本機のプロセッサにはノートPC向けの8コア16スレッド、ベースクロック3.8GHz、最大ブーストクロック5.1GHzのZen 4アーキテクチャを使用したRyzen 7 7840HSを搭載している。末尾のHSはAMDのモデル名規則が示す通り、ゲーミングノートPCやクリエイター向けモバイルPCなどに搭載されるハイパフォーマンスなモバイル向けAPUだ。
代表的なベンチマークテストを通して、UM780 XTXの性能についてチェックしてみよう。
まずは、ストレージの読み出し、書き込みテストを行いストレージの性能をテストする「CrystalDiskMark」を実行して、UM780 XTXに搭載されているストレージの速度を測ってみた。
UM780 XTXにはKingston製のPCIe 4.0 x4に対応したNVMeストレージ「OM8PGP41024Q-A0:1TB」が搭載されている。PCIe 4.0 x4に対応しているため、非常に早いストレージアクセスが期待できる。結果は以下の通りだ。
【Readアクセス】
【Writeアクセス】
期待通り、Read/Writeアクセスともに非常に高速であることがベンチマーク結果から得られた。特に小さいサイズでかつ大量のファイルを読み書きする際に、顕著に影響が出るランダムアクセスについても満足する結果となった。
今回は前世代のモバイル向けAPUのハイエンドモデル「Ryzen 7 7735HS」を搭載した「Minisforum HX77G」のベンチマークテストと比較することで、どれほど性能が向上しなのかを把握する参考値として捉えてもらえると幸いだ。
まずは3DレンダリングでCPUの性能をテストする「CINEBENCH R23」でRyzen 7 7840HSの実力を測ってみた。結果は以下の通りだ。
【マルチコア】
Ryzen 7 7840HS:1万6540ポイント
Ryzen 7 7735HS:1万1203ポイント
【シングルコア】
Ryzen 7 7840HS:1776ポイント
Ryzen 7 7735HS:1483ポイント
結果としては、Ryzen 7 7840HSのマルチコアスコアが約48%、シングルコアスコアが約20%高い結果となった。
もちろん、比較元となったRyzen 7 7735HSがベースクロック3.2GHz、最大ブーストクロックが4.75GHzに対して、Ryzen 7 7840HSはベースクロックが3.8GHz、最大ブーストクロックが5.1GHzなので、スコアとしてはRyzen 7 7840HSに軍配があがる。
しかし、マルチコアスコアに目を向けてみると、最大ブーストクロックは約7%程の向上で、マルチコアスコアが約48%向上しているので、着実にパフォーマンスが向上してきているといえる。
続いてさまざまなアプリケーションを実行して総合的なパフォーマンスを測定できる「PCMark10」を実行し、UM 780 XTXの総合的な実力を試してみた。結果は以下の通りだ。
【総合スコア】
UM780 XTX:7032ポイント
HX77G:7428ポイント
【Essentials】
UM780 XTX:1万47ポイント
HX77G:9886ポイント
【Productivity】
UM780 XTX:9830ポイント
HX77G:9258ポイント
【Digital Content Creation】
UM780 XTX:9555ポイント
HX77G:1万2150ポイント
比較元となったHX77Gは、外部GPUとしてAMD Radeon RX 6600Mを搭載しているため、写真編集やレンダリング、動画編集などが関係するDigital Content CreationのスコアはUM780 XTXを上回る。しかし、それ以外の項目ではUM780 XTXに軍配があがることから、事務寄りのタスクにおいては優位性があることが分かる。
今回はOCuLinkを使って外部GPUを接続していないため、無理があることは重々承知しているが、とはいえRDNA 3アーキテクチャのGPUコアを搭載したAMD Radeon 780Mの実力も気になるので、「FINAL FANTASY 15 WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」を実行してみた。結果は以下の通りだ。
【4K 高品質】
UM780 XTX:1137ポイント(動作困難)
HX77G:3032ポイント(普通)
【フルHD 高品質】
UM780 XTX:2801ポイント(やや重い)
HX77G:8215ポイント(快適)
AAAタイトルほどではないものの、APU向けと考えた場合かなり無理をさせている自覚はあったので、4KであろうがフルHDであろうが動作困難、良くて重い判定になるかと思いきや、フルHD高品質設定でやや重い判定となった。この点においては驚きの一言だ。
試しにフルHD、標準品質に設定してベンチマークテストを実行したところ、下記の結果が得られた。
【フルHD 標準品質】
UM780 XTX:1137ポイント(普通)
フルHDで画質設定を標準品質まで落とせば、FF15でも普通にプレイできることを考えると、軽めのゲームであれば難なくプレイできそうだ。
最近はAAAタイトルだけでなく、主にインディーズタイトルではリバイバルブームがあるのか2Dゲームが多い。決して昔のゲームしかプレイできない、というわけではない。
例えば、リビングPCとして利用して、マルチメディア端末として楽しみつつ、余暇でくつろぎながら軽めのゲームをプレイするのも良さそうだ。
他にも子どもにデビューPCとして持たせて、後々に「スペックが求められるゲームがしたい」と声が挙がったら、OCuLinkを活用して外部GPUを搭載するといった用途も考えられる。初期費用を抑えつつ子ども用PCを用意する手段の一つとしてアリだろう。
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