「無限再生紙」から「被災地のトイレ問題」まで――5つの展示会が一堂に会した「SDGs Week EXPO 2022」(3/4 ページ)

» 2022年12月09日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

紙おむつを「燃料ペレット」にするソリューション

 ここからはPC(広義のIT)から離れるが、興味深い展示を紹介していく。

 高齢社会の昨今、介護施設や病院で使われる「紙おむつ」は相当な量が日々産業廃棄物として発生している。使用済みの紙おむつは重さも体積もそれなりにあるため、施設や病院が産業廃棄物処理業者に支払うコストはかなりのものになっているという。

 そんな問題を解決するのが、タイガーチヨダマテリアルの「SFD使用済み紙おむつバイオマス燃料化装置」だ。名前からある程度察しが付くと思うが、この装置は使用済みの紙おむつをバイオマス燃料として再利用できるようにする装置だ。

 この装置の使い方は以下の通りである。

  1. 使用済み紙おむつをゴミ袋(ポリ袋)に入れたまま投入する
  2. 装置内で粉砕し、乾燥/減菌処理を行う
  3. 「フラフ」が生成される

 この装置は紙おむつのフラフ(細かく裁断されたもの)を生成するところまでを行う。作られたフラフは、別途用意した造粒機を使ってペレット(固形燃料)として“リサイクル”される。このペレットは、工場やハウス栽培、バイオマスボイラーなどの補助燃料として使われるという。

 現在、この装置を導入団体は、行政、行政のゴミ処理を受託している清掃業者、老人ホームや病院などを運営している事業体など、合計10団体ほどにとどまるという。しかし、ダイオキシンを出さない最新式のゴミ焼却炉よりも導入コストはかなり抑えられる上、同じ「燃やす」でもモノづくりのために有効活用できるというメリットがある。

フラフとペレット SFD使用済み紙おむつバイオマス燃料化装置を使って作られたフラフ(右)と、そのフラフを使って作られたペレット(左)

ペットボトルをペットボトルとしてリサイクル

 次はJEPLAN(BRING)のブースに向かった。というのも、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」で人気を博したデロリアンが展示されていたのに“引っ張られてしまった”のだ。

BRING JEPLANブースのデロリアン。このデロリアンは、2015年10月に同社(旧:日本環境設計)が古着から作ったリサイクル燃料(バイオエタノール)を使って走行したものである(参考リンク:PDF形式)

 JEPLANでは「BRING(ブリング)」というブランドの下でリサイクル事業を展開しており、今回のSDGs Week EXPO 2022ではペットボトルをリサイクルして作ったペットボトルに充てんされたボトルウォーターが紹介されていた。

 あまり知られていないが、日本のペットボトルのリサイクル率は約85.8%と、世界的に見ても高水準となっている(参考リンク)。しかし、そのほとんどは衣類用の繊維、あるいはスーパーマーケットなどで販売される鶏卵の保護パック(いわゆる「卵パック」)としてリサイクルされており、再びペットボトルとしてリサイクルされているのは15%ほどにすぎない。

 JEPLANの担当者によると、リサイクルペットボトルが少ないのは「現在主流となっているマテリアル(メカニカル)リサイクルでは不純物の混入が避けられず、純度が保てないから」だという。簡単にまとめると「何度もリサイクルできない」のだ。

 そこで、JEPLANはペットボトルを分子レベルまで分解する「ケミカルリサイクル」を行うことで、新品同等のリサイクルペットボトルを生産しているという。実物を見させてもらったが、黄ばんだり緑がかったりしていない、驚くほどに“無色透明”なボトルだった。

 ただし、マテリアルリサイクルと比べると、ケミカルリサイクルは大規模な施設が必要で、その分だけ環境負荷も大きいとされている。それでも、新品のペットボトルを作る場合と比べてプロセス全体で47%のCO2の削減効果があるという。

 JEPLANでは、この技術を使って「ボトルtoボトル率」を上げ、ペットボトルの国内循環を目指すという。

リサイクルペットボトル ケミカルリサイクルを使ってリサイクルされたペットボトル。石油から作った新品と同じような純度(透明度)の高さが特徴だ。なお、このペットボトルに充てんされている水は北海道の“おいしい水”とのことである

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