HDMI 1.0の登場から20年 8K時代の「HDMI」はどうなる?HDMI2.1a対応ディスプレイは23年に登場(2/3 ページ)

» 2022年12月20日 06時00分 公開
[井上翔ITmedia]

TVとディスプレイの垣根を取り払う「HDMI 2.1a」

 映像伝送規格としてのHDMIは、AV(オーディオ/ビジュアル)分野で使うことを想定して誕生した。そのため、当初はTVやSTB(セットトップボックス)、デジタルレコーダーなど、AV機器を中心に使われてきた。

 しかし、その汎用(はんよう)性の高さから、現在ではPCを含む幅広い機器で使われている。最近では、ミッションクリティカルな医療製品、防衛産業/宇宙航空産業向け製品でも使われるようになったという。

機器 HDMI対応機器は20年間で約110億個出荷されたという
広がり 当初はAV機器から普及してきたHDMI規格だが、現在ではミッションクリティカルな分野の機器でも使われるようになった

 ただ、PCとその関連製品に絞ると、HDMIと同じく「DVI(Digital Visual Interface)」から派生した映像伝送規格「DisplayPort」が競合として存在する。

 DisplayPortも映像と音声のデジタル伝送に対応しており、機能面ではHDMIと同等……なのだが、「より高い解像度/リフレッシュレートの映像伝送」「映像の圧縮伝送」「ディスプレイのデイジーチェン接続」といった機能面ではDisplayPortに“先行”を許してしまっている。

 そんな中で登場したのが、最新規格であるHDMI 2.1/2.1aである。両規格は主に以下の機能に対応しており、ディスプレイのデイジーチェーン接続以外は「DisplayPort 2.0」や「DisplayPort 2.1」と実用上遜色のない機能を備えるようになった(一部はオプション実装となる)。

  • 4K/120Hzまたは8K(7680×4320ピクセル)/30Hzでの映像伝送に対応
    • 最大48Gbpsのデータ伝送が可能(HDMI 2.0の約2.7倍)
    • ケーブルは「Ultra Highspeed」認証のものが必要(HDMI 2.0から据え置き)
  • DSC(Display Stream Compression)に対応
    • 映像データを圧縮伝送することで、4K/240Hzや8K/60Hzの映像伝送も可能に
    • 最大で10K(9600×5400ピクセル)の伝送も可能
  • FRL(固定レートリンク)に対応
    • データ送信用のクロック信号をデータ信号に固定して内包
    • 従来はクロック用だった信号線をデータ通信に転用して伝送速度を向上できる
  • 「動的HDR」に対応
    • フレーム単位でコントラストや色深度/色域を調整可能に
  • SBTM(ソースベースドトーンマッピング)に対応(HDMI 2.1aのみ)
    • 映像のトーンマッピングを出力側の機器で行えるようになる
  • VRR(可変リフレッシュレート)に対応
    • 映像の内容に応じてリフレッシュレートを動的に変更可能
  • ALLM(自動低レイテンシーモード)に対応
    • 映像デバイスの「低遅延モード」と「高画質モード」の切り替え制御が可能に
  • QFT(クイックフレームトランスポート)に対応
    • 映像の表示プロセスで発生する表示遅延を抑制できる
    • PC向けディスプレイにおける「NVIDIA G-SYNC」や「AMD FreeSync」に相当
  • eARC(Enhanced Audio Return Channel)に対応
    • 非圧縮の5.1ch/7.1ch音声や、HDオーディオ信号(Dolby AtmosやDTS:Xなど)を伝送可能に

 ハイエンドモデルを中心に、HDMI 2.1規格に対応するTVやゲーミングディスプレイも徐々に登場してきている。最新のハイエンド据え置きゲーム機やPC向けグラフィックスカードでもHDMI 2.1規格に対応するものがある。

 HDMI 2.1規格に対応するTVであれば、スペック的にはゲーミング用途でも十分に使えるものが多い。逆に、HDMI 2.1規格に対応するディスプレイでは、従来はTVがうたっていた「画質の良さ」「色の深み」などをアピールすることも増えた。トバイアスCEOの言葉を借りれば「モニター(ディスプレイ)とTVの境界線が曖昧になってきている」状況だ。

 実際のスペックはさておき、HDMI 2.1対応の「TV」と「ディスプレイ」が普及すれば、ゲーミング用途での垣根はなくなるかもしれない。

 なお、2022年12月現在において、HDMI 2.1a規格に対応する機器は市販されていない。トバイアスCEOによると、2023年にはHDMI 2.1a規格に対応する映像デバイスがリリースされる見通しとのことだ。

HDMI 2.1 主要なメーカーが2022年にリリースした4K TVの多くはHDMI 2.1規格に対応している。HDMI 2.1aに対応する機器も2023年には登場する見通しだという
HDMI 2.1 HDMI 2.1規格はゲーミングにおいて重要な機能をカバーしている。ただし、これらの機能にどこまで対応しているかは機器によって異なる
HDMI 2.1 HDMI 2.1/2.1a規格を組み合わせれば、8Kコンテンツの実用度も高まりそうだが、コンテンツがまだ少ないこともあり、4Kの普及と比べると緩やかに広まっていくと予想しているという
HDMI 2.1a HDMI 2.1a対応機器は2023年から市場に投入される

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