おそらく、本機で絵を描くとして一番の鍵になるのが、遅延をどう受け止めるかでしょう。これはペン自体の性能というよりSoCの処理性能に余裕がないのが原因で、アプリの処理や重いブラシの影響を受けたときに違和感を覚えるレベルになりやすいです。
セルシスの「CLIP STUDIO PAINT」でおそらく最も軽いと思われる「ドットペン」で、ペン先から線が現れるまでの遅延を120fpsの高速度撮影で測った結果が以下の通りです。
実際に描いてみると、自分の感覚ではドットペンや線画系のブラシならば遅延は気にならなかったり、多少遅延を感じたりしても普通に描くことはできました。とはいえ普段マシンパワーに甘えて描いているような感じで制作できるわけはなく、いくつかの「やりくり」をすることになります。
まずはキャンバスを小さめに作ること。縦横を半分にすれば、描画処理に必要な演算は4倍少なくなります。
次に処理が軽いブラシを探したり、手振れ補正を切ってみたりすること。
さらに、基礎的な反応が良いアプリを探すこと。イラストアプリは沢山ありますが、軽いブラシであっても遅延感の差は結構あります。参考に、自分が本機でいくつか試して、追従が良いと感じたのが以下のアプリです。
全体として、自分の感覚だと「ラフや線画、軽い彩色まではOK」ですが、「後半の工程はもっさり感とつきあいながらやるしかない」というのが正直な感覚です。
現状、ディスプレイは中間調をやや明るく表示するように調整されているようです。「色が薄い」という感想も見かけましたが、実際には色よりもこの設定のせいかもしれません。試しに黒白の縞模様とグレーのパッチを作って、目を細めて濃さがそろうのはいくつかというチェックをすると、iPad Proやワコムの「Cintiq Pro」ではRGB値184あたりでそろったように見え、本機では168あたりでそろったように見えました。
中間調が明るいディスプレイで作ったファイルを人に渡すと中間調が締まって見え、意図したよりもコッテリした表示になります。幸いこのズレは補正が容易なので、「人に見せるファイルは明るくしてから書き出す」と覚えておくと良いでしょう。
アップデートなどでいつの間にか直っているかもしれませんが、人に見せる作品を作るときには気を付けておくと良いでしょう。
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