第5世代Xeon SPの製品ラインアップは以下のようになっている。1ソケット(1S)ソリューションや2ソケット(2S)ソリューションを中心としたモデルのみの提供となっており、これ以上の大規模なマルチソケット(H)システムについては、システムベンダーを通して遅れてリリースされる見通しだ。
表を見ても分かるように、対応メモリは全てDDR5規格となる。基本的に動作クロックが高いほど、ダイ(あるいはコア)の数が多いほど製品グレードが高まるのは、クライアントPC向けCPUと同様だ。
近年のXeon SPは、用途別にラインアップが細分化されている。上で示した表でも汎用(はんよう)的な「高性能サーバ用」「標準性能サーバ用」の他、「水冷システム用(Q)」「ネットワークサーバ用(N)」「クラウド事業者用(P/V)」「ストレージサーバ用(S)」や、長期(10年)サポート付きの「基幹サービス用(T)」と、細かく区分されていることが分かる。
製品リストを見ると「DSA」「IAA」「QAT」「DLB」という項目もあるが、これはCPUに内蔵されているアクセラレーターユニットの基数を表している。これらのアクセラレーターは第4世代から引き続き搭載されているものだが、本稿でも軽く解説しておこう。
DSAは「Data Streaming Accelerator」で、CPUのロード/ストア命令に成り代わり、主にメモリ間コピーを実践してくれるユニットだ。イメージとしてはDMA(Direct Memory Access)ユニットに近いのだが、DSAはデータの伝送範囲を「CPU〜メモリ〜キャッシュ」だけでなく、「メモリ〜ストレージ〜各種PCI Expressデバイス」にまで広げることで汎用性を高めている。
DMAと同じように、DSAを運用するには各種パラメータ設定が必要となる。自動で有効化できるものではないため、活用には一定の技術力や理解力が求められるが、その難易度を下げる目的のプログラムライブラリとして「Intel Media Transport Library(IMTL)」や「Data Plane Development Kit(DPDK)」も提供されている。
IAAは「In-Memory Analytics Accelerator」の略で、メモリ内容の圧縮/展開/暗号化/復号/フィルタリングを請け負うアクセラレーターだ。製品リストを見ると、ネットワークサーバ向け製品はIAAの搭載数が極端に多い。
IAAの活用目的はいろいろあるが、例えば「悪意のあるプログラムが、標的のプログラムのデータ領域から“生データ”を抜き出しても、全く意味のなさないデータに見せる」といったことができる。制御設定はCPUから行われるが、実務は完全にCPUの手から離れた状態で行われるのは、先に紹介したDSAと同様だ。また、IAAとDSAは連携して使うこともできる。
QATは「Quick Assist Technology」の略で、こちらもデータの圧縮/展開/暗号化/復号/フィルタリングを請け負うアクセラレーターとなる。製品リストを見ると、ネットワークサーバ向けモデルはもちろん、ストレージサーバ向けモデルもQATの搭載数が多い。
IAAとの違いだが、IAAはメモリの内容そのものや、メモリアクセスに付随する各種処理系を担うのに対して、QATはアプリが取り扱うデータパッケージに対する処理を担当する。
DLBは「Dynamic Load Balancer」の略で、多くの場合「特定のCPUコアに負荷が集中することを軽減する機構」だと説明される。ただし、ここでいう「負荷」は演算の負荷ではなく、ネットワーク経由で伝送されるパケットデータを処理する際の負荷を意味する。ゆえに、DLBもネットワークサーバ向け製品やストレージサーバ向けモデルに多く搭載されている。
100Gbpsクラスのネットワーク処理が特定のCPUコアに一極集中すると、サーバ全体のパフォーマンスに影響する。DLBはこの問題を緩和するために用意されているが、利用するには仮想ドライバの導入と、専用のフロントエンドアプリが必要となる。「あるだけで勝手に恩恵が得られる」というものではないので注意しよう。
次のページでは、第5世代Xeon SPの特徴をもう少し“深掘り”してみよう。
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