先述の通り、昨今ではヨーロッパを中心にPCの調達要件に「環境負荷の軽減」を盛り込む企業が増えている。そのことを受けて、大和研究所でも環境配慮に関する研究/開発活動がさかんだという。もちろん、ThinkPad X1 Fold 16 Gen 1にもその成果が盛り込まれている。
まず本体のバックパネルには、100%再生素材由来のバリスティックポリエステルを採用している。また、Bluetoothキーボードの底面や自立スタンドの脚部に使われている人工皮革「クラリーノ」も、再生素材を80%使って作られている(比率はいずれも質量ベース)。
加えて本機では、カメラで撮影したユーザーの顔の“向き”を判断して、画面から視線が外れた際に画面の輝度を落としたり消灯したりする機能が搭載されている。顔の向きの判定は本体のAIチップが担っており、プライバシーにも配慮されている。
本機が採用するOLEDパネルは、液晶パネルと比べて消費電力が大きくなる傾向にある。本体に備わっているハードウェアを駆使することで、少しでも省エネ性能を高めていることは興味深い。
サステナビリティーという観点では、昨今のレノボ製品では「本体部品への再生素材の利用」の他、「プラスチックを使わない梱包(こんぽう)」「低温ハンダの採用拡大」にも取り組んでいる。
本体部品への再生素材の利用は、2017年から再生プラスチックの採用を本格化し、2021年からはリサイクル金属(アルミニウム/マグネシウム)も使い始めた。再生プラスチックについては、2025年までにノートPC全製品での採用を目指しているという。
プラスチックを使わない梱包については、数年前のモデルからプラスチックの利用比率を順次減らしてきた。そして2023年モデルでは完全なプラスチックフリー梱包を実現したという。
低温ハンダ(LTS)は、通常よりも低い180度で溶けるハンダだ。レノボでは単にハンダとして使う冶金(やきん)、フラックス(融剤)、ハンダ付けする機器のプロファイル設定や、基板のデザインなど、さまざまな側面で最適化を行い、特許も取得している。二酸化炭素の排出量を削減する観点から、この特許は同業他社にも無償でライセンスされているという。
低温ハンダの採用によって、レノボグループでは2017年から2022までの間に1万1960トンの二酸化炭素の排出削減を実現できたとしている。今後も、低温ハンダを適用できる部位を拡大して、さらなる二酸化炭素の排出削減に取り組むとのことだ。
発表から本格的な販売開始まで1年少々かかってしまったThinkPad X1 Fold 16 Gen 1だが、説明を聞けば聞くほど、非常に魅力的なモデルであることがよく分かる。フォルダブル設計ゆえのメリットも多くあり、先代でネックになっていたポイントもしっかりと解消されている。
ただ、最小構成でも60万円弱という価格は、普通の個人ユーザーが買うには非常に悩ましいことも事実だ。「同じお金があれば、スペックをマシマシにしたX1 CarbonやX1 Yogaを2台買えるかもしれない」と、どうしても考えてしまう。今までにない機軸のPCゆえに、どうしても高価となってしまうのが、本機の弱点といえる。
今後、生産工程を含めて技術革新が進めば、今のノートPC程度の価格でフォルダブルPCを買える日が来るのだろうか。筆者個人としては、一刻も早くそういう状況になってほしいと思う。
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