なぜ「iPhone 14 mini」がなくなって「iPhone 14 Plus」が出たのか 実機を触って分かったこと:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

» 2022年10月06日 21時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

Plusの一方で姿を消した「mini」はどこに?

 ところで、2022年の新しいiPhoneでは、Proではない大画面モデル(Plus)が追加された一方で、5.4型ディスプレイを搭載する「mini」モデルが無かったことも話題となった。大画面モデルが登場した代わりにコンパクトモデルが姿を消したことについて、「miniは切り捨てられたのではないか?」という声もあるようだ。

 先述の通り、Androidスマホを中心に、スマホにおける大画面化トレンドは揺るぎないものになっている。一方で、(iPhoneとしては)大画面化にかじを切り始めたiPhone 6シリーズの後継モデルであるiPhone 6sシリーズが登場したあたりから「手のひらに収まるiPhoneがほしい」という声が少なからず聞かれるようになった。

 その後、iPhone 5sのボディーをベースとする初代「iPhone SE」が登場したことで小型化を望む意見はいったん沈静化したが、第2世代のiPhone SEがiPhone 8のボディーをベースとしたことで、「小さなiPhone」へのニーズがより大きく巻き起こった。

iPhone SE 大型化傾向の始まったiPhoneにおいて、ある種の救世主となった初代「iPhone SE」

 Appleとして、そんな声に応えて登場したのが「iPhone 12 mini」だった。いわゆる「SE」ではないモデルで、初めてコンパクトなバリエーションを用意したわけだが、最終的な評判は必ずしも良いものではなかった。

 念の為に書き添えると、スマホ全体で見るとコンパクトモデルへのニーズは高くない。しかし、「コンパクトなiPhoneがないから買い換えたくてもできない」という声は目立つ。

 Appleが売上の内訳を公開していないこともあり、miniモデルが見送られた理由について、さまざまな憶測を呼んでいる。しかし、Androidスマホでもコンパクトモデルがヒットしているという話もない。ソニーがハイエンドなコンパクトモデルとして「Xperia 5シリーズ」をリリースしているが、どちらかというと例外的な存在である。

 しかし、2022年のiPhoneにおいてminiがなかったことをもって「これからはminiを作らない」という意思表示とは言いきれないと考える。iPadにおける「iPad miniシリーズ」を例に取ると、決してメインストリームのモデルではなく、頻度は低いもののモデルチェンジは実施されている。

 これと同様に、iPhoneのminiモデルも「1年ごとのモデルチェンジをやめた」というだけという可能性も否定しきれない。

iPhone 12シリーズ 「コンパクトなメインストリームiPhone」として登場したiPhone 12 mini(右)。「iPhone 12 Pro Max」(左)と比べるとかなりコンパクトである

 Appleの製品ラインアップを振り返ると、最近は基本機能が充実した十分に成熟した製品を「SE」として発売し、売上台数としては最も大きなボリュームを稼ぐというパターンも見られる。iPhoneとApple Watchがその典型例だ。

 一方で、先進的な技術をいち早く取り入れ、機能でも体験の質でも新しい価値を作り出し、ブランドを支える役割は上位モデルが担っている。「数が出る/出ない」ではなくApple製品を買ってくれている消費者全体の満足度を高めることが基本戦略といえる。

 iPhone 12 miniの後継モデルとして、翌年に「iPhone 13 mini」が登場したのは、カメラの改善やバッテリー駆動時間の向上といった「コンパクトだけどハイスペックなモデル」の満足度をキッチリと高めることで、上位製品や“真の”メインストリーム製品である第3世代のiPhone SEの売り上げに貢献するとAppleが考えた結果だと思われる。

 2022年のiPhone 14シリーズは、スペックにおいてiPhone 13シリーズからの変更点は少ない。ゆえにiPhone 13 miniを継続販売すればよい――あくまで予想でしかないが、このような判断からモデルチェンジを見送った可能性もある。

iPhone 13 mini iPhone 14 miniは出なかったものの、iPhone 13 miniは継続販売されている。本当にminiラインを諦めたのかどうかは、答えを出すにはまだ早い

「プレミアムコンパクト」は難しいのだろうか……?

