AMDが新GPU「Radeon RX 7000シリーズ」を正式発表 米国では12月13日発売(899ドルから)まずはハイエンド製品

» 2022年11月04日 06時45分 公開
[井上翔ITmedia]

 AMDは11月4日(米国東部時間)、「RDNA 3アーキテクチャ」に基づく新型GPU「Radeon RX 7000シリーズ」を発表した。発表されたのはハイエンド向けの「Radeon RX 7900 XT」「Radeon RX 7900 XTX」の2製品で、両GPUを搭載するグラフィックスカードは米国では12月13日に発売される予定で、想定価格はRadeon RX 7900 XT搭載カードが899ドル(約13万3300円)から、Radeon RX 7900 XTX搭載カードが999ドル(約14万8200円)からとなる。

リサ・スーCEO Radeon RX 7000シリーズのチップレットを手にするAMDのリサ・スーCEO

Radeon RX 7000シリーズの概要

 Radeon RX 7000シリーズで使われるRDNA 3アーキテクチャのGPUは、GPUとしては世界で初めて「チップレット」(パッケージ上の構成要素を“個別に”製造してそれを統合して1枚のチップとして動作する)設計を採用した。Graphic Compute Die(GCD:GPUコアを内包するダイ)は5nmプロセスで、Memory Cache Die(MCD:メモリコントローラーとInfinity Cache用のメモリを搭載するダイ)は6nmプロセスで製造されるという。

 同アーキテクチャのGPUの演算能力は最大61兆FLOPS、内部伝送速度は最大毎秒5.3TB、グラフィックスメモリは最大24GB(GDDR6規格)、トランジスタの数は最大580億個となる。

チップレット RDNA 3アーキテクチャは、GPUとしては初めてチップレット設計を採用した。GPUコアを内包するGCDは5nmプロセス、Infinity Cache用メモリを内包するMCDは6nmプロセスを採用している
スペック 現状におけるRDNA 3アーキテクチャのGPUの最大スペック(Radeon RX 6900 XTXのスペック)。「世界で最も先進的なゲーミンググラフィックス」をうたう

 先代の「RDNA 2アーキテクチャ」から採用されているキャッシュメモリ「Infinity Cache」は第2世代となり、実効伝送速度が最大毎秒5.3TB(RDNA 2の約2.7倍)となった。

 GCDには新しいCompute Unit(CU:演算ユニット)、ディスプレイエンジンとメディアエンジンが搭載されている。CUのトランジスタ数は、RDNA 2比で1平方ミリメートル当たり約1.65倍となり、それぞれのCUに2×32構成の「Stream Processor(SP)」とAIアクセラレーターを2基ずつ搭載している。これにより、RDNA 2比で命令発行数は2倍に、機械学習ベースのAI処理パフォーマンスは最大2.7倍になったという。

 さらに、GDCには第2世代のレイトレーシングアクセラレーターも搭載されており、RDNA 2比で最大1.5倍のパフォーマンスを発揮するとのことだ。

IC RDNA 3におけるInfinity Cacheは、RDNA 2比で最大2.7倍のパフォーマンスを発揮するという
CU CUには2×32構成のSUが2基搭載されており、RDNA 2比で命令発行数が2倍となっている
AI CUにはAIアクセラレーターも2基搭載しており、RDNA 2比で最大2.7倍のパフォーマンスを発揮する
RT レイトレーシング(RT)処理をリアルタイムで行うレイトレーシングアクセラレーターも従来比で1.5倍のパフォーマンスに引き上げられた

 GCDには新しい「Radiance Display Engine」も搭載されている。このディスプレイエンジンはDisplayPort 2.1に対応しており、性能的には8K(7680×4320ピクセル)/165Hz、4K(3840×2160ピクセル)/480Hzの出力も可能だ。

 さらに、GCDに統合されたメディアエンジン(動画のエンコーダー/デコーダー)も2基構成となっており、AVC(H.264)とHEVC(H.265)のエンコードとデコードを並行して行える他、AV1形式の動画のエンコードとデコードにも対応している(最大で8K/60fpsに対応)。メディアエンジン自体の動作クロックを約1.8倍引き上げた他、動画エンコードにAIアクセラレーターも活用することで、「動画処理に強いGPU」に仕上げてきている。

RDE 新しいディスプレイエンジンはDisplayPort 2.1に対応しており、8K/165Hzや4K/480Hzの出力も可能だという
メディアエンジン 新しいメディアエンジンは2基構成で、AV1のハードウェアエンコード/デコードにも対応している

Radeon RX 7000シリーズのラインアップ

 先述の通り、Radeon RX 7000シリーズはハイエンド向けのRadeon RX 7900 XTとRadeon RX 7900 XTXから展開される。GPU補助電源はいずれも「8ピン×2」という構成で、AMDによると「電源を買い換えることなくアップグレードできる」という。両GPUの主なスペックは以下の通りとなる。

  • Radeon RX 7900 XT
    • CU:84基
    • 動作クロック:1500MHz〜2400MHz(ゲームクロックは2000MHz)
    • グラフィックスメモリ:20GB(GDDR6規格)
    • Infinity Cache:80MB
    • 映像出力(AMD設計カード):HDMI 2.1×1、DisplayPort 2.1×2、USB Type-C×1
    • 消費電力:300W
  • Radeon RX 7900 XTX
    • CU:96基
    • ゲームクロック:1900MHz〜2500MHz(ゲームクロックは2300MHz)
    • グラフィックスメモリ:24GB(GDDR6規格)
    • Infinity Cache:96MB
    • 映像出力(AMD設計カード):HDMI 2.1×1、DisplayPort 2.1×2、USB Type-C×1
    • 消費電力:355W
主な仕様 Radeon RX 7900 XTの主な仕様
主な仕様 Radeon RX 7900 XTXの主な仕様
アップグレードも簡単 AMD自社設計のグラフィックスカードの場合、カードの高さは2.5スロット分で、GPU補助電源は従来からの「8ピン×2」構成となっている。そのことから、「従来のグラフィックスカードからのアップグレードも簡単」としている

 最上位製品となるRadeon RX 7900 XTXでは、1440p(WQHD:2560×1440ピクセル)だけでなく3840p(4K/UHD)でも高いリフレッシュレートを実現しているという。超解像技術「AMD FidelityFX Super Resolution(FSR) 2.0」を併用した場合、4Kかつレイトレーシングを有効にした場合でも、負荷の大きいゲームにおいて60fps以上の平均フレームレートを確保できるとのことだ。

 なお、FSRについては2023年中に「バージョン3.0」をリリースするという。現行のFSR 2.0と比べてフレームレートが最大で2倍になるというが、詳細はまた後日発表となるようだ。

1440p 3つのゲームタイトルのWQHD解像度における“平均”フレームレート。あまりの数字に見間違いかと思ったのだが、見間違いではないようである
2160p さらに解像度を上げて4K解像度にした場合の“平均”フレームレート。一部タイトルは超解像技術であるFSRを有効にした場合の値を示しているが、グラフを見る限りにおいて、ネイティブ解像度でもそこそこ高いフレームレートを実現できているようである
RT 重量級のゲームタイトルでレイトレーシングとFSRを有効にし、4K解像度で出力した場合のフレームレート。先代の最上位であるRadeon RX 6950 XTと比べると、軽々と60fps以上出ている事には驚かされる。なお、今回の発表会では、競合であるNVIDIAの「GeForce RTX 40シリーズ」との比較は一切なかった

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