プロナビ

VRやハイスペックPCは教育をどう変えるのか? マウスコンピューターと大阪教育大学が「VR教材」セミナーを開催(4/5 ページ)

» 2024年07月25日 17時00分 公開
[石井英男,ITmedia]

小学校の音楽科における活用事例

 続いて、大阪教育大学付属池田小学校の石光政徳教諭が小学校課程の音楽科におけるVR教材の実践例を紹介した。

 基本的な映像の作り方は、先に紹介した大阪教育大学付属池田中学校の事例とおおむね同様で、この事例ではオーストリアのヨハン・シュトラウス1世が作曲した「ラデツキー行進曲」の演奏の様子を授業に用いたという。

 映像が使われたのは小学3年生の授業で、児童には“音色”を意識してVR映像の実況をするというお題が与えられた。これはオーケストラで使われる楽器の“音色”を知ることが目的だ。

石光教諭 大阪教育大学付属池田小学校の石光政徳教諭
授業の概要 音色を意識してラデツキー行進曲のVR映像を実況しよう――少し変わった授業のようにも思えるが、先の中学校の事例を踏まえて考えると「結構“アリ”ではないか」と思えてくる

 石光氏は、これまでの音楽科の授業では鑑賞にCD音源を使うことが多いと語る。しかし、「CD音源では、オーケストラ全体の響きを味わうことしかできなかった」と課題も指摘する。

 授業ではまず、オーケストラ全体の音源(=CD)を聞かせたという。するとある児童が「シンバルの音によって、行進曲らしい感じが出ている」という感想を寄せた。しかし、同じ児童がVR映像を見たら「これはシンバルではなく大太鼓だ!」と気が付いたのだという。

 気付いたきっかけはシンプルで、シンバルをたたいていたと思っていた場面で、大太鼓がたたかれていたことを“視覚的に”確認したことだ。「(映像を見た後)『この大太鼓の力強い音色が行進曲感を出している』と彼は気が付き、すぐさま実況に反映してくれた」(石光氏)という。

 視覚面から各楽器の音色を捉えやすくする上で、VR映像が大いに役立ったことが分かる。

感想 ある児童がオーケストラ全体の音源を聴いて感じたこと。この時は「シンバル」が使われていると思っていたのだが……
大太鼓 VR映像を通して実際は「大太鼓」を使っていたことが分かった。児童が感じた「力強さ」は、シンバルではなく大太鼓によるものだったということになる

 別の児童は「ピッコロ」に注目をして実況を行ったという。

 ご存じの方もいるかと思うが、ピッコロはフルートよりもさらに小さい。そのため、一般的なオーケストラの映像では見えづらかったり、そもそも視認できなかったりすることもある。

 しかし、VR映像なら視点を変えて視聴できるため、ピッコロのような小さな(目立たない)楽器でも、どのように演奏しているのか分かりやすい。この児童はグループで実況文を考えていたようで、学習用端末(Chromebook)から流れる音声をスプリッター(分配器)を介してイヤフォンで同時に聞いていたそうだ。これぞまさに「協働的な学習」である。

 授業では3人1組で9班に分かれて実況文を作っていたそうだが、どの班もVR映像を何度も繰り返し見て、より納得感の高い文章に作り帰って行ったそうだ。

ピッコロ VR映像なら、ピッコロのような小さな楽器でも“寄って”見ることができる
ピッコロ そのこともあってか、ピッコロに着目をして実況を仕立てた班もあったという

 「見る」という観点に立つと、オーケストラの演奏を“目の前で”見せるという方法も考えられる。しかし、石光氏はVR映像は同じ所を繰り返し見られることと、演奏の様子を演者の“間近”で見られるという、生演奏では得られないメリットもあると語る。音と映像の関連性も分かりやすくなるため、楽器の“音色”を知る上でも効果は高い。

 今後、池田小学校/中学校では、VR映像を活用した授業の実践を重ね、手作りのVR教材も積極的に制作していく予定だ。

効果 VR映像を使った授業の成果。楽器と音色を結び付ける効果はもちろん、協働的な学習にも一定の成果があると判断したという
実体験 セミナーの第2部は、写真のように実際に使われた教材を“体験”しながら進められた

大学生の「理科実験」講義にもVR教材を活用

 続いて大阪教育大学の串田一雅教授(理数情報教育系)登壇し、大学1年生向けの「理科実験」に関する解説教材をVR映像として制作した際のエピソードを紹介した。

 通常の動画の制作では、複数の場所(視点)で撮影した複数の動画を編集して“ひとまとめ”にする手間が掛かる。複数台のカメラで同時に撮るという方法もあるが、手間とコストはどうしても掛かってしまう。

 そこで串田氏は、1カ所に置いたVRカメラの映像をアプリで編集した後、Blinkyに投稿した。学生は、Blinkyに投稿された動画をスマホやPCで視聴して、実験の方法や動作を確認できるという仕組みだ。

 このやり方は、教える側における教材作成の労力の大幅な削減はもちろん、学生側にとっても画角の変更や拡大/縮小によって、見たい所をしっかりとチェックできるというメリットがある。ある意味でWin-Winな取り組みだ。

串田教授 大阪教育大学の串田一雅教授
VR教材 串田教授が2023年度の後期(第3/第4ターム)に担当した講義「物理化学実験I」において、学生が視聴する実験映像をVR教材として作ることになった
環境 撮影/編集や視聴環境。決して最新鋭というわけでもないが、そこそこのスペックのPCを使い、比較的短時間で作成できたという
実際に見る 実際に投稿されたコンテンツの事例。凸レンズにおける実像の見つけ方を、VR映像で解説している
角度を変える 角度を変えることで、臨場感のある映像を見られる
時短効果 本文にもある通り、複数台のカメラを使う撮影方法だと、撮影の手間はもちろん編集にも時間が掛かる。しかし、VRカメラを使う方法なら手間や時間を大幅に短縮できるのがメリットだ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月24日 更新
  1. “置き場所に困る”大容量ポタ電の壁を打破! 冷蔵庫を3日動かすEcoFlow「DELTA Gen4」シリーズが日本上陸 (2026年10月23日)
  2. 若者向けのカラフルな新「Dell 14S」が日本上陸 11月1日まで4.5万円引きの14万9800円から (2026年10月22日)
  3. 折りたたみ型から薄型まで! スマホやタブレットで“本気”の文字入力に使える持ち運び用キーボードを選ぶコツ (2026年10月23日)
  4. FCCLが「FMV Keyboard X」の一般販売を開始 ハイスペックマウス「FMV Mouse X」も同時発売 (2026年10月22日)
  5. 「Galaxy Watch9」を1週間使って分かったこと Pixel Watchと比べた使い勝手は? (2026年10月23日)
  6. 「iPhone Duo」を1週間使って分かった、全部盛りではない“上質さ” 心地いい開閉ヒンジの内部を見るために“非破壊検査”してみた (2026年10月21日)
  7. 天空が12月25日に発売する「GPD WIN Max 3」国内正規版 実機に触れてきた (2026年10月23日)
  8. スマホは「バッグの中」から「外」へ AULUMUのスリングバッグ2種で移動時のプチストレスを解消した (2026年10月22日)
  9. 約22万円の新型「Mac mini」で初めてのローカルAI体験 ストレージの価格高騰対策にピッタリかも (2026年10月20日)
  10. PFUから33万円キーボード「HHKB Professional Elite」登場! 英語配列のみで有線特化の“原点回帰” 全世界300台限定 (2026年10月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー