それではいよいよ、ペンの性能を見ていきましょう。本機はX3 Proスマートチップを搭載した新開発のペンを採用しています。
まずは問題なかった点から行きましょう。ジッターは問題なし、遅延も問題なし、オン荷重も約9gでワコムのデフォルトの7gぐらいより少しだけ重いとはいえ、問題ありません。そして検知可能な最大荷重はおそらく500g以上で、ワコムと同様に十分以上のダイナミックレンジになっています。
海外メーカーのペンだと、従来は200g台前半など少し力を入れると頭打ちになってしまうのが当たり前だったので、とてもとても、大きな進歩です。
ただし疑問が残る点があるにはあります。1つは、公式にはこの世代のペンのオン荷重は「3g」が訴求されていることです。9gというと「触れているけど線は出ない」を手の感触で出せますが、3gはかなり難しいです。店頭デモ機も含めて本機の異なる3つの個体を触りましたが、いずれもで3gの軽さは感じませんでした。
もう1つは「筆圧レベル 1万6384」の設定アプリ上での表示です。まず、これを見てください。
筆圧値が偶数しか表示されません。これをどう解釈すべきかは分かりませんが、誤魔化すつもりなら隠すのは簡単ですし、悪意があるようには思えないです。いずれ直るでしょうし、仮に8192段階でも十分以上に細かいと考えているので、性能としては心配していません。
全体として、「上位機のペンとしてはオン荷重がやや高い」というわずかな弱点があることと、訴求の仕方が背伸び気味なのはともかくとして、ダイナミックレンジが大きく改善しているので実用性は上がっているはずです。
それでは、実際の作業でチェックしていきましょう。ラフと線画では特別軽い筆圧は使わず、ラフ線の重みづけや線の安定のために強めの筆圧は使います。従来の海外メーカーの液タブのような筆圧の頭打ちがないので、ペンをぎゅっと押すような瞬間も不安なく使えました。
彩色では軽い筆圧でグラデーションを作ることが多いです。先に述べた通りオン荷重はわずかに劣りますが、布や肌などのグラデーションをつける今回の作業では、意図した通りに濃淡をつけることができます。
ただし、差がないわけではないです。普段の作業では「Pro Pen 2」のオン荷重をデフォルトより少し下げて使っていて、状況によってはかするような軽いタッチを大きなサイズのブラシで使うこともあります。そういう状況では本機は「インクの乗りが少し不安定だな」と感じることもあります。作業全体に与えるインパクトは小さいですが、そういう運筆がしたいときに自然にできることも、上位機に求められる大事な要素の1つでしょう。
また、付属の左手デバイスも役立ちました。彩色〜仕上げの工程でキーマクロを再生することが多いですが、小型でキーボードの横などに配置しやすく、手が届きやすいです。
全体としてかなり作業しやすかったです。普段使っているワコムの「Cintiq Pro 16(前期モデル)」と比べても、サクサク感もあり、画面の縦幅にも余裕があり、ペンも「Pro Pen slim」のような軸の細いの選択肢が無い以外には劣っていると感じることは少ないです。
書き忘れそうになりましたが、発熱も問題ありませんでした。暑い部屋で最大輝度にすると端子近辺の画面が不快な温度になりますが、ペンを持った作業でそのあたりを触れる機会は少なく、それ以外は素手でも問題ない温度でした。
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