Appleが9月に発表した「iPhone 14」「iPhone 14 Pro」では、米国とカナダを始めとする6カ国で衛星通信を利用した緊急通信通報に対応している(※1)。ITmediaでも、この機能に関する記事がいくつか掲載されている。
(※1)中国本土/香港/マカオ向けモデルを除く
この記事では、iPhone 14/iPhone 14 Proシリーズが遭難時における救難要請や救難作業における連絡手段として“有効な”デバイスとなり得るかを考察するとともに、既に存在する「遭難時連絡用デバイス」と比較しつつ、それぞれの特色とそれを踏まえた上でiPhone 14/iPhone 14 Proシリーズが衛星通信による連絡機能を備えるメリットを考えてみたい。
なお、今回は「海で使うIT」というこの連載の主旨と筆者の“超絶に偏った”知見もあって、主に海難における連絡手段としてどうなのかという点を考察している。
かつての海や山は携帯電話の「圏外」が多く、アマチュア無線、無線電話用特定小電力無線局や国際VHFといった携帯電話以外の無線を使った連絡手段を用意するしかなかった。
しかし、キャリアが山岳地帯や沿岸海域に向けた基地局の整備を勧めるに連れて――これには警察や海上保安庁といった緊急通報機関からの要請もあるが――海での遭難についても「携帯電話で118」が周知されるようになった。アウトドア活動における非常時の連絡手段として、携帯電話を利用することは今や“当たり前”という感じも受ける。
とはいえ、沿岸海域における携帯電話のエリア“穴”はいまだに点在し、意外な所で圏外になってしまうこともある。直近では3Gサービスの停波によって以前は使えていた海域で携帯電話がつながらなくなったという声を耳にすることもある。
筆者は相模湾から伊豆諸島北部の周辺海域をよく航海しているのだが、「つながるように思える場所でつながらない」を実感することがある。三浦半島南端から伊豆大島北端を結ぶ線の中間、式根島南端から三宅島北端を結ぶ線の中間といった、陸地から離れている場所は「まあ圏外でもしょうがないよね」という印象である。しかし、三浦半島南端にある城ヶ島を目の前に見通せる、相模湾南西4カイリ(約7.4km)付近の海域でも“圏外ポケット”は存在する。
陸であろうと海であろうと、キャリアがどんなに「基地局を増やしました!」と訴求しても、“ぽっかり”と使えない場所は依然として点在する状況で、圏内の広さでは衛星通信にかなわない。実際、「衛星通信を使って携帯電話の圏外をカバーしよう」という取り組みも見受けられるほどである。
しかし、「衛星通信だから、もうどこでも圏内!」とはならないことにも注意が必要だ。
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