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3Dオブジェクトを裸眼で見られる27型「空間再現ディスプレイ」 ソニーが「ELF-SR2」を投入(1/2 ページ)

» 2023年05月13日 16時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 ソニーは6月12日、裸眼で立体映像を視認できる27型の空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」を発売する。市場推定価格は55万円(税込み)となる。

 先代に相当する15.6型「ELF-SR1」は2020年に発売されているが、同社によると旧モデルと新モデルは併売していくという。

ソニー SONY 3DCG 空間再現ディスプレイ ELF-SR1(左)とELF-SR2(右)

ELF-SR2の概要

 ソニーの空間再現ディスプレイは独自のビジョンセンサーと視線認識技術で、映像を見ている人の目の位置を常に検出し、左右それぞれの目に最適な立体映像を生成する仕組み。これにより裸眼でもクリアで色鮮やかな立体視体験が可能だ。

 その初号機であるELF-SR1は、3DモデルやVR/ARコンテンツ開発、建築やデザイン、医療、文化財のアーカイブなどの分野に活用されてきた。その大型版となるELF-SR2は、3DCGの制作から一般の人などに見せるコンテンツ表示用途まで、ユースケースを広げている。

 主なターゲット分野/用途として、同社はインダストリアルデザイン、医療教育、ヘルスケア、建築、設計、エンタテインメント、ショールームなどでの展示を挙げている。

ソニー SONY 3DCG 空間再現ディスプレイ ELF-SR2の主なターゲット分野や用途

 27型となったのは、適切な視聴位置での視野角をほぼカバーできることに加え、高さのあるコンテンツなどでも迫力のある立体視を実現するため。さらに、多くのクリエイターが使うモニターサイズが27型であるためだという。ディスプレイの解像度は4K(3840×2160ピクセル)となる。

 立体映像を見る際の没入感が高まるだけなく、3DCGデータの細部の確認が容易になり、コンテンツ制作の品質向上に寄与する。また、工業製品などを原寸表示で確認が可能になり、インダストリアルデザインでは実物と比較しながらデザインレビューができ、医療教育分野では人体構造を原寸大で確認できるなど、実用性が高まっている。

 ELF-SR1からの大きな改善点としては、「視線認識、トラッキング性能の向上」「広い範囲から映像を確認できる」「マスク認識に対応」の3点があるという。特に本モデルでは、第2世代の高速ビジョンセンサーを搭載したことで、より高速かつ正確に目の位置を把握できるようになり、位置に応じた立体映像を表示できるようになったという。

 一方で、この技術ゆえに1人だけでしか使えず、仮に「2人以上が正面で見る」、あるいは「複数人で上からのぞき込む」といったシーンでは、ビジョンセンサーが目を追い切れず、結果として立体視はできない。

ソニー SONY 3DCG 空間再現ディスプレイ ELF-SR1からの大きな改善点。ELF-SR1よりも高速かつ正確に目の位置を把握可能になったことがポイントだ

 “見せること”を意識したELF-SR2は、同社のTV「BRAVIA(ブラビア)」のノウハウを生かした超解像エンジンを搭載したこともポイントだ。エッジや高帯域信号を検出し、3D映像に最適な補正をかけることで、27型に拡大した画面においても、解像感の高い立体映像を実現したとする。

 BRAVIAのノウハウは、画質面にも取り入れられている。色深度は最大10bitで、Adobe RGBの色域を約100%カバーしている。色の再現性ではELF-SR1よりも優れており、「(色再現性の面で)2Dモニターから大きく異ならない」(インキュベーションセンター メタバース事業開発部門 プロダクトマネジメント部の太田佳之氏)こともポイントだ。

ソニー SONY 3DCG 空間再現ディスプレイ ソニーインキュベーションセンターメタバース事業開発部門プロダクトマネジメント部の太田佳之氏

 ELF-SR1では、画像のアップコンバート処理(2K→4K)や顔認識処理を接続先のPCに任せていたため、それなりにスペックの高いPC(GeForce RTX 2070 SUPER以上の独立GPUを搭載するもの)をつないで使う必要があった。

 それに対して、ELF-SR2ではこれらの処理を自らが行うようになった(=オフロード負担するようになった)ため、PCに求められるスペックが軽減された。太田氏によると「ゲーミングノートPCクラスでも十分」とのことだ。

 さらに、大画面で目立ちやすいとされる「色モアレ」を補正する機能も備えており、より輪部や細部を目立たせ、クッキリとした映像表現が可能になった。残像感などの原因となるクロストークも、改良された新アルゴリズムで補正される。結果として、左右の視線の角度差や、パネルの局所的な温度変化といったクロストークも生じづらくなったという。

ソニー SONY 3DCG 空間再現ディスプレイ PCにかかる負担を軽減するなどして、これまでのデメリットを解消した

 画面が大きくなった恩恵として、ELF-SR2は100×100mmサイズのVESAマウントを装着できるようになり、VESAマウントに準拠したスタンドやアームも利用可能だ。

 据え置きで使うとディスプレイの角度を変えらないが、スタンドやアームを取り付ければ角度を変えられるようになる。ただし、同社としては45度傾けた状態での使用をすすめており、「その角度が最も空間再現度が高い」(太田氏)。

 映像入力はUSB Type-C(DisplayPort Alternate Mode対応)、DisplayPort、HDMI 2.0を搭載し、3.5mmオーディオジャックや1W出力のモノラルスピーカーも備える。

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