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生成AI「Adobe Firefly」誕生から1年 日本ではどう使われている?

» 2024年03月21日 20時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 Adobeがコンテンツ生成AI「Adobe Firefly」を発表して1年が経過した。

 この1年間でFireflyはどのように進化したのか――アドビ(Adobeの日本法人)が3月21日、報道関係者向けの説明会を開催した。説明会ではFireflyの近況説明の他、3D/AR製作ソリューション「Adobe Substance 3D」へのFireflyの実装も発表された。

1年たった 3月22日(日本時間)、Adobe Fireflyがβリリースされてからちょうど1年を迎える。このバースデーケーキの画像はFirefyで生成されたものだという(参考記事
同じキーワード 上の画像と同じ「1周年を迎えるAdobe Fireflyをお祝いするケーキ」というキーワードで画像を生成してみた。上とはちょっと違う結果になったが、きちんと1周年記念のバースデーケーキが描かれている
西山常務 説明会に登壇したアドビの西山正一常務兼CDO(最高デジタル責任者)

「便利で使いやすいAI」を目指すアドビ

 2023年というと、国内外で「生成AI」という言葉が一気に盛り上がりを見せた1年間だった。それ以前からアプリやサービスへのAIの適用に注力していたAdobeが3月22日(日本時間)、満を持してβ提供を始めた生成AIがFireflyだ。

 βリリース以来、「Photoshop」や「Illustrator」などの自社のデスクトップアプリへの統合や、日本語を含む多言語対応を進めていき、9月13日には商用利用可能な一般公開版が登場した。

 アドビでは、生成AI(Firefly)の推進に当たって「安全な商用利用」「ワークフローへの統合」「企業向けのサービス設計(企業単位でのAIモデルのカスタマイズ)」「認証情報のサポート(コンテンツの来歴トレーサビリティの確保)」の4点を重視しているという。

生成AIポリシー アドビが生成AIを推進する上で掲げているポリシー。Fireflyもこれに従って開発が進められている
Fireflyの歴史 βサービスの開始以来、Adobe FireflyはアドビのデスクトップアプリやWebベースのサービスに統合が進められてきた

 Adobe Fireflyは画像の生成/補正/補完という、ある意味で“分かりやすい”生成AIだが、アドビはFirefly以外でも生成AIに関する取り組みを推進している。

 英語版限定だが、2月20日(米国太平洋時間)にはPDFドキュメントアプリ「Adobe Acrobat」に生成AIベースの対話機能「AI Assistant(AIアシスタント)」がβ実装された。

 AI Assistantは、Acrobat向けの機械学習モデル「Liquid Mode(リキッドモード)」をベースに開発されており、開いているPDFファイルについて対話方式で質問できる他、PDFファイルのサマライズ(要約)、メールやプレゼンテーション向けの文章生成など、蓄積してきたあらゆるドキュメントを利活用した業務効率の向上が図れるという。

AI Assistant Acrobatの英語版限定でβ実装されている「AI Assistant」機能

 生成AIというと、生成されるデータや、そのデータの元となる「教師データ」にまつわる“著作権”に関する問題も取り上げられることが多い。その点、Adobe FireflyやAI Assistantではデータの取り扱いに細心の注意を払っているという。

 Fireflyの場合、教師データはストック画像サービス「Adobe Stock」にアップロードされているアセット(コンテンツ)のうち、アセットの権利者(著作権者)から学習データとしての利用許諾を得たものから生成される。権利関係が不明瞭、あるいは権利者から同意を得られていないデータは使わないため、著作権にまつわるトラブルを極小化できる

 生成後の画像についても、元データがあるものについてはC2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)が定めた規格に準拠した来歴記録がなされる。

 C2PAは画像の真正性や来歴を明確化する仕組みを策定しており、日本からはソニーが運営メンバーとして参加している他、キヤノンとニコンも一般メンバーとして参加している。3月12日には、日本の報道機関としては初めてNHK(日本放送協会)も一般メンバーとして加わった。なお、NHKを含む4社は、C2PAの母体となったCAI(Content Authenticity Initiative)にも加盟している。

 生成AIの利活用推進と並行して、コンテンツクリエイターの権利を守るための活動も並行して行う――アドビなりの「責任あるAI」への取り組みだ。

NHKも 3月12日、日本の報道機関としては初めてNHKがCAIとC2PAに加入した。C2PAでは、運営メンバーの次に影響力のある一般メンバーとして活動するという

Substance 3Dに実装される生成AI機能

 Substance 3DへのFireflyの適用は、「Substance 3D Sampler」と「Substance 3D Stager」に対して行われる。アプリを最新版にアップデートすれば、全Substance 3Dユーザーが利用できるβ機能として利用可能だ。

Substance 3D Sampler

 Substance 3D Samplerには「テキストからテクスチャ生成」が実装される。

 この機能を使うと、簡単なプロンプトを入力することで3Dオブジェクトの表面に配置するテクスチャを自動生成してくれる。ストック画像の選定やプロトタイプの作成、写真撮影の手間から解放されるのがメリットだという。

テキストからテクスチャ生成 テキストからテクスチャ生成を利用すると、プロンプトをもとに3Dオブジェクトの表面に貼るテクスチャを自動生成できる

Substance 3D Stager

 Substance 3D Stagerには「背景を生成」が実装される。

 これは読んで字のごとく、簡単なプロンプトから3Dオブジェクトの背景を自動生成してくれる機能だ。3Dオブジェクトに対して遠近法やライティングも自動調整するので、違和感なく合成できるという。

背景を生成 背景を生成を使うと、プロンプトに従って生成された背景イメージが自動生成される。遠近法やライティングの計算は自動で行われるので、ユーザーによる調整は基本的に不要だ

日本人は「生成AI」に保守的?

 今回の説明会に関する質疑応答では、Adobe Fireflyについて「(全世界と比べて)日本のユーザーの使い方に特徴はあるのか?」という質問があった。

 アドビの西山正一常務兼CDO(最高デジタル責任者)によると、定量的なデータを出しづらいとしつつも、「日本のユーザーは、利用率的な意味で(生成AIに対して)コンサバティブ(保守的)な面がある」と語った。

 日本のユーザーは、生成AI(Firefly)に対してすごく興味や感心の度合いは高いのだという。しかし、実際に利用する場面になると“様子見”となるというのだ。

 日本には世界的なIP(知的財産)保有者が多い。同社ではそのような権利者と直接対話をすることも多いそうだが、日本ではIP保有者も生成AIの利用には比較的積極的なのだという。必要な機能をヒアリングしつつ、実装を検討しているそうだ。

 大規模なユースケースが増えれば、日本における生成AIの利活用は一層進むのかもしれない。

日本での取り組み 日本でも、生成AIの利用を推進するための取り組みを進めている

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