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「チャンス」を的確に生かす日本HPが躍進する理由IT産業のトレンドリーダーに聞く!(日本HP 前編)(2/3 ページ)

» 2022年12月19日 12時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

日本HPが捉えたチャンス ハイブリットワークの定着

―― 厳しい環境の中で、日本HPが捉えたチャンスとは何ですか。

岡戸氏 1つは、ハイブリッドワークの定着です。調査によると、コロナ前に比べて、ハイブリッドワークが可能になった人は約3倍に増加しており、都心部においては約5割の人たちが、ハイブリッドワークが可能になっています。

 これは、当社にとっては大きなチャンスです。ハイブリッドワークでは、さまざまな環境で利用することが想定されますが、どんな環境においても、より良い映像で、より良い音声で、会議や商談を行いたいというニーズが高まり、そこに当社の強みが発揮できました。

 HPが2022年8月にグローバルで実施したハイブリッドワークに関する調査では、興味深い結果が出ています。この調査では、日本からは1024人が回答しており、この部分を抽出してみると、日本では、ビデオ会議に参加した際に、音質や画質の悪さに、頻繁もしくはときどき直面したと回答した人の割合が50%以上となり、バックグラウンドノイズの問題に、頻繁もしくはときどき直面したことがあると回答した人の割合は40%以上にも達しています。

 こういった課題に対応できるように、日本HPのPCでは、5Mピクセルのカメラを搭載することでシャープな映像を実現、周囲の明るさを判断して自動的に調整する機能を備えた他、移動してもフレームを自動調整する「HP Auto Frame」、音声の明瞭さを自動的に最適化し、マスクを着用していても声がはっきりと聞こえる「HP Dynamic Voice Leveling」などの機能を装備しています。ノートPCから3メートル以内であれば、音をしっかりと届けることができるのが当社のPCの特徴です。

同社の13.5型モバイルPC「HP Elite Dragonfly G3」では、画面上部に約500万画素のWebカメラを内蔵し、高品質なビデオ会議を実現する 同社の13.5型モバイルPC「HP Elite Dragonfly G3」では、画面上部に約500万画素のWebカメラを内蔵し、高品質なビデオ会議を実現する

 実は、これらの機能のベースになっているのは、HPのWeb会議ソリューション「HP Presence」において実現していた技術です。HP Presenceでは、ニーズに合わせた機器の組み合わせが可能であり、いろいろなタイプの会議室で、スムーズなコミュニケーションが可能になります。

 AIを活用することでカメラが人を追随したり、ノイズを除去したりといったことが可能で、こういったHP Presenceで培った会議ソリューションのノウハウが、そのままHPのノートPCなどに活用され、会議システムに近い体験ができるようになっています。

日本での展開も始まった「HP Presence Meeting Room Solution」 日本での展開も始まった「HP Presence Meeting Room Solution」。多彩な会議室向けシステムのデバイスが用意される

 当社のPCは、ハイブリッドワークに最適な機能を搭載したことで、新たな需要を取り込むことができているというわけです。HP Presenceは、日本でも2022年11月から提供を開始しており、今後は、会議ソリューションそのもののビジネスも加速していきます。

 一方で、チャンスという点では、周辺機器ビジネスも当社にとって、コロナ禍で得た大きな機会だったといえます。

周辺機器ビジネスでも訪れたチャンス

―― それはどんな点ですか。

岡戸氏 具体的には、在宅勤務における生産性を向上させるという観点で、周辺機器が注目を集めたケースが挙げられます。例えば、HPの周辺機器では、エルゴノミクスデザインを採用したデバイスや、リストレストなどを取りそろえています。

 長時間作業を行う際の負荷を軽減したり、大画面モニターや扱いやすいキーボードなどを使ったりすることにより、生産性を向上させることができます。実は、私の自宅でも、PCに周辺機器を追加して、かなり生産性が上がりました。いわば実体験での話なんです(笑)。

 最初は、日常使っていたノートPCで仕事をしていたのですが、長時間作業をしていると目や体が疲れますし、外光が差し込むと画面が見えにくくなったりといった課題がありました。そこで、23型の大画面モニターを導入したり、HyperX(2021年4月に買収)のキーボードだけでなく、ヘッドセットやマイク、マウス、リストレストも追加しました。

岡戸社長の自宅デスクトップ環境 岡戸社長の自宅デスクトップ環境。HyperXのゲーミングデバイスが多数用意されている。一見したところ、ゲーマーのPCのようだが立派にビデオ会議に最適化されている

 HyperXはゲーミングPC用のブランドで、キーボードの色は派手に変化しますが(笑)、キーのタイプ感がよく、とても気に入っていますし、何よりも、タイプミスが減り、生産性が大幅に向上しました。また、外付けマイクの効果も高く、オンライン会議でも声が聞き取りやすくなったとよく言われます。リストレストも手首の疲労を軽減できていることを実感しています。

―― HPでは、Polyを買収し、周辺機器のラインアップの強化にも積極的ですね。

岡戸氏 Polyは2022年8月に買収が完了し、HPファミリーとして事業がスタートしています。ビデオ会議ソリューションやカメラ、ヘッドセットなど、優れた製品をラインアップしており、企業内のコラボレーションの進化、在宅勤務での環境強化にも大きく貢献することができます。

 私の自宅でも先日、新たにPolyの周辺機器を導入したところです。今後、日本においても、当社のPCと組み合わせた提案を行ったり、共同マーケティングを行ったりといったことを進め、2社を1つに統合したメリットを生かしたいと思っています。

―― ハイブリッドワークの広がりは、日本HPのPC事業、周辺機器事業には追い風になっているようですね。

岡戸氏 それは確かです。当社が2022年6月に、20〜30代の男女を対象に実施した調査によると、副業やフリーランスの活動に前向きである人は62%となりました。また、ビデオ機能を利用したオンラインコミュニケーションを日常的に利用している人は、42%となりました。

日本HPが行った「働き方と個人向けパソコンに関するアンケート」の結果 日本HPが行った「働き方と個人向けパソコンに関するアンケート」の結果

 その一方で、HP Wolf Securityレポートでは、日本のオフィスワーカーの62%が、在宅勤務の浸透により、プライベートと仕事の境界が曖昧になっているという課題があり、51%が仕事用デバイスを私的に使用し、55%が個人用のノートPCやプリンタを仕事に使用していることが分かりました。

 個人のPCが趣味で利用されるだけでなく、仕事にも利用されていることが分かります。2022年9月に発表した「HP Spectre x360」や「HP ENVY x360」は、趣味などに利用できるだけでなく、ビデオ会議の機能にも力を注いでおり、副業をする際にも最適な機能を搭載しています。

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