コロナウイルスの流行から世界情勢の不安定化、製品供給網の寸断や物流費の高騰、そして急速に進む円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。連載第2回は日本HPだ。
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日本HPが、国内PC市場において、トップシェアを維持している。2022年第3四半期(2022年7〜9月)のブランド別シェアは16%となり、これで4四半期連続でのトップシェアとなった。
日本HPの岡戸伸樹社長は、「法人向けPC、個人向けPCともに、勢いを維持しており、日本HPが提供する価値を届けることができている」と、その手応えに自信をみせる。日本におけるハイブリッドワークの広がりなど、新たなニーズが生まれる中で、それらに最適化したPCや周辺機器の品ぞろえの強化によって、PCビジネスの拡大につなげている。
今回の「IT産業のトレンドリーダーに聞く!」では、岡戸社長に話を聞いた。前編では、通期の国内トップシェア奪還を射程圏内に捉えた日本HPのPC事業を中心に、同社の取り組みを追っていこう。
―― 2021年11月の社長就任から、1年が経過しました。社長1年目の成果はどう自己評価していますか。
岡戸氏 前任の岡さん(岡隆史氏)が、長年に渡り築いてきた日本HPの信頼を維持し、そのやり方を踏襲し、継続していくことに力を注ぎました。また、パートナー企業各社とのリレーションシップの強化を行い、さまざまな活動を行うことができた1年でもありました。うまくバトンを受け継ぐことができたと思っています。
最優先事項である引き継ぎをきちっと行い、これまでの信頼を元に、世代交代によって新たな経営体制に移行し、お客さまやパートナー各社に、その体制に期待をいただけるところまできたという点では、100点満点だったといえます。ただ、やるべきことはたくさんありますし、解決しなくてはならない課題もあります。その点では決して満足はしていません。
振り返ってみますと、コロナ感染の継続や円安、部材価格の高騰など、急激な変化が相次いだ1年でした。厳しい環境での船出となったわけですが、これも見方を変えれば、さまざまなことを考え、実行に移すことにつながっており、私自身はこの状況をネガティブには捉えていません。
むしろ、これをチャンスに位置づけて、ビジネスの舵取りをしていくというマインドを維持できたといえます。事業計画は立てますが、先を予測することが難しい時代です。大切なのは外部環境の変化をいち早く捉えて、それに対して、私たちの内部環境をしっかりアジャストすることです。
例えば、為替の変動に対して、販売価格はどうアジャストしていくのか、供給状況が不安定になる中でも、どの製品を優先してそろえていくのかといったことにも、柔軟に対応していかなくてはなりません。
コロナ禍では在宅勤務が増えたこともあり、ノートPCの販売比率が一気に増加しましたが、今度は行動制限が緩和されたことで、オフィスなどで利用するデスクトップPCの販売比率が急に上昇するといったことも起きました。こういった変化に遅れることなく、しっかりと対応することに力を注いできた1年だったといえます。
親会社のHPはシリコンバレーで1939年に創業し、80年以上の歴史を持ちます。その間、文字通りいろいろな困難に直面してきました。困難を超えて生き続けてきたレジリエンスこそがHPのDNAであり、この厳しい環境下においても、それが発揮できたと思っています。
外部環境は常に変化しており、悪い時があれば、いい時もあります。直近の部分だけを見て悲観的になるのではなく、今できることに集中し、社員とのコミュニケーションを緊密にし、ポジティブに取り組んできた1年だったといえます。
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