主要なアプリを確認してみたところ、おおむねArmネイティブ対応していたが、もちろんまだネイティブ対応できていないアプリも多数存在している。x86/x64エミュレーションはなかなか優秀だったので、いくつか試してみよう。
パスワードマネージャーとして有名な「1Password」については、まだArmネイティブ対応はしておらず、x64で動作することが分かる。しかし動作自体は何ら問題無く、パスワードの管理から、ブラウザの拡張機能を利用したパスワードの自動補完、Windows Helloを使ったロック解除まで正常に動作する。
こうしてみると、やはりx86/x64エミュレーションの互換性も高いし、「利用できないアプリはないのでは」と考えていたのだが現実はそう甘くはなかった。
IME(日本語入力)で有名なATOK Passportを筆者は愛用しているので、Surface Laptop 13.8インチモデルにインストールしてみた。インストール自体は問題なく完了するのだが、Armネイティブアプリでは何をやってもATOKが利用できず、Microsoft IMEに強制的に切り替わってしまう。
試しにArmネイティブ非対応アプリで、ATOKが利用できるか試してみたところ、正常にATOKが利用できることが分かる。このことから、Arm版WindowsでもATOKのインストールは可能だが、Armネイティブアプリでは利用できず、x86/x64エミュレーション下で動くアプリでしか利用できない。
開発元であるジャストシステムも、ATOK Passportの動作環境ページに「※Arm版Windowsは動作保証外です」との記載しているため、現時点ではArm版Windowsに完全対応できていない状況だ。個人的にはATOKが利用できない点はかなり苦痛を感じるため、開発元のArmネイティブ対応がリリースされることを期待して待ちたいところだ。
いくらx86/x64エミュレーションが優秀であっても、OSコンポーネントに近い所に影響を与えるアプリについては、ネイティブ対応していなければ正常に動作しないため、注意が必要だ。
続いてはAdobe Creative Cloudをチェックしていこう。筆者はAdobe Creative Cloudのコンプリートプランを契約しているので、基本的に全てのアプリが利用できるはずなのだが、Arm版WindowsにインストールしたCreative Cloud Desktopアプリを開くと表示されているアプリが少ない。
試しにメインのデスクトップPCでCreative Cloud Desktopアプリを開くと、利用できる全てのアプリが表示されている状態だ。いろいろと原因を確認してみると、Arm版Windowsで動作するアプリは下記だけで、それ以外は動作しないためインストールボタンが表示されていない事が分かった。
Adobe Acrobatをインストールしようとすると、「IntelベースバージョンのAcrobatをインストール」というダイアログが表示され、x64版のインストールが開始される。実際にインストールしてみると、バイナリ変換の処理のせいかインストールに非常に時間がかかる。
ただ一度インストールさえしてしまえば、動作自体は特に引っかかりもなく快適に動作するので、現時点でも既に利用には問題ない状態だ。
続いてAdobe Photoshopを使って、Nikon Z5で撮影したRAWデータを読み込み、「被写体を選択 デバイス(高速)」と「被写体を選択 クラウド(詳細な結果)」を試してみたが、速度としてもかなり早く、メインのデスクトップPCと遜色ない動きを見せる。手元のモバイル用ノートPCでも、RAWデータの編集作業や、同人誌の原稿作業ができるので、Adobe Photoshop用のマシンとしてはかなり優秀だ。
ただし、残念な点もあって原稿執筆時点でのCamera RAW(Arm)16.4では、Nikon Z6IIIで撮影したRAWデータに対応しておらず、データの編集ができない。IntelベースのCamera RA 16.4では既にNikon Z6IIIで撮影したRAWデータにも対応しているので、RAWの互換性の観点からは、少し頼りない印象を受ける。
その他の主要なアプリへの対応については、Adobe社が専用のナレッジベースを公開している。具体的には下記の通りだ。
現時点ではネイティブ対応しているAdobeアプリは少ない物の、主要なアプリについても精力的に対応作業が進められているようなので、ひとまず安心と言ったところだろうか。
Armネイティブ対応したAdobe Photoshopの動作が非常に快適だったので、より動作の重たいAdobe After EffectsやAdobe Premiere Proが、Snapdragon Xシリーズでどれくらい快適に動作するのか期待が膨らむ。
現在も基本的なアプリは動作するが、やはりArmネイティブ対応したアプリの充実を期待したい
普段よく利用しているアプリを中心に、Snapdragon X Eliteを搭載したSurface Laptop(第7世代)でテストしてみたが、結果としてはおおむね快適に動作することが分かり安心した。
x86/x64エミュレーションについても、当初は間違ってx64版のGoogle Chromeをインストールしても気付かなかったほどには優秀であることも分かったが、OSコンポーネントに影響を与えるアプリについては、一部動作しないアプリや、開発元が明確に現時点では非対応である、としているアプリも散見されている。
「Surface RT」の頃と比べると、状況としては雲泥の差ではあるが、それでもより広くArm版Windowsを普及させるためには、Armネイティブアプリの充実が鍵となることには変わりない。
ただ、現時点では特に悲観的になる必要も無いだろうと筆者は考える。それは、Windows RTの頃と違って、MicrosoftがArm版Windowsのエコシステム整備にハードウェアの面でも、ソフトウェアの面でも積極的に取り組んでいるためだ。
手元にあるSurface Laptop(第7世代)とともに、Arm版Windowsの今後どのように進化していくのか楽しみでたまらない。
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