「SLIM」の打ち上げから月面着陸までをVRで体験! METoA Ginzaの「“月”から見る月面着陸VR体験」に行ってきた(1/2 ページ)

» 2024年03月09日 18時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

 三菱電機は、東京都中央区にある三菱電機イベントスクエア「METoA Ginza」(メトア ギンザ)で「“月”から見る月面着陸VR体験」を開催する。

 これは、世界初となる月面への高精度着陸に成功した小型月着陸実証機「SLIM」(Smart Lander for Investigating Moon)が打ち上げられた後、H2Aロケットから切り離される瞬間、月へ向かう航路や月面着陸の瞬間を、SLIMと伴走(編隊飛行)しているかのようにVR上で体験できるというものだ。

 それに先がけ、 メディア向けに体験会とSLIMプロジェクトにかかわった各社からの説明が行われた。

METoA Ginza 「“月”から見る月面着陸VR体験」の会場となるMEToA Ginza(2階)

ピンポイント着陸した上で月面のデータ収集を行う「SLIM」

 月面まであと少しというところでエンジン故障に見舞われ、太陽光パネルが上に向く姿勢で着陸できなかったことが特にSNSで注目を浴び、擬人化も盛んに行われているSLIMだが、宇宙開発的には大きな意味を持つ機体だ。

 というのも、ロボットを無事に月面着陸させられたのは国としては5カ国目、ピンポイント着陸は世界初という快挙を成し遂げたからだ。しかも、目標着陸地点に着陸できるよう姿勢の制御や着陸位置の確認などを、地上からの指示を受けず自分で判断して行っている。

SLIMの自動運転 SLIMは宇宙空間に出た後、自律判断で月面に着陸した。写真は左上から矢印の順に、宇宙空間のSLIM/月面を周回するSLIM/着陸目標地点/着陸したSLIM

 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)宇宙科学研究所 SLIMプロジェクトチーム 石田貴行氏は、「降りられるところではなく降りたいところに降りるための、高精度着陸技術の実証が今回の目的だった。目標地点から半径100mの範囲内で、カメラで見たクレーターなどの画像処理をしながら着陸地点を自分で考えて判断して降りることができたので、目的は果たせた、成功したと見ている」と解説した。

JAXA 宇宙科学研究所 SLIMプロジェクトチーム 石田貴行氏 JAXA 宇宙科学研究所 SLIMプロジェクトチーム 石田貴行氏

 SLIMのシステム開発および製造に携わった三菱電機 鎌倉製作所 宇宙技術部 千葉旭氏は、SLIM全体を制御するために、センサーやカメラ、コンポーネントなどをサブシステムとしてグルーピングし、それらをまとめて全体を見るシステムにしたことを説明した。

三菱電機 鎌倉製作所 宇宙技術部 千葉旭氏 三菱電機 鎌倉製作所 宇宙技術部 千葉旭氏

 「三菱電機では、気象衛星ひまわりやGPSなど大型衛星の製作は得意だが、SLIMのような小型タイプは全く異なる。そのため、画像処理や姿勢制御などの演算を行う部分の設計、消費電力の抑制、ひまわりは高度3万6000kmだがSLIMのある月はその10倍距離が離れているので、地球に送信するデータの取捨選択を判定する部分で苦労した。次の火星衛星探査計画MMX(Martian Moons eXploration)につなげていきたい」(千葉氏)

 ひっくり返ったSLIMを撮影してSLIMと自身を一躍有名にしたのは、タカラトミーが手がけた「Lunar Excursion Vehicle 2」(LEV-2/レブツー)だ。愛称は「SORA-Q」(ソラキュー)で、月面着陸直前に、SLIMから切り離された球体のSORA-Qは、月面でカタツムリのような形に変形した。

 頭のように見える部分はSORA-Qの尻尾にあたり、スタビライザーとしての役割を担う。地上と比べ、粒子の細かい月の砂(レゴリス)と地上の6分の1の重力の中でも、砂に埋まらず、ひっくり返らないようSORA-Qを制御する。

 SORA-Qのミッションの1つに、SLIMを撮影して地上にその写真データを送ることがある。そのため、SLIMの金色を目安に付かず離れず周囲を移動し、ちょうど良い画角になったら複数枚の写真を撮影し、その中から最適と判断した写真を地球に送信する。データ通信で欠かせないのは、LEV-1(レブワン)だ。これはSORA-Qと連携して地球へデータを送る役割を担っている。

タカラトミー アライアンスキャラクター事業部 石井孝典氏 タカラトミー アライアンスキャラクター事業部 石井孝典氏

 タカラトミー アライアンスキャラクター事業部 石井孝典氏は、「SORA-Qは日本初の月面探査ロボットであり、月面探査する自律ロボットとしては世界初で、しかも複数ロボットの連携、球体からの変形ロボットというところで注目していただければ」と解説した。

三菱電機エンジニアリング 鎌倉事業所 生産情報技術部 柴崎健氏 三菱電機エンジニアリング 鎌倉事業所 生産情報技術部 柴崎健氏

 VR画像を手がけたのは、三菱電機エンジニアリングだ。同社 鎌倉事業所 生産情報技術部 柴崎健氏によれば、今回のVR映像はSLIMの設計に用いた3D CADデータをそのまま使っていること、地球や太陽の位置、月のクレーター情報などはJAXAやNASAの公開データを元にしていることなどから、「実物と寸分たがわぬVR化を実現している。SLIMが着陸した地点の石やレゴリスの位置もJAXAからいただいた情報を元に再現しているので、TVやWebなどで見るのとは違うVRならではの風景を見に来てもらいたい」と見どころを解説していた。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー