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「Radeon PRO W7000シリーズ」登場 RDNA 3ベースで「DisplayPort 2.1」で8K/60fpsを無圧縮伝送可能

» 2023年04月13日 22時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 AMDは4月13日(米国太平洋時間)、プロフェッショナル向けグラフィックスカード「Radeon PRO W7000シリーズ」を発表した。第1弾の製品は「Radeon PRO W7800」と「Radeon PRO W7900」の2製品で、米国における想定販売価格はW7800が2499ドル(約33万2900円)、W7900が3999ドル(約53万2700円)となる。発売予定時期は2023年第2四半期(4〜6月)を予定しており、2023年下期(7〜12月)には両カードを組み込んだPC/ワークステーションも出荷される予定だ。

Radeon PRO W7000シリーズ Radeon PRO W7000シリーズが登場する

Radeon PRO W7000シリーズの概要

 Radeon PRO W7000シリーズは、コンシューマー向けGPUの「Radeon RX 7000」シリーズと同様に「RDNA 3アーキテクチャ」のGPUコアを採用している。

 RDNA 3アーキテクチャでは複数のダイを組み合わせてGPUチップを構成する「チップレット構造」としているが、AMDによると同シリーズは「世界初のチップレット構造のプロ向けGPU」だという。GPUとしての中核部分である「GCD(Graphics Compute Die)」は5nmプロセス、キャッシュメモリを備える「MCD(Memory Cache Die)」は6nmプロセスで製造されている。

 GCD内のCU(演算ユニット)は新設計で、各種設計業務(CADなど)、デザインやメディア作成(動画/静止画編集)に最適化されているという。AI(人工知能)アクセラレーターはCU1基当たり2基搭載されており、機械学習ベースのAIの処理パフォーマンスが先代から最大2.7倍向上している。リアルタイムレイトレーシング(RT)性能も、最大で1.5倍に引き上げられた。

 今回登場する2モデルでは、メディアエンジンが2基構成となっており、従来よりも動画のデコード/エンコード性能が大きく改善している。8K(7680×4320ピクセル)/60fps動画をAV1コーデックでエンコードすることも可能だ。AIによるエンコードの最適化にも対応している。

RDNA 3 Radeon RX 7000シリーズと同じ「RDNA 3アーキテクチャ」を採用し、基本性能の底上げが行われた
エンコーダー メディアエンジンは2基構成で、動画のデコード/エンコード性能は飛躍的に改善している

 Radeon PRO W7000シリーズは、プロ向けグラフィックスカードとしては初めて「DisplayPort 2.1」による映像出力にも対応している。最大伝送速度(理論値)は77.4Gbpsで、8K/60Hzの映像を“無圧縮”で伝送可能だ。DSC(Display Stream Compression:データ圧縮)を利用する場合は8K/120Hzあるいは12K(1万1520×6480ピクセル)/60Hzの映像伝送も可能だ。

DP2.1 プロ向けグラフィックスカードとしては初めてDisplayPort 2.1をサポートしている。圧縮なしで8K/60Hzの映像伝送が可能だ
圧縮なしのメリット 圧縮なしということは、8K/60Hzにおいて色の正確性も確保できるようになる。圧縮付きであれば、8K/120Hzや12K/60Hzの映像伝送も可能だ

主な仕様

 今回発表された2製品の主な仕様は以下の通りだ。W7800は「重いワークロード」、W7900は「究極のワークロード」向けという位置付けである。

  • Radeon PRO W7800
    • CU:70基
    • ピーク演算能力(FP32):45TFLOPS
    • グラフィックスメモリ:32GB(GDDR6/ECC機能付き/384bit幅)
    • 映像出力:DisplayPort×4(うち1基はMiniサイズ)
    • 消費電力(TBP):260W
  • Radeon PRO W7900
    • CU:96基
    • ピーク演算能力(FP32):61TFLOPS
    • グラフィックスメモリ:48GB(GDDR6/ECC機能付き/384bit幅)
    • 映像出力:DisplayPort×4(うち1基はMiniサイズ)
    • 消費電力(TBP):295W
W7800 Radeon PRO W7800の主な仕様
W7900 Radeon PRO W7900の主な仕様

「ワッパ」と「コスパ」で勝負!

 AMDでは、Radeon PRO W7800は「NVIDIA RTX A5500」、Radeon PRO W7900は「NVIDIA RTX A6000」と「NVIDIA RTX 6000 Ada」をライバル製品として想定している。

 絶対的な性能だけを見ると、Radeon PRO W7000シリーズはNVIDIAのプロ向けグラフィックスカードに勝てない場面も少なくない。しかし、ワットパフォーマンス(消費電力当たりの性能)やコストパフォーマンス(費用対効果)において優れている場面も多い

 用途次第だが、Radeon PRO W7000シリーズを使えば効率の良いシステムを構築できそうである。

GEOMEAN 「SPECviewpref 2020」で幾何平均演算を行った結果。RTX A6000を基準とすると、W7900はもちろん、W7800もRTX A6000以上の速度で演算可能だ。絶対性能ではさすがにRTX 6000 Adaがトップだが、半額未満のW7900との性能差はわずか7%である
コスパ スコアを価格で割って「1ドル当たりのパフォーマンス」を算出すると、Radeon PRO W7000シリーズのコストパフォーマンスの良さはかなり優秀であることが分かる
ドライバーの改善 AMDではグラフィックスドライバーの改善を継続的に続けている。先代の「Radeon PRO W6800」も3四半期で39%の性能改善を果たしているが、W7900はそれを軽々と上回るパフォーマンスを発揮している
3D Autodeskの「3ds Max」と「Maya」を使ったロードテストは、Radeon PRO W7000シリーズの得意分野のようである
またコスパ Mayaのテストを抜き出して1ドル当たりのパフォーマンスを算出すると、RTX 6000 Adaは価格の割にパフォーマンスの改善効果が薄いという結果になったという
Premiere Pro メディアエンジンを2基搭載したこともあり、動画エンコードのパフォーマンスも良い。Adobe Premiere Proはもちろんのこと……
DaVinci Resolve DaVinci Resolveでも動画の書き出しパフォーマンスは良好だ。ただし、これらの数値はあくまでも「1ドル当たりのパフォーマンス」なので、絶対的なパフォーマンスを示していないことに注意しよう

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