ただし、その小型軽量化のトレードオフとして、頑丈さに関連する性能がFZ-40と比べて控えめになっている。パナソニックは「頑丈性能」という項目を設けてTOUGHBOOKの頑丈さを示しているが、その中で、FZ-40とFZ-55の違いは次の通りだ。
MILスペック(米国防省が定める工業製品の環境耐性評価試験に関する規格)は、頑丈さを示す性能全般の指標として利用され“がち”だが、TOUGHBOOKでは耐振動に関連した試験だけを選択して実施しているという。
耐衝撃関連の試験に関しては独自基準の耐落下試験を実施しており(とはいえ、MILスペックで指定する耐衝撃試験に近い)、内容は本体の26方向で落とす動作試験、そして、本体の6方向で落とす非動作試験となっている。
これらの試験における落下距離に違いがある。FZ-40は180cmに耐えられるのに対し、FZ-55は90cm、同様に非動作試験でFZ-40はコンクリート90cmであるのに対し、FZ-55は合板76cmとなっている。
頑丈さの性能で重視される防塵防水滴性能では、JISが定める(そしてその国際規格としてIECが定める)IPコードを用いて示している。こちらもFZ-40がIP66なのに対し、FZ-55はIP53にとどまっている。
IP指標では左の値(第一特性数字)が外来固形物に対する保護等級(=防塵性能)、右の値(第二特性数字)が水の浸入に対する保護等級(=防水性能)を示している。
防塵性能においてIP6Xが「粉じん試験機内で一定の負圧を作りだした状態を8時間連続で実施し、機器内部に粉じんが一切入らない」ことを確認するのに対して、IP5Xは「粉じん試験機内で標準大気圧を維持した状態を8時間連続で実施して機器内部に許容範囲内の粉じんが入るが、機器の正常な動作を阻害しない」ということを確認できればいいとしている。
防水性能においては、IPX6が高圧ウォータジェット(12.5mmノズル)を使って各方向から圧力100kPaから150kPaで毎分100L噴射した水に3分間耐えることを求めているのに対し、IPX3はスプレーノズル(直径0.8mm)を使って垂直から60度以内の角度で毎分0.7Lを低圧で噴射して10分間耐えられればいいというものだ。
防水性能を示すIPコードのそれぞれで定義とその要約、試験内容は具体的に定められている。IPX6ならば「暴噴流(powerful jet)に対して保護できる」=「あらゆる方向からのノズルによる強力なジェット噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない」のに対して、IPX3は「散水(spraying water)に対して保護できる」=「鉛直から両側に60度までの角度で噴霧した水によっても有害な影響を及ぼしてはならない」としている。
とはいえ、その試験内容が自然現象である天候のどの程度に相当するのかを具体的に示す客観的規定はない。その代わりに「防滴」「生活防水」「耐水」「防水」や「防霧」「生活防水」「水洗い防水」「水中防水」など業界団体やメーカーなどによってユーザーの実利用場面に合わせた基準を独自に提示する例がある。
その中に、日本写真機工業会(JCIA:1954年4月発足、2002年6月解散。後継団体としてカメラ映像機器工業会が2002年7月に発足)が1997年にまとめた「防水カメラの種類と表示」において、保護等級ごとに具体的な降雨条件と照らし合わせた指標が提示されている。
保護等級3および4に関しては「10mm/分の降雨量で5分の試験(総降雨量50mm)は単位時間当たりの降雨強度としては強い雨に相当し、さらに総降雨量で激しい雨(筆者注:日本気象協会が予報作業指針で“激しい雨”と表現する基準の降雨量は1時間当たり40〜50mm)のレベルを超える降雨量に当たる」としている。
「なんだ、IPX3でも結構タフじゃん」と筆者は思う。ただし、試験時間が5分と短時間であること、日本気象協会が定める激しい雨の降雨量が“1時間当たり”と試験時間と比べてはるかに長時間であることを勘案して、ドキュメントでは保護等級3および4に関する考察の末尾に「実際の最大雨量の長時間撮影を考慮しない前提で生活防水形(=同じドキュメントでごく短時間の小雨での撮影は可。水洗いは不可と定めている)」と記述している。
加えて、保護等級3の試験内容にあるように、散水方向が試験対象機器の鉛直から周囲60度までの範囲に限られる。これは、降雨を想定しているからではあるけれど、FZ-40で実施する保護等級6の「実際に水がかかるおそれのある全ての方向から」と比べると水のかかる方向は限定される。
実際のフィールドワークでは激しく降っている状態の雨粒は地面に当たって相当の量が跳ね返る。「水がかかるおそれのある全ての方向」はその跳ね返りも想定した試験条件ともいえる。
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