 自動車の世界では、一時「プレミアムコンパクト」という言葉が流行した。その呼び方の通り、「プレミアムカー」に搭載されたエンジン、足回り、ボディーや内装の設計をコンパクトカーに落とし込もうという考え方だが、その発想に基づく「プレミアムコンパクトカー」に大ヒット作が出たかというと、それほどでもない。

 スマートフォンでも同じようにプレミアムコンパクトという考え方はある。先に挙げたソニーのXperia 5シリーズはその典型例で、同シーズンに発売されたフラグシップモデル「Xperia 1シリーズ」の基本スペックを維持しつつ小型化している。コンパクトでハイスペックということで毎年大きな話題を呼ぶものの、セールス的に大ヒットしているかというと、それほどでもない。

 話をiPhoneに戻すと、iPhone 12 miniが不評だった一番の理由はバッテリー容量の小ささである。ごく普通に使っても「1日持たない」という声は少なくなかった。それだけに、Apple自身もiPhone 13 miniの発表時にバッテリー駆動時間の改良を誇らしげに語っていた。

 しかし、“サイズ”は簡単に乗り越えられないハードルである。大きなボディーを持つプレミアムモデルのエッセンスをコンパクトなボディーに収めようとすると、おのずから限界が生じる。このことは自動車もスマホも変わりない。iPhone 12 miniは、iPhone 12と同じ機能を載せるためにバッテリー容量が犠牲になってしまったのだ。

 先述の通り、iPhone 14シリーズは放熱設計を改善している。今回iPhone 14シリーズにminiがなかったのは、満足の行く放熱設計とバッテリー駆動時間をminiというフォームファクターでは両立できなかったからではないだろうか。

 技術は日進月歩である。だからといって、「来年になればminiが復活する」とは言いきれない。iPad miniの例を考えると、そのサイズ感で上位モデルと同じ使い勝手を実現できるSoCが登場したタイミングでモデルチェンジをして、それまでは旧モデル(iPhone 13 mini)の販売継続で乗り切るというシナリオが一番現実的だろう。

 夢はあるが簡単に実現できない――それがプレミアムコンパクトなのかもしれない。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月24日 更新
  1. “置き場所に困る”大容量ポタ電の壁を打破! 冷蔵庫を3日動かすEcoFlow「DELTA Gen4」シリーズが日本上陸 (2026年10月23日)
  2. 若者向けのカラフルな新「Dell 14S」が日本上陸 11月1日まで4.5万円引きの14万9800円から (2026年10月22日)
  3. 折りたたみ型から薄型まで! スマホやタブレットで“本気”の文字入力に使える持ち運び用キーボードを選ぶコツ (2026年10月23日)
  4. FCCLが「FMV Keyboard X」の一般販売を開始 ハイスペックマウス「FMV Mouse X」も同時発売 (2026年10月22日)
  5. 「Galaxy Watch9」を1週間使って分かったこと Pixel Watchと比べた使い勝手は? (2026年10月23日)
  6. 「iPhone Duo」を1週間使って分かった、全部盛りではない“上質さ” 心地いい開閉ヒンジの内部を見るために“非破壊検査”してみた (2026年10月21日)
  7. スマホは「バッグの中」から「外」へ AULUMUのスリングバッグ2種で移動時のプチストレスを解消した (2026年10月22日)
  8. 天空が12月25日に発売する「GPD WIN Max 3」国内正規版 実機に触れてきた (2026年10月23日)
  9. 約22万円の新型「Mac mini」で初めてのローカルAI体験 ストレージの価格高騰対策にピッタリかも (2026年10月20日)
  10. PFUから33万円キーボード「HHKB Professional Elite」登場! 英語配列のみで有線特化の“原点回帰” 全世界300台限定 (2026年10月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー