ここからは、Ryzen 5 7600XとRyzen 7 9700Xの実力をベンチマークテストを通してチェックする。今回はAMDから借りたCPUと、各種自作PCパーツを組み合わせてベンチマーク環境を構築している。
また比較用として、過去にベンチマークテストを実施したRyzen 7000Xシリーズのスコアや、今回のテスト環境と同様に、外部GPUとしてGeForce RTX 4080 SUPERを搭載したPCにおけるスコアを掲載している。ベンチマークソフトを含め、現在とバージョンが異なるため、あくまでも参考値程度に捉えてもらえれば幸いだ。
まず、3Dレンダリングを通してCPU/GPUのパフォーマンスを確認できる「CINEBENCH 2R23」を実行した。スコアは以下の通りだ。
シングルコアのスコアについては、Ryzen 9000シリーズはスコアが先代比で10%程度向上している。シングルコアでのスコアについては、ライバルのCoreプロセッサ(第14世代)の同等モデルを上回っている。一方、マルチコアのスコアは伸びてはいるものの、幅はそれほど大きくない。
シングルコア性能がモノを言う傾向にあるPCゲーミングをメインに据えるなら、良い選択肢となりそうだ。
次は、PCの総合的な性能をチェックできる「PCMark 10」の結果を見ていこう。
なお、ここからはRyzen 9000シリーズとCore i9-13900Kを搭載するPCで比較していく。総合スコアは以下の通りだ。
PCMark 10は、Webブラウジングやオフィスソフトの利用といった処理の軽いものから、ビデオ会議や画像編集といった重たい作業まで、PCで行われる多くの作業をまとめてテストする“総合テスト”だ。テスト中は、意図的にいくつかの作業を並行して行うシーンも用意されている。
基本的に、並行作業は物理コア(あるいはスレッド数)が多いCPUほど優位に立ちやすい。ゆえに、1世代前とはいえ現行製品(第14世代)と性能に大差のないCore i9-13900Kが優位……と思いきや、僅差だがRyzen 7 9700Xがトップに立った。
先のCINEBENCH R23の結果でもそうだが、Ryzen 9000Xシリーズはシングルコアの性能が改善している。いくらコア数が多くとも、全てのコアを使い切るシーンは限られるため、純粋に1コア当たりの処理能力が結果を左右したと考えていいだろう。
続けて、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」の主要テストを一通り実行してみた。今回はDirectX 11ベースの「Fire Strikeシリーズ」と、DirectX 12ベースの「Time Spyシリーズ」における総合スコアは以下の通りだ。
DirectX 11ベースのFire Strikeシリーズでは、Ryzen 9000XシリーズがCore i9-13900Kを大きく引き離す結果となった。グラフィックスドライバーの改善という要素もあるのだが、それを差し引いたとしても、旧世代の他社製フラグシップCPUに“勝っている”ということ自体驚きだ。
一方、DirectX 12を使用するTime Spyシリーズでは、Core i9-13900Kが勝ったものの、Ryzen 9000Xシリーズも健闘している。すごく端的な推測だが、「コアが少ない分が、そのままスコア差につながった」という感じの僅差だ。
なお、先に少し触れた通り、PCゲームの多くでは、シングルコア性能がパフォーマンスを左右する。言い換えると多コアを生かし切れないケースが少なくない。世代の近いCPUでは、コア数の多さがゲームの体験に与える影響はごくわずかといえる。
むしろ、PCゲーミングを考えると、コア1基当たりの性能が高い方がスコア(≒パフォーマンス)は伸びやすい。3DMarkのスコアは、Ryzen 9000シリーズ(Zen 5アーキテクチャ)の「シングルコア性能を高める作戦」がうまく行っている証拠だ。
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