さて、付属の「ProArtペン」も見ていきましょう。鉛筆を太くしたような六角形のペンで、運搬時は本体上面の輪に差し込んで固定する方式です。筆圧だけでなく、傾き検知にも対応しています。
また、手元のペンの中ではWacom One(初代)のペンと、サムスン電子の「Galaxy Tab S8+」付属のSペンも動作しました。
この時点で、読者のみなさんはワコムのペンシステムといっても過信は禁物なのは察していると思いますが、実際にエントリーモデル向けのペンです。今どきジッターのような重い問題の心配はないとはいえ、この類のペンの主な弱点として軽い筆圧の自然さが「Pro Pen 2」などより劣ることを挙げておきたいです。
実際に描き比べてみると、かなり軽い筆圧にも反応はするとはいえ、その筆圧で出る値がいきなり濃いめで唐突感があります。
また、本機固有の弱点としてはカーソルずれがあることと、遅延もわずかにあることが挙げられます。個体の問題かもしれませんが、少なくとも評価機は、持ち方に関わらずカーソルが左にずれていました。
遅延については、タッチスクロールのもっさり感や、素早く描くとペン先と線が離れて見えやすいなど、快適性に関わる程度にはあります。作業効率に影響しないだろうとはいえ、最近のスルスルついてくるモバイルデバイスに慣れていると違和感が残るかもしれません。
セルシスの「PCLIP STUDIO PAINT」のドットペンで、1目盛が約60分の1秒になるようにペンを動かしています。他の方法で平均値を出した結果とも比べているので、ある程度見た目通りの遅延感になると思います。冒頭で述べた通り、今、このデバイスを液タブの代用として評価したくはないです。一方で、この価格帯の上質なデバイスならば、格下感のないペンと完成度がほしいな……とはどうしても思ってしまいます。
実際に、いつもの絵でイラスト制作に相当する使い方もしてみましたが、ラフや線画はOK、彩色は全体的にグラデーションが意図した通りには出しづらく、軽い筆圧を使って薄く塗る筆運びの代わりにブラシ設定を変えて薄くする必要がある場面もありました。
また、本機は工場出荷状態でタッチ機能は無効になっており、タッチ有効でペン作業をするとやや誤爆しやすいのは気になりました。それでも、ホバー範囲が画面から高めでタッチを無視する処理が効きやすいことと、ホバー範囲外に出たあとも0.5秒ぐらいはタッチを無視する処理が入っているようなので、気を付けていれば誤爆は避けやすいです。
発熱も問題ないと思います。本機はファンレスですが、デフォルトの輝度ではほんのり暖かくなるぐらいで素手でもよさそうです。外部電源を繋いで最大輝度で長時間使うとさすがに暖かくなるので、タブレット用の手袋などを用意しておくとよさそうです。
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