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動画編集アプリ「Adobe Premiere Pro」に生成AIビデオツールを搭載 2025年後半予定サードパーティー製モデルも利用可能

» 2024年04月15日 22時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 アドビは4月15日、動画編集アプリ「Adobe Premiere Pro」について、生成AIベースのビデオツールを2025年後半をめどに導入する方針を明らかにした。同日、実装予定の機能が先行公開されたので、その概要をお伝えする。

生成AIを使ったオブジェクトの追加/削除

 特定のシーンにおいてオブジェクトを追加したい場合、動画の映像内で範囲を指定し、プロンプトで指示をすることによって、AIが生成したオブジェクトが動画内に“合成”される。

セレクト 範囲指定ツール(四角/円形/ペン)を選んでから……
プロンプト 映像内の範囲を選択し、プロンプトを入力する。この例の場合、「Pile of large diamonds on black velvet cloth(黒いベルベット地の布の上に大きなダイヤモンドの山)」と入れてから「Generate(生成)」をクリックすると……
候補登場 プロンプトを元に生成AIが作った映像の候補が3つ出てくる。イメージが幾つか出てくる。イメージ通りのものを選ぶと……
映像内に合成されたよ 映像内にその映像が合成される。もちろん、合成範囲外の映像が動けば、それに合わせて範囲内の合成映像も動くようになっている

 逆に、範囲を指定してオブジェクトを消去する機能(スマートマスキング)も実装される。生成AIが当該オブジェクトを“埋める”画像を生成することで、オブジェクトが消えるという寸法だ。

マジックツール 自動選択ツールをクリックして……
消したいものを選択 消したいオブジェクトを選択してから「Remove Object(オブジェクトの消去)」をクリックすると……
消えた! 当該オブジェクトが消えた

 本機能をうまく活用すれば、写り込ませるべきものが足りなかったり、逆に余計なものが写り込んでしまったりした際に、撮影し直すことなく“手直し”が可能となる。

 なお、オブジェクトの追加/削除の際に使われる生成AIのデータは「Adobe Firefly」に新たに加わる「ビデオモデル」がベースとなっている。

生成AIによるクリップ拡張(シーンの引き延ばし)

 動画を撮影した後に「あ、ここもう数秒長く撮っておきたかったな……」と後悔することもある。そんな際に便利な機能として、生成AIベースの「クリップ拡張(シーンの引き延ばし)」機能が追加される。

 使い方は簡単で、引き伸ばしたい動画のタイムラインの“終端”でクリップ拡張アイコンをクリックし、その後タイムラインを伸ばすと、その分だけシーンを引き延ばしてくれる。

トリミング限界 動画の終端からさらに引き延ばしたい場合は……
引き延ばすよ クリップ拡張アイコンをクリックしてから……
さらに伸ばす タイムラインを終端からさらに伸ばす。すると生成AIがシーンの補完を開始し……
延びた その分だけシーンが引き延ばされた

 先述のオブジェクトの追加/削除も含め、加工の履歴はC2PA形式で書き出した動画に保存される。もちろん、加工時に使われた映像や画像の来歴情報も一緒に保存されるなど、コンテンツの“トレーサビリティー”もしっかりと確保可能だ。

テキストからの映像生成

 上記2つは、既存の映像をベースに生成AIを適用していたが、生成AIで元動画にない映像を生成して追加する機能として「テキストから動画生成(Text to Video)」も実装される。

生成 「Driving through the city at night from the driver's view(夜の都会のドライブを運転手目線から)」というプロンプトから、映像を生成した様子

サードパーティー製生成AIモデルの利用

 Premiere Proでは、プラグインを導入することでAdobe Firefly以外のサードパーティー製生成AIビデオモデルも利用できるようになる見通しだ。現時点では「OpenAI」「Runway」「Pika」の生成AIを利用したデモンストレーションが公開されている。

 なお、サードパーティー製生成AIビデオモデルを使った場合も、C2PA形式の来歴情報が付与される。

OpenAI プラグインを導入することで、Adobe Firefly以外の生成AIモデルを使うこともできる。この画像では、OpenAIのモデルを選択している
生成 動画内にOpenAIのプラグインで、「View of city skyline in the rain at night(夜の雨の中の街のスカイラインの眺め)」というプロンプトから生成した映像を挿入しようとしているイメージ

β実装中の一部機能を正式実装(5月予定)

 今回発表された生成AI機能とは別に、現行のPremiere Proにβ実装されている以下の機能が、5月をめどに正式機能として実装される(参考記事)。

  • インタラクティブなフェードハンドル
  • クリップバッジ
  • 新しいクリップカラーと波形デザイン
  • AIベースのカテゴリータグ付与
実装 2024年1月にβ実装された機能が、5月をめどに正式実装される

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