ポストコロナ時代に入ったが、世界情勢の不安定化や続く円安など業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。前編の記事はこちら。
マウスコンピューターの30年の歴史の中では、いくつものエポックメイキングな製品が登場している。創業期には“300ドルPC”として話題を集めた「Easy-300」を皮切りに、キューブ型PCやコストパフォーマンスを追求した「LUV MACHINES」を投入している。
さらに、ゲーミングPCの「G-Tune」、法人向けPCの「MousePro」、クリエイター向けPCの「DAIV」など、ブランド展開とともに製品カテゴリーを広げながら特徴的な製品を投入し続けてきた。製品以外にも飯山工場での国内生産、24時間365日の電話サポート、72時間以内での修理完了といった品質強化やサポート強化に、積極的に取り組んできたことも見逃せない。
インタビューの後編では、同社の小松永門社長に30年間の歴史を振り返ってもらうとともに、社名に込めた思いや品質へのこだわり、そして、今後のAI PCへの取り組み、31年目以降の方向性についても聞いた。
また今回の取材の中では、同社初となるChromeOS採用モデルの投入について初めて言及したのも注目だ。
―― マウスコンピューターは1993年4月の創業から30周年の節目を迎えましたが、この30年間に渡り、日本のPC市場にどんな影響を与えてきたと考えていますか。
小松 それは、私がお客さまに聞いてみたい質問ですね(笑)。ただ、PCを購入する際に選択肢の1つを提供できたとは思っています。ハイパフォーマンスのゲーミングPCが欲しい、最新のCPUを搭載したPCが欲しい、日本で生産しているPCが欲しい、あるいは24時間365日の電話サポートや72時間以内の修理が可能であるから安心だといったように、当社ならではの特徴を評価していただき、それらの観点から選べるPCを提供できたという点では貢献できたと思っています。
―― 一方で、経営の観点ではどのような点にこだわってきましたか。
小松 一番お客さまに迷惑をかけないこととは何か。それは、企業を存続させるということです。加えて、お客さまにとって理不尽に感じることはしない、紳士的とは思えない振る舞いはしないといったことは、企業にとって最低限のルールです。お客さまに対しても、パートナー企業に対しても、アンフェアなことは絶対にしないことにこだわり続けてきました。
さらに、物事を隠さない企業風土を作り、特に悪いことが発生したときこそ、隠蔽(いんぺい)しないことを徹底してきました。例えば、PCに使用される部品の一部に不良があった場合にはすぐに情報を共有し、完成品に不具合が発生した場合にも、すぐに対策が取れるようにしています。
また短期的な利益を追求するために、何かを犠牲にしたり、混乱するような情報を流したり、コンプライアンスから外れるようなことをしたりといったことがないように強く意識してきました。これらのことが、30年間に渡って企業風土として浸透することで、課題に対しても真面目に取り組む姿勢が根づいています。
これまでの30年間は急激な成長は求めず、地道にビジネスを進化させ、ワンステップずつ着実に階段を上ってきたといえます。この姿勢はこれからも変わりません。
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