。主に組み込み用途の世界でMovidiusが開拓してきた市場に、VPUを統合したIntel CPUがどれだけ食い込んでいけるかも気になるところだ。
他方のHabana Labsが開発している「Gaudi」は、Amazon EC2 DL1のようなクラウドでの機械学習インスタンスの提供もあるため、データセンターを含むサーバサイドでの市場拡大を目指すことになるだろう。
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