冒頭で「M2チップの13インチMacBook Airを大画面化」したものが15インチMacBook Airだとまとめたが、実は大きくなったゆえに強化されたポイントが2つある。少し深掘りしてみよう。
1つは処理パフォーマンスだ。もう少し具体的にいうと、大型化したことによってピークパフォーマンスをより長い時間維持できるようになり、サーマルスロットリング(いわゆる「熱だれ」)が発生した場合の挙動が改善された。
13インチモデルも15インチモデルも、SoCは同じM2チップである。短時間の処理性能に差はない。しかし、負荷の掛かる処理を長時間行うと、パフォーマンスに一定の差が現れる。
例えば、CPUのパフォーマンスを計測する「CINEBENCH R23」を室温26度の環境で30分間実行すると、13インチモデルは最後のループで(最初のループに対し)6.5%ほどスコアが低下してしまう。それに対して、15インチモデルでは低下が約3%にとどまった。
人によっては「この程度しか差がないのか……」と考えるかもしれない。しかし、Metal APIにおけるGPUのパフォーマンスを計測する「3DMark Wild Life Benchmark」アプリのストレステスト(Extreme)では、様子が少し異なる。
13インチモデルでストレステストを実行すると、みるみるうちにスコア(パフォーマンス)が80%程度になり、ループを重ねるとさらに下がってしまうこともある(当時のレビュー記事)。それに対して、15インチモデルでは2〜5回目のループは初回(≒最高スコア)の95%のスコアをキープし、それ以降のループでも初回の85%程度のスコアを保った。
ただ、12回目に一時的に性能が極端に落ち込み(フレームレートが45fps前後から10fpsまで低下)、それを13回目まで引きずってしまったこともあった。しかし、本体が冷えたのか14回目のループは初回を上回るスコアを記録し、その後は6〜11回目のループと変わらないスコアを記録している。
突然のスコアの落ち込みは気になるものの、13インチモデルと比べると15インチMacBook Airは発熱による性能低下を抑えられるとみて良いだろう。15インチモデルに「8コアGPU」の構成がないのは、10コアGPUの性能を確実にと引き出せるようになったからなのかもしれない。
ついでに、内蔵SSDの読み書き速度を「AJA Sysytem Test Lite」で調べてみた所、読み出しは毎秒4400MB、書き込みは毎秒3216MBという結果だった。これも放熱の余力を鑑みて、スペックを引き上げた結果なのだろうか……?
もう1つのポイントはスピーカーの強化である。
M2チップ搭載の13インチMacBook Airには開口部はないが、ヒンジの付近(キーボードの上方)に4基のスピーカーを搭載している。これにより、本体単体で空間オーディオの再生を実現した。
それに対して、15インチMacBook Airのスピーカーは6基構成となっている。うち4基は13インチモデルと同じくヒンジ付近にあり、追加された2基の「フォースキャンセリングウーファー」は、ボディーの幅が広がった部分に実装されている。
実際に聞き比べてみると、音作りの傾向そのものは13インチモデルと変わりない。ノートPCと考えると空間オーディオの再現性は極めて優秀で、音も中〜高音域をやや強調している。
しかし、フォースキャンセリングウーファーを搭載することによって中〜低音域にも自然かつしっかりと音が伸びていくようになっている。低音の響きを重視する人には朗報だろう。
フォースキャンセリングウーファーが加わったことは、音楽コンテンツはもちろん映像コンテンツを楽しむ際の満足感を高める。低音域の再生能力が向上したことで、人物の声もより聞き取りやすくなった。
13インチモデルのスピーカーの良さはそのままに、よりバランスに優れたスピーカーとなった印象だ。
ただし、絶対的な音質で比べると、現行の14インチ/16インチMacBook Proはより良い。16インチMacBook Airの音は、これらと比べると少し“腰高”に感じる。
本体スピーカーの再生能力を重視する人は注意したい。
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