AMDは6月12日(米国太平洋夏時間)、企業向けの管理/セキュリティ機能を強化したモバイル向けAPU「Ryzen PRO 7040シリーズ」と、デスクトップ向けCPU「Ryzen PRO 7000シリーズ」を発表した。搭載するPCは、主要なPCメーカーから順次リリースされる予定だ。
Ryzen PRO 7040シリーズとRyzen PRO 7000シリーズは、既に発表済みの「Ryzen 7040シリーズ」や「Ryzen 7000シリーズ(通常版)」に企業向けの管理/セキュリティ機能「AMD PRO」を追加したものとなる。AMD PROの搭載以外は、基本的な仕様は先行するモデルと同様だ。
モバイル向けのRyzen PRO 7040シリーズは、「Zen 4アーキテクチャ」のCPUコアと「RDNA 3アーキテクチャ」のGPUコア(Radeon 700Mシリーズ)と、機械械学習ベースのAIを処理するプロセッサ「Ryzen AI」も備える(Ryzen 5 PRO 7540Uを除く)。
AMD PRO関連の新機能としては、新たにクラウドベースの遠隔管理をサポートした。これにより、テレワーク(リモートワーク)中のユーザーが使っているPCの管理を円滑に行えるようになる。
AMDが「Microsoft Officeアプリ(Word、Excel、PowerPoint、Outlook)を使いつつ、Microsoft Teamsでビデオ会議をする」というシナリオでベンチマークテストを行った所、「Ryzen 7 PRO 7840U」(8コア16スレッド)は、Intelの「Core i7-1370P」(Pコア6基12スレッド+Eコア8基8スレッド)と比べて処理速度は最大12%高速である一方、消費電力は最大15%低くなったという。消費電力当たりのパフォーマンス(いわゆる「ワッパ」)換算では、最大で29%効率が高いとのことだ。
同社はバッテリー駆動でTeamsのビデオ会議をした場合の稼働時間テストしており、Core i7-1370Pや「Core i7-1365U」(Pコア2基4スレッド+Eコア8基8スレッド)を搭載するノートPCはもちろん、Apple M2 Proチップ(10コアCPU)を搭載する14インチMacBook Proと比べても長い時間駆動できたという。
TDP(熱設計電力)が15〜28WのRyzen 7 PRO 7840Uは、TDPが28〜64Wに設定されており物理コアの多いCore i7-1370Pよりも低消費電力ながらも、処理能力が高いことをアピールしている
Microsoft Teamsのビデオ会議をバッテリー駆動で行うと、電力効率が高いとされる現行の14インチMacBook Proよりも“長持ち”だという。このスライドは、見方を変えるとCoreプロセッサ(特にPシリーズ)は消費電力が大きいという問題提起をしているようにも思えるRyzen PRO 7040シリーズは、薄型かつハイパフォーマンスを志向するノートPC/モバイルワークステーション向けの「HSプロセッサ」と、メインストリームの「Uプロセッサ」の2種類を展開する。
【HSプロセッサ(Ryzen AI搭載、TDP 35〜54W)】
HSシリーズは全モデルがRyzen AIを搭載している。このプロセッサを活用して、Windows 11の「Windows Studio Effects」も利用可能だ(PCメーカー側が同機能の有効化を許可している場合に限る)
内蔵GPUは最新のRDNA 3アーキテクチャベースで、統合型グラフィックスとしては性能が高い。プロフェッショナル向けのグラフィックスドライバー(AMD Software:PRO Edition)にも対応しているので、業務用途の利用にも最適だという【Uプロセッサ(TDP 15〜28W)】
Ryzen 7 PRO 7840Uは、Core i7-1370Pと「NVIDIA RTX A500 Laptop」を組み合わせたモバイルワークステーションよりも高いパフォーマンスを発揮できるともしている
Ryzen PRO 7040シリーズを搭載するノートPCは、まずHPとLenovoから発売される。AMD Software:PRO Editionをプリインストールするモバイルワークステーションも、両社を皮切りに発売されるデスクトップ向けのRyzen PRO 7000シリーズは、Zen 4アーキテクチャのCPUコアと「RDNA 2アーキテクチャ」のGPUコア(Radeon Graphics)を統合している。TDPは65Wだ。
仕様書によると、全モデル共にAMDオリジナルのCPUクーラー「Wraith Spire」が付属するとされている。現時点ではアナウンスは特にないが、何らかの形でCPUの単体販売も想定している可能性もある。
CPUソケットは「Socket AM5(LGA 1718)」で、既存のRyzen 7000シリーズ対応のマザーボードを流用できる(※1)。AMDではSocket AM5を「少なくとも2025年以降まで使う」としており、CPUを交換すれば長期間に渡り最新スペックを維持できることをアピールしている。
(※1)マザーボードによってはUEFI(BIOS)の更新が必要です
Ryzen PRO 7000シリーズのラインアップは以下の通り。
デスクトップ向けRyzen PRO 7000シリーズのラインアップ。「5nmプロセス」「5GHz超の稼働」「Socket AM5」「PCI Express 5.0対応」「DDR5メモリ対応」の“5つ星”に対応していることが魅力だという
6コア12スレッドの「Ryzen 5」においてパフォーマンスの新旧比較をした場合、あらゆる処理が高速化する。ただし、Ryzen PRO 5000シリーズから乗り換える場合、CPUだけでなくマザーボードやメモリモジュールの買い換えも必要となるが、先述の通りSocket AM5は2025年以降も使われることが保証されているので、ライフタイムコスト面では有利と考えることもできる
ライバルの「Core i5-13400」(Pコア6基12スレッド+Eコア4基4スレッド)とのパフォーマンス比較。Pコア(相当)が同じ構成でも、Zen 4アーキテクチャのRyzen 5 PRO 7645の方が基本的には高速であることをアピールしている
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