第5世代Xeon SPでは、各種AI処理やHPCに必要な演算処理も向上したのだという。実際のところ、その工夫は結構こまごまとしたものなのだが、端的にいえばSIMD命令を実行する際の動作クロックと消費電力の最適化を一層進めた成果となる。
「SSE」「AVX2」「AVX512」「AMX」など、SIMD命令にはいろいろな種類があるが、いずれも1つの命令でたくさんのデータを対象とする演算を行う点で共通している。当然だが、命令における演算が複雑であるほど、演算対象のデータ(レジスタ)の数が多いほどに、瞬間的な消費電力をは大きくなる。
下に示した図にある「Cdyn(Dynamic Capacitance)Class」は消費電力のレベルを召しており、レベルが大きいほど大きい消費電力に対応していることになる。また最下段の「Turbo Freqency」は動作クロックのモードを示しており、右に行くほど控え目なクロックに対応する。各種SIMD命令は、その複雑度に応じて「Ultra Light(超軽量)」「Light(軽量)」「Moderate(普通)」「Heavy(重量)」のランク付けがされている。
つまり、下の図は「SIMDの命令クラス(方式)」と「複雑度のランク」の掛け合わせで、どのCdyn ClassとTurbo Freqencyに属する処理なのかを示す“早見表”となる。
この表を見ると、第4世代ではCydn Class 3に相当する一部のSIMD命令が、第5世代では新設されたCdyn Class 4に位置付けられている。全体的に見るとAVX/AMX系の命令における動作クロックが高くなり、結果として消費電力を抑制できた――そう言いたいようだ。
第5世代Xeon SPと同時に、Intelはエッジサーバ向けCPU「Xeon D1800/2800シリーズ」と、エントリーサーバ向けCPU「Xeon E-2400シリーズ」も発表している。
Xeon D-1800/2800シリーズは、先代の「Xeon D-1700/2700シリーズ」と同じ「Ice Lake-Dマイクロアーキテクチャ」となっており、基本仕様に大きな変更はない。全12モデル展開で、最大コア数は20基から22基となった。Xeon D-1800シリーズについては、内部に100GBイーサネットコントローラーを2基統合している。
Xeon E-2400シリーズは、マイクロアーキテクチャが「Rocket Lake-E」から「Raptor Lake-E」にアップデートされている。その影響で、メモリはDDR4ベースからDDR5ベースとなり、PCI ExpressバスもPCI Express 5.0にアップデートされている。
サーバ向けCPUの分野において、IntelはAMDの「EPYCシリーズ」と激闘を繰り広げている。
これまで、IntelはAMDに対してCPUコアの数で“劣勢”に立たされてきた。その巻き返し策として、Intelは2024年前半にも高効率コア(Eコア)のみで構成される新型Xeon「Sierra Forest」(開発コード名)を投入する計画だ。
Sierra Forestはダイ1基につきCPUコアを最大144基搭載しており、これを2基連結することで最大288コアのCPUとして登場する見通しだ。ただし、Eコアのみということでハイパースレッディングには対応しておらず、288コア構成の場合、実行できるスレッドはコア数と同じ288個となる。
AMDも負けじと、このSierra Forestの対抗馬として、Zen 5アーキテクチャベースの新型EPYCを開発しているとされる。うわさレベルだが、この新型EPYCは192コア384スレッド以上で登場するという話もあり、これからはコア数とスレッド数の“えげつない戦争”が繰り広げられそうで、それはそれで面白そうだ。
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