PCで行う「重たい処理」は、何もゲームに限ったことではない。写真や動画の編集でもCPUパワーが求められるシーンは多い。時間の都合で、今回は「Adobe Lightroom Classic」を使って写真(RAWファイル)の現像(書き出し)処理に要する時間のみ計測した。
本アプリでは写真の編集時にはGPUもフル活用しているが、写真の現像処理にはCPUを使っている。つまり、現像はCPUのパフォーマンスを見る上で有用なのだ。
テストでは、レンズ交換式カメラ「Nikon Z 7II」で撮影したRAWファイル100枚分を、解像度を維持したままJPEGファイルとして書き出すのにかかる時間を測定した。結果は以下の通りだ。
Ryzen 9000Xシリーズがここまで早いのは予想外だった。Core i9-13900Kも、「4000万画素超のRAWファイルを連続で100枚現像」と考えれば十分過ぎるほどに高速なのだが、それを上回っている。
余談が、筆者のプライベートで使っているPCのCPUは「Core i7-12700F」で同じテストを行うと1分以上かかる。Ryzen 9000Xシリーズは下位モデルでも、かなり高速に動作するということだ。
Ryzen 7000Xシリーズの登場から約2年。新アーキテクチャを採用したRyzenを心待ちにしていたファンにとって、Ryzen 9000Xシリーズは納得感のある性能向上が図られていると言っていいだろう。特にシングルコア性能の向上はめざましく、各種テストにおいてCPUがボトルネックとなりうる部分で“遅れ”を取ることはなかった。
個人的にお勧めなのは、ラインアップで“最下位”となるRyzen 5 9600Xだ。今回比較したCPUの中で極端にスコアが離されることもなかったので、「CPUはミドルレンジに、抑えたコストはグラフィックスカードやストレージに回す」という戦術を採れば、高いバランスの取れたPCを作れるはずだ。もちろん、浮いたコストをゲーミングデバイスやディスプレイに回すのもいいだろう。
なお、消費電力だが、今回のテスト環境ではアイドル時で「91W」、3DMark(Time Spy Extreme)実行中のピーク時でRyzen 7 9700Xは「507W」、Ryzen 5 7600Xは「497W」となった。GeForce RTX 4080 SUPERの消費電力(320W)を考えると、CPUはかなりの省エネといってもいいだろう。この調子なら、新しくPCを組む際にCPUクーラーの選択肢を広げやすい。幅広い構成に対応しやすい点も評価できる。
いずれにしても、Ryzen 9000シリーズは2年ぶりのアーキテクチャ刷新に見合うだけの性能向上を果たしている。既存PCのアップグレードでも、これから新規に組むのであっても積極的に選びたいCPUだ。
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