マウスコンピューターのPCは、最新CPUの搭載を始めとして、最新技術にいち早く対応することが特徴だが、その一方で、ユニークなモノ作りでも知られるPCメーカーだ。
2011年に発売したリビング設置型PC「LUVLIB」や、2014年の手のひらサイズのスティック型PC「m-Stick」、オンキヨーと手を組んだハイレゾ対応のキューブ型PC「EasyCube59HD」、スタディPC「mouse E10」など、同社だからこそ生まれたPCも少なくない。
また、一般向けPCである「mouse」、ゲームPC向けの「G-Tune」に加えて、2011年からは、法人向けPCブランドの「MousePro」をスタートし、2016年にはクリエイター向けPCブランドの「DAIV」を開始した。2023年からは、直販限定のゲーム向けPCブランド「NEXTGEAR」を新たに用意するなど、ブランド展開を強化してきた。
特にMouseProは、国内PC市場全体の約7割を占めるビジネスPC市場に向けて投入したPCであり、長期間に渡って同一仕様のPCを調達したいという法人需要に対応している。同社が得意としているのは毎月のように仕様を見直すという迅速性だが、MouseProはそれらのモノ作りとは一線を画したものであり、国内生産による柔軟なカスタマイズ対応ができる強みを生かして、ビジネス市場における基盤を着実に築いてきた。
他のブランドに比べると派手さはないが、今後の同社の事業拡大において、重要な意味を持つ製品だといえる。
小松氏も「MouseProは、法人ユーザーに求められるPCは何かといったことを追求したPCだ。当社にとって、重要なブランドの1つに育っている」と胸を張る。
同社は2016年1月に、PCのブランド名を「Mouse Computer」から「mouse」に変更した。
愛称として使われていたmouseをブランド名にした理由について小松氏は、「長年に渡って、当社の製品を使っていただいているユーザーの方々が、愛着を込めて『マウス』と呼んでいただいたり、SNSに『マウス』と書き込んでいただいたりしていることを捉えて、それをブランドにした。また、もっと多くの方々にマウスコンピューターを知ってもらうという狙いもあった」とする。小文字でmouseとし、丸みを帯びた書体を採用したのも愛着がわきやすいロゴにするためだ。
もともとマウスコンピューターの「マウス」は、PC周辺機器のマウスが由来だ。マウスを製品化していたわけではなく、マウスが、PCにとって当たり前の存在であり、同時に人とPCを結びつけるために、重要な役割を果たしていることに着目して命名した。
創業当初はPCの価格が高く、誰でも購入できるものではなかったが、それを手ごろな価格で購入できるようにしたのが、最初に手掛けた人とPCを結びつける役割であり、PCユーザーのすそ野拡大に貢献してきた。その後、PCの普及に伴って利用シーンが広がり、さまざまなPCが求められるようになった。そういった変化に対応しながら、人とPCを結びつけるための役割を果たしてきたというわけだ。
mouseへのブランド変更の際に、同社では、新たなコーポレートメッセージとして「期待を超えるコンピューター。」を打ち出した。これは、30周年を迎えた2023年度には、「期待を超えるパソコン!」に変更している。
ここにも、小松氏の思い入れがある。
小松氏は、「創業以来、取り組んできたモノ作りのDNAを、1つの言葉に集約したもの」と位置付けながら、次のように説明する。
「仮に『期待に応える』した場合、それでは、受け身の姿勢でしかない。当社は自分たちで考えてポジティブな姿勢でモノを作り、お客さまの期待を超えたい。いい意味でお客さまの期待を裏切り、期待を超えていきたいという意味を込めた」とする。
また「マウスコンピューターを知ってもらう上で、まずはPCのメーカーであるということを訴える必要があると考えた。当社は、PCやPC周辺機器、サーバなどのハードウェアを開発/生産/販売するPCメーカーであり、一歩先を見据えて、お客さまの『こうして欲しい』という要望に対して、それを上回る提案をすることに取り組みたい」とした。
そして小松氏は、「期待を超えるパソコン!には、具体的な定義がなく、合格ラインもない。常に上を目指す必要がある。もっと多くの期待を超えるパソコン!を実現しなくてはならない」と、社内にゲキを飛ばす。
なお、コーポレートメッセージの最後には、「!」マークをつけている。この感嘆符は、特別なフォントを作って、右斜めに傾けている。パソコンビジネスによって、これからも右肩上がりに成長していくという意味を込めたという。
小松氏が社長を務めた18年間は、マウスコンピューターの事業成長の18年間だといえる。国内生産、国内サポート、国内修理体制を構築し、それを強化し続けており、次の成長に向けた地盤が整っている。この実績をベースに、新社長体制の元で新たな成長戦略がどう描かれるのかが、これから楽しみだ。
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