―― VAIOの認知度が低いという判断は意外です。
山野 もちろん、一般的にはVAIOの名前を知っている人は多いと思います。ただ、別の角度から見たときに、認知度が低いといわざるを得ない場面がいくつもありました。
例えば、大手企業がPCを導入するといった場合に、VAIOを検討するといったケースはほとんどありません。先ほど、私がこれまでVAIOを使う機会がなかったというお話をしましたが、それは三菱商事が、VAIOを社内で使用する標準機として選定するといったことが1度もなかったからです。
また、量販店店頭に行っても、なかなかVAIOを勧めてもらえない状況がありました。聞いてみると「VAIOは高いので、あまりお勧めしません」「指名買いの人にだけVAIOを販売しています」という話になってしまう。
このように、購入対象という観点から見たときに、VAIOの認知度は低いと言わざるを得ないことが分かりました。そこで2つのことに取り組みました。
―― それは何ですか。
山野 1つは直販の強化です。私自身が、大手企業のIT担当役員などのところに直接出向いて、VAIOの説明を行うことにしました。これまではこういった活動は全く行ってこなかったので、VAIOがビジネスPCとして利用できることを知らない企業も多く、VAIOの良さを初めて理解したというケースも多かったのです。
実際にVAIOを貸し出して検証を行ってもらうと、社員の生産性を高めるために、いいものを導入したいと思っている企業では、VAIOの特徴を理解していただけることが多く、社内の標準機に採用する例が相次ぎました。約半年間で7000台や1万台、1万5000台といった一括導入も決まり、お使いの社員の方々にも喜んでいただいています。
お邪魔した企業における勝率は5割ぐらいに達していますよ(笑)。VAIOの2023年5月期業績は、売上高が1.6倍に増加する見込みですが、大手企業を中心にした販売増加が、この成長の半分ぐらいに貢献しています。
―― 何が評価されているのでしょうか。
山野 一言でいえば、トータルバランスの高さだといえます。キーボードの使い心地、パームレストの質感、ディスプレイの美しさといった点に加え、優れた性能や放熱性といった点も評価されています。使えば使うほど、VAIOの良さを理解していただけるといった企業が多いのが特徴です。
―― もう1つの取り組みは何ですか。
山野 チャネル販売の見直しです。VAIOは2014年の設立以来、ソニーマーケティングを通じた販売を行ってきましたが、お互いの立場や状況が変わり、BtoCに強いソニーマーケティングと、BtoBが8割を占めるVAIOとでは、どうしてもミスマッチが生まれる部分があったり、ディストリビューターとの連携でも、ワンクッション入ることで、対応が後手に回ったりといった課題などが顕在化してきました。
そこで、個人向けPCに関しては引き続きソニーマーケティングにお願いしながら、2022年5月に、法人向けPCの取り扱いを終了し、いわば“円満離婚”ができました。ダイワボウ情報システム、大塚商会、SB C&Sといった企業との直接取引を行い、その先にあるリース会社や販売店、SIerといったパートナーとの協力関係も強固にすることができました。
「うちもVAIOを扱うことができるのですか」というディストリビューターや販売店さんの声もあったほどで、内覧会などを通じて実際に触れていただきながら、取り扱っていただけるパートナーを徐々に増やしています。
成果はこれから出てくると考えています。2023年3月に発表した法人向けの「VAIO Pro BK/BM」は、BtoBチャネルのパートナーが販売しやすい価格設定の製品としています。新たな商流と、新たな製品が組み合わさって、VAIOのBtoBにおける成長が、さらに加速することになります。
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