そして重要なのが、2003年から19年以上も提供が続いているという事実だ。
ITにおける19年は気が遠くなるほど長い。2003年4月頃のWindowsはXPが主流となっており、Vistaや7、8などを経て、現在は10と11が共存している。その間にスマホも登場したし、暗号資産が誕生して、データをクラウドに置くのも一般的になった。
その間、「死後の世界」はほとんど姿を変えていない。2004年1月にVersion 1.10をリリースした後は、ホームページのQ&Aページとメディア紹介情報をときどき更新しているくらいだ。
この動かない姿勢が、個人提供のフリーソフトとしてはある種の強みになっているようにも感じる。
スマホやクラウドへの対応まで手がけたり、最新のWindowsで動作チェックしてサポートの幅を広げたりするのは膨大な手間がかかる。セキュリティに重大なリスクが発生しない限り、当時のままの状態を維持できた方がはるかに手軽だ。
何しろVersion 1.00をリリースした時点で、公式の動作環境はWindows 95/98/98SEとなっている。2000やXPなどは検証されておらず、Q&Aページでユーザーによる動作報告が添えられるくらいだ。リリース当初から、そうした細かなメンテナンスはしないと割り切って提供している姿勢がうかがえる。
それは決して悪いことではないだろう。それよりも、OSのバージョンが何度変わっても動作し続ける汎用(はんよう)性の高い作りにしていることを評価すべきだ。
ゆきさんが「死後の世界」を作ったのは29歳の頃だ。万が一のときが明日訪れたかもしれないし、数十年後まで来ないかもしれない。そうした長期に渡る安心を求めて作ったソフトゆえに、この安定感は偶然ではないだろう。
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