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VAIOは成長フェーズへ PC事業への回帰で周辺デバイスやリファービッシュ品も投入 VAIO Pの後継モデルも!?IT産業のトレンドリーダーに聞く!(VAIO 後編)(1/4 ページ)

» 2023年04月28日 12時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 コロナウイルスの流行から世界情勢の不安定化、製品供給網の寸断や物流費の高騰、そして急速に進む円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。前編の記事はこちら


 「VAIOは成長フェーズに入った」

 VAIOの山野正樹社長は、今後の成長戦略を示してみせる。ここ数年、停滞していたVAIOのビジネスを、この2年で2倍以上に成長させる考えだ。そして、「カッコイイ(Inspiring)」「カシコイ(Ingenious)」「ホンモノ(Genuine)」という3つの商品理念を打ち出すとともに、本業であるPC事業への回帰を宣言した。定番PCによる裾野拡大に取り組む一方で、尖ったPCへの開発投資も推進する。

 ここでは、ポケット型の超小型PCの「VAIO P」の開発に取り組む考えも明言した。後編は、VAIOの新たな経営方針や姿勢、今後の成長戦略や製品戦略について聞いた。

VAIO F16 F14 安曇野 インタビュー VAIO 代表取締役 執行役員社長 山野 正樹氏。東京都港区にある東京オフィスでインタビューを行った

VAIOの本質的な価値を3つにまとめ社員全員と共有

―― 2021年6月にVAIOの社長に就任して以降、山野社長は、どんなことに取り組んできましたか。

山野 社長に就任して社内を見回したとき、VAIOはどこを目指すのか、何をよりどころにするのか、といったことに迷いを感じている社員が多いことに気がつきました。

 ソニー時代からの社員や、VAIOが発足してから入社してきた若い社員のベクトルがあっていないという部分も感じました。そこで、社員が1つの方向性を共有するには何がいいかと考えた結果、VAIOの商品価値を理念として掲げることから始めました。

 3月29日に対外的に発表したように、VAIOでは、「カッコイイ(Inspiring)」「カシコイ(Ingenious)」「ホンモノ(Genuine)」の3つを商品理念に掲げました。なるべく多くの人に話を聞き、私自身がVAIOのPCを使ってみて感じたことを、コトコトと煮詰めながらまとめたのがこの3つの理念でした。

VAIO F16 F14 安曇野 インタビュー 山野社長が新たに定義した「商品理念」。VAIOの商品価値でもある

 社員の中には、VAIOとしては当然のことだと思っている人もいるかと思います。しかし、これを明確に示し、目指す商品価値として、社員全員が共有することに意味があります。もしかしたら、この理念は、VAIOに後から入ったきた私だからこそ、打ち出すことができたのかもしれません。時代の先を行くことや、他社の真似はしないことを前提に、この3つの要素が反映されている製品を市場に投入することが、VAIOの価値であると定義しました。

 「カッコイイ」は、見た目のデザインだけでなく、ブランドの歴史や機能性を含めて生まれるものです。そして、英語の表現に、StylishやCoolではなく、Inspiringを用いたのは、ワクワクする、心が動くといったニュアンスを込め、この意味をグローバルのお客さまにも伝えるという狙いがあります。

 また、「カシコイ」では、PCは人間の能力を飛躍的に高めてくれる道具であり、そこにはカシコイという要素が不可欠であるということを示しました。擬人化すると、人生の相棒になると表現できます。

 相棒といることが快く感じ、そのためには、賢さが製品の随所に詰まっている必要があります。CPUのパフォーマンスを最大限に引き上げるための放熱設計や、オンライン会議などで利用する際に、PCの前にいる人の声以外の音を除去できるように精密にチューニングしたAIノイズキャンセリング機能などは、カシコイを実現する要素です。

 AIノイズキャンセリングの賢さは使ってみると分かるのですが、他社PCに搭載されている機能と比べて、圧倒的な差があることを理解していただけとる思います。この機能をプレゼンテーションしたところ、一括導入を決定していただいた企業もあるほどです。カシコイという表現にはSmartという英語が用いられることが多いのですが、あえてIngeniousとしたのは、創意工夫に富むことや、独創的という意味を込めたいと考えたからです。

VAIO F16 F14 安曇野 インタビュー 長野県安曇野市に、VAIOの本社および工場がある

 そして、3つめの「ホンモノ」では、まがい物ではなく、高い質感や品位を持つこと、長く使っても価値が減らないことを意味しています。例えば、VAIOのパームレストは、長年使用してもプラスチックのようなテカリが目立つといったことはありませんし、美しいたたずまいにはずっと変化がありません。キートップも文字が剥げることはありません。

 確かな設計品質と、「安曇野FINISH」に裏づけられた製造品質により、丹精を込めた逸品に仕上げているからこそ、VAIOは、ホンモノを実現できるのです。ここでは、Genuineという言葉を用いましたが、この言葉には「神聖な」「純粋な」といったニュアンスがあり、世界で唯一無二のホンモノを届ける存在であることを示しています。

 このように、VAIOが開発し、販売する全ての製品が、「カッコイイ」「カシコイ」「ホンモノ」という商品理念に基づいたものになります。

VAIO F16 F14 安曇野 インタビュー 山野社長が社員と共に手がけた「行動理念」

 一方、2023年4月に、新たにVAIOの行動理念を制定しました。

 商品理念は私が考えてまとめましたが、行動理念は企業の根幹となり、長年に渡って順守するものになりますから、部長以上が参加する経営戦略会議で集中的に議論を行い、社員の意見を反映し、社員が共感できるものとして定めました。

 行動理念に掲げたのは、「誠実」「敬意」「自由闊達」「プロフェッショナル」「One Team」の5つです。

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