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なぜ高い? 59万円超のフォルダブルPC「ThinkPad X1 Fold 16 Gen 1」の秘密に迫る発表から約1年(2/4 ページ)

» 2023年11月29日 17時30分 公開
[井上翔ITmedia]

初代が抱えた“課題”に向き合った「ThinkPad X1 Fold 16 Gen 1」

 ThinkPad X1 Fold 16 Gen 1は、2020年に発売された初代モデルの後継製品だ。先代があるのに「Gen 1(第1世代)」なのは、画面が約13.3型から約16.3型に変更されたためだ。

 そんなThinkPad X1 Fold 16 Gen 1は、先述した時代の潮流を踏まえつつ、先代で得たユーザーからのフィードバック(意見)を反映して開発された。本格的な出荷開始が遅れたのも、製品としての品質を重視した結果だという。

ThinkPad X1 Fold 16 Gen 1 ThinkPad X1 Fold 16 Gen 1は、新しいノートPCの「スタンダード」を模索して開発された側面もある

「小さく運んで、大きく使う」ために行った改良

 先代と比べて画面が大型化したThinkPad X1 Fold 16 Gen 1は、「Carry Small, Use Big(小さく運んで、大きく使う)」をコンセプトに開発されたという。このコンセプトの通り、画面を大型化する一方で、より持ち運びやすくするための工夫が凝らされている。

 まず、フォルダブル(折りたたみ可能)構造の要となるヒンジを改良した。ヒンジは200以上のパーツから構成されており、閉じた際にピッタリと閉じられるようになった。これにより、バッグやケースに入れて持ち運ぶ際の収まりがよくなっている。

 ヒンジに設置された3本のフレキシブルケーブルも、取り回しを工夫することで信頼性と耐久性を高めている。

ヒンジ ヒンジは200以上のパーツから構成されている(写真は背面側)
ヒンジ ヒンジの画面側には、3本のフレキシブルケーブルが装着されている。シルク印字からも分かる通り、これはバッテリーや信号線をマザーボードとつなげるためのものだ
ピッタリ ヒンジの改良により、画面を閉じた際の隙間がほぼなくなった。その影響でワイヤレスキーボード(後述)を本体に挟み込めなくなったが、代わりに本体とキーボードを磁力でくっ付けて持ち運べるようになった

 もう1つ、フォルダブル構造の要となる有機EL(OLED)パネルにも工夫が施されている。

 本機ではシャープディスプレイテクノロジー(SDTC)製の16.3型パネル(2560×2024ピクセル/アスペクト比4:3)を採用しているが、先代で課題だった狭額縁化(ナローベゼル)を実現するため、パネルを構成するパーツの一部を“折り曲げて”実装している。具体的にはパネルの制御基板を背面側に折り曲げて、パネル本体の“裏”に回している。

 一般的に、OLEDパネルや液晶パネルの制御基板は、液晶の下部(または横)に配置される。狭額縁化が3辺(または2辺)にとどまっている場合は、パネルの制御基板や無線アンテナが原因であることが多い。基板をパネルの裏側に回すことで、4辺に渡りベゼルを細くできた。

 本体の組み立て工程にも改善を加え、高い精度で生産できる体制を整えたという。

制御基板 OLEDパネルの制御基板をパネルの裏側に持ってくることで、4辺狭額縁化を実現した
パネルスペック ディスプレイは、サイズだけでなく最大解像度/輝度も向上し、色域も改善している

 本機では、ディスプレイ回りの工夫にとどまらず、先代のユーザーからのフィードバックを踏まえた使い勝手の改善も施している。

より便利に使うための改良

 ThinkPad X1 Fold 16 Gen 1では、先代ユーザーからのフィードバック踏まえて、利用時の各種挙動や本体の機能(部材)配置に改善を加えている。

 まず挙動面だが、本体に内蔵された8つのセンサー(ジャイロセンサーや加速度センサーなど)を活用し、利用モード(形態や本体の向き)を自動検知するようになった。これにより、映像ソースの向きやイメージ品質の自動変更や、常に正しい位相でのステレオ音声の再生マイクのAIノイズキャンセリングの常時有効化を実現した。

自動検知 本体に内蔵された8つのセンサーを使って、利用中のモードに合わせた映像の自動補正(向きや画質の調整)、音声の位相/ノイズキャンセリングの自動調整が行われるようになった

