x86/64アプリの動作もエミュレーションで対応可能であることは分かったが、実際に筆者が普段利用しているアプリが正常に動くのか、詳しくチェックしていこう。
まずは、メインで使っているWebブラウザのGoogle Chromeだ。Windows開発キット2023が発売された当初は、Arm対応はしていなかったのだが、2024年の初頭にリリースされたCanaryビルド(試験運用版)のVer.123.0.6288.0にて、Arm版Windowsに対応した。しばらくテストが行われた後、2024年3月末に正式対応となった。
ChromiumベースのMicrosoft Edgeは、Windows開発キット2023が発売された時点で既にArmネイティブ完了していたが、個人的には普段から利用しているGoogle Chromeをネイティブアプリとして利用したかっただけに、このニュースは非常にうれしい出来事だった。さらにこれなら「メインのノートPCをArmアーキテクチャのPCにしてもいいな」と考えたきっかけでもあった。
過去にWindows開発キット2023のレビューを行った際にも触れたが、ネイティブ版と比べてx86/64エミュレーションではオーバーヘッドが発生する分、パフォーマンスも落ちることに触れたが、それだけでなく余計な処理を挟まなくなるため、バッテリーの持ちにも大きく影響してくる。
PCを利用する時間の中で大多数の利用時間を誇るWebブラウザがArmネイティブ対応することは、ArmアーキテクチャのPCを選定する上で非常に大きな追い風となる。
ただ1点注意すべき点がある。Surface Laptop(第7世代)の購入当初、wingetコマンドでGoogle Chromeをインストールした際は、Arm版ではなくx86版がインストールされた。ある程度、Windowsに精通した方ほど、Arm版ではなく実はx86版を使っていた、なんて可能性があるので注意してほしい。
余談ではあるが、筆者も引っ掛かった1人でもある。これは裏を返せば普段利用では、アプリがx86/64エミュレーションで動いている事に気付きにくい、ということを経験できた。
続いてはMicrosoft社がリリースしているVisual Studio Codeだ。テキストエディタにとどまらず、豊富な拡張機能や内包されたターミナルのおかげで、今ではGoogle Chromeに次いで必須アプリとなった。
こちらはMicrosoft製アプリということもあり、Microsoft Edgeと同じくWindows開発キット2023が発売された頃には既にネイティブ対応が完了していた。デフォルトのままではそこまでCPUリソースを利用しないが、拡張機能を複数組み合わせて利用することを考えると、早期からArmネイティブ対応が完了しているのは非常にありがたい。
続いてはWSL2を見てみよう。筆者は普段、Linuxを利用する際はDebian GNU/Linuxを愛用しているため、WSL2でもUbuntuではなくDebian GNU/Linuxを導入している。
こちらも特に普段と変わらない方法でWSL2を有効化し、Microsoftストア経由でインストールしたのだが、しっかりArmネイティブ対応だと確認できる。
1つ注意点を挙げるとすると、neofetchの実行結果からも分かる通り、Arm64版のDebian GNU/Linuxが動作しているので、WSL2向けに何か導入する手順を解説した書籍や、Webサイトの情報をそのままコピペして利用すると、x86_64向けにビルドした実行ファイルをダウンロードしてしまい、結果として動かないなんてこともある。
基本的にはソースコードをダウンロードして、ビルドするかaptなどのパッケージ管理ツールを使うので、そこまで気にする物でも無いが、念のために覚えておきたい。
Docker for Desktopについても。Microsoft Build 2024にてArmネイティブ対応が発表され、Ver.4.30からArmネイティブ対応しているのだが、執筆段階では少し注意が必要だ。
Docker for Desktopを公式サイトからダウンロードしてインストールしたのだが、Unexpected WSL errorが発生してしまう。詳しく確認してみると、Docker for Desktopがx64エミュレーションで動作しており、Arm版WSLにうまく対応できていないことが分かった。
それもそのはずで、Arm版のDocker for Desktopはまだβリリースにあり、ダウンロードページからはダウンロードできない。
Arm版のインストーラをダウンロードするには、Docker for Desktopのリリースノートのページから、「Windows Arm Beta」をクリックする必要があるので、もしDocker for Desktopを利用する場合は注意されたい。
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