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「DXには決断力が必要であることを伝えたい」とアドビ社長がこだわるワケ IT産業のトレンドリーダーに聞く!(アドビ後編)(2/3 ページ)

» 2022年11月15日 11時30分 公開
[大河原克行ITmedia]

デジタルで体験/貢献できるものは幅広い アドビがハブとなって連携

―― 「デジタル」という言葉を使ったことで、コンテンツ制作やコンテンツ配信といった限られた領域のソリューションだけでなく、より幅広い範囲で社会貢献をしていこうという意図も感じられます。

神谷氏 デジタルで体験できるものは幅広く、デジタルが貢献できる範囲は幅広いといえます。日本でも5G時代が到来し、このような新たなテクノロジーを活用することで、当社が貢献できる範囲はさらに広がるといえます。

 「心、おどる、デジタル」は、

  • Digitalize」(ペーパーレス革命は、いつもここから。)
  • Delight」(データをみきわめ、体験でつなぐ。)
  • Amaze」(クリエイティブで、常識をうごかす。)
  • Foster」(次のデジタルへ、解像度を上げる。)

 の4つの要素で成り立っています。

 これらは、Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloudの全てを組み合わせることで実現できるものです。顧客体験を高めるためには、コンテンツを作るだけでなく、コンテンツを配信しなければならず、これを成し遂げるには、3つのクラウドソリューションを組み合わせる必要があります。

 中には、顧客体験を高めるにクラウド同士の連携をもっと強化しなくてはならない部分もあり、その点については日本からの声として、本社にフィードバックするといったことも積極的に行っています。

 今、この4つのテーマごとに、さまざまな部門の社員が参加するバーチャルチームを作り、当社はどんなことができるのかといった議論を行い、それに向けた施策を考えています。こうした横断的な活動によって、当社が関わることができる範囲が広がり、当社による顧客体験を向上させることができ、All Adobeとしての提案が加速できるといえます。

4つの要素で成り立つ「心、おどる、デジタル」(同社の会社紹介より抜粋)

 デジタルを活用して顧客体験を高めるのは、多くの企業に共通した課題です。ただ、お客さまと話をすると、どこからやっていいのかが分からないという声がとても多いのです。また、DXに取り組みたいけど、コンサルティングファームなどに相談するほどの費用はないというお客さまも少なくありません。

 そこでアドビでは、デジタルストラテジーグループ(DSG)と呼ぶ組織を強化しました。2019年には組織化していたのですが、私が社長になって以降、この陣容は約10倍に増やしています。コンサルティングファームの出身者などで構成しているチームで、製造や金融などの各業界に精通したエキスパートの陣容を強化しました。お客さまの課題を聞き、お客さまの現状を把握し、同業他社とのベンチマークや、異なる業界の成功事例などを紹介し、課題を元にした対話を進めています。

 ユニークな例の1つとして、日本では同じ業界内であっても、業界団体の活動などを通じて、ライバル企業同士が横連携することがあるのですが、海外の同業他社との連携となると一気に少なくなるというケースがよくあります。グローバル企業であるアドビが間に入って、海外の同業他社とつないで情報を交換したり、連携を深めたりといったことが始まっています。デジタルを軸にして、当社が果たす新たな役割の1つともいえます。

 お客さまに話を聞くと、デジタルマーケティングをやりたいということだけではなく、紙を減らしたい、充実したWebページを作りたい、全世界にいるクリエイターを結ぶワークフローを作りたいなど、課題はさまざまです。とはいえ、ここに共通しているのは、これらは全てデジタル体験を向上するために、各社が持っている課題であるという点です。

 また、日本の経営者に多いのが、コスト削減についてはデジタル化の効果を理解できるのが、デジタルによって、どれぐらい売上げを高めることができるのかといったイメージが湧かないというケースです。言い方を変えると、営業担当者を1人雇用すると、どれぐらい売上げを高めることができるのかは読めても、Webサイトを変更することで、どれだけ売上げが上昇するのかといったことは経験がないため理解しにくいのです。

 その点は事例をお見せしながら、理解を深めてもらうといった活動を進めています。また、かつてのようにソフトウェアを販売することを前面に出したビジネスモデルでは、デジタルを活用した課題解決にはつながらないことも明らかです。お客さまの課題に向き合い、お客さまと歩調をあわせながら、日本の企業のDXの推進を支援していきます。

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