 この挙動改善は、本体の機能配置の改善と合わせて実施されている。

 本機ではまず、「どんなモードでも少なくとも2基のUSB Type-C端子と、Webカメラを不便なく使えるようにすること」を優先して、これらの配置から検討したという。結果、これらは本体の左側(向きは「ランドスケープモード」基準、以下同様)に配置されることになった。

 なお、USB Type-C端子は、3基のうち2基がThunderbolt 4(USB4)規格に、1基がUSB 3.2 Gen 2規格に準拠している。全てをThunderbolt 4対応としなかったのは「信号品質を考慮した結果」だという。ただし、全ポート共にUSB PD(Power Delivery)規格の電源入力と、DisplayPort 1.4 Alternate Mode規格の映像出力に対応しているので、利便性における影響は抑えられている。

機能配置 機能配置では、まずUSB Type-C端子とWebカメラの位置を検討したという
USBポート USB Type-C端子は、どんなモードでも少なくとも2基利用できるように配置された。信号品質を担保する観点から1基はUSB 3.2 Gen 2規格とされたが、残りの2基はThunderbolt 4規格に準拠している

 次に検討したのは、Wi-Fi(無線LAN)とモバイル通信(無線WAN:5G/LTE)のアンテナの位置だ。

 先代では、本体左側の上下にWi-Fi用アンテナを2基、モバイル通信用のアンテナを本体両側の上下に計4基搭載していた。それに対して、本機では全てのモードで通信品質を一定のパフォーマンスを保つ観点から全てのアンテナが本体左側に集中配置された。

 なお、本機ではWi-Fiモデルとモバイル通信対応モデルで本体外周の部材とデザイン処理が異なる。Wi-Fiモデルではアルミニウムフレームの質感を生かす処理を施す一方で、アンテナが多くなるモバイル通信対応モデルでは、アンテナ部が目立たないようにしつつ、質感を高めるような処理を行っているという。

旧モデル 先代ではWi-Fi用アンテナが本体左側、モバイル通信用アンテナが本体両側に分散設置されていた(保守マニュアルより)
新モデル それに対して、新モデルでは各種アンテナを本体左側に集中配置した。これにより、特にミニクラムシェルモードにおける通信パフォーマンスが改善した(画像はモバイル通信対応モデルにおける配置イメージ)
Wi-Fiモデル Wi-Fiモデルでは、アルミニウムフレームの質感を生かすデザイン処理を施している

 他の機能の配置は、各種ポートとWebカメラ、アンテナ類の配置を決定した後に検討された。

 スピーカーは、本体の左下に1基、右側の上下に1基ずつ搭載の計3基が搭載されている。いずれのスピーカーも特性は同じだ。そうなると「なんで3基?」という疑問が湧いてくるのだが、これはどんな向きでも2基でステレオ再生できるようにするための工夫だ。

 先述の通り、本機は8つのセンサーでモードや本体の向きを自動検知している。この検知データを活用して、向きによって左下の1基、または右上の1基が自動的に無効化され、常に2基から音が出る。

 スピーカーと同様の理由で、内蔵マイクも「2基×2セット」という構成となっている。利用するモードや本体の向きによって、本体右上または右端のいずれかのマイクが有効化される。

ポート類の配置 ポート類やカメラの配置が決まった後で、他のデバイスの配置を決めていったという
スピーカーとマイクは、常に2基が有効になるように設定されている

 本機には最大で64Whのリチウムポリマーバッテリーが搭載されている。具体的には、メイン基板(マザーボード)がある本体左側に16Wh、本体右側に48Whのモジュールを搭載している(16Whバッテリーは、直販のカスタマイズモデルでは省略可)。他の部品の配置状況はもちろんだが、本体の左半分と右半分の重量バランスも考慮した結果、このような容量バランスとなったという。

 本機では、2つのバッテリーが同時に充放電する制御を行っているという。バッテリーモジュールの寿命を平準化するための工夫だが、万が一どちらかのモジュールが利用不能になった場合も、利用できる片方で駆動を継続するフェイルセーフ機能も備える。

バッテリーモジュールは分散 重量バランスも考慮して、本機では16Whと48Whのバッテリーを分散設置している。通常時はどちらも同時に充放電する制御を行うことでモジュールのライフサイクル(≒寿命)を平準化するようにしている

 より快適に使えるようにするための工夫は、他にもある。

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