AMDは9月30日19時から、デスクトップ向けCPU「Ryzen 7000シリーズ」の販売を解禁する。税込みの想定販売価格は以下の通りとなっている。
Ryzen 7000シリーズは、新しい「Zen 4アーキテクチャ」を採用していることはもちろんだが、従来のデスクトップ向けRyzenシリーズと互換性の“ない”CPUソケットを採用したことなど、注目すべきポイントが多い。
マザーボードやメモリモジュールなどを“総入れ替え”しても購入する価値のあるCPUなのか――今回、日本での発売に先駆けてRyzen 7000シリーズを試用する機会を得たので、その“真価”をチェックしていこうと思う。購入を検討している人の参考になれば幸いだ。
詳しいベンチマークテストを開始する前に、Ryzen 7000シリーズの概要を改めて解説していく。
AMDによると、新しく採用したZen 4アーキテクチャは「2桁パーセント台のIPC(クロック当たりの処理命令数)向上」「大容量L2キャッシュと効率向上による処理遅延(レイテンシー)の軽減」「動的な電力コントロールによる消費電力抑制」を大きなテーマに据えて開発されたという。先代の「Zen 3アーキテクチャ」と比べると、主に以下の改良が施されている。
Ryzenといえば、デスクトップPCにおける“多コア化”を促すきっかけになったブランドでもある。ただし、全てのアプリがたくさんのコアを操り切れるわけではない。特に、今回の新製品がメインターゲットに据える「ゲーミング」では、シングルコアの性能がモノをいう場面も少なくない。そういう意味では、Zen 4アーキテクチャは着実な機能強化を図っているということである。
CPUコアは、L3キャッシュと一体化された「CCX(Core Complex)」として実装されている。この構造はZen 2アーキテクチャ、Zen 3アーキテクチャと引き継がれてきたもので、Zen 4アーキテクチャのCCXは、Zen 3アーキテクチャにおける基本設計を踏襲している。
ただし、Zen 4アーキテクチャではCPUコアのL2キャッシュ容量が1MBに倍増された。また、これに命令キャッシュの拡大や命令エンジンの改良などを組み合わせることで、IPCの向上につなげている。
Zen 4アーキテクチャのCPUコアは、AMDとしては初めてIntelが開発した拡張命令セット「AVX-512(Advanced Vector Extension 512)」をサポートしている。
AVX-512は機械学習/分析アプリ、3Dモデリングアプリ、動画のエンコーダーなど、産業向けアプリを中心に利用例がある。とりわけ演算量が大きくなる場面では処理パフォーマンスの向上を期待できる。
ただし、この命令セットを開発した当のIntelは、コンシューマー向けCPUにおけるAVX-512のサポートを縮小する傾向にある。言い方を変えると、Zen 4アーキテクチャのCPUはコンシューマー向けにおいて“貴重な”AVX-512対応CPUということになる。常用しているアプリがAVX-512に対応していることが分かっている場合は、かなり“有力な”選択肢となることは間違いない。
Zen 4アーキテクチャでも、CCXは「Infinity Fabric」を通してI/Oダイと接続される。Ryzen 7000シリーズのI/Oダイには最大2基のCCXを連結可能で、主に以下の機能も統合されている。
(※1)x4レーンのうち1本は、チップセットとの通信用(残り2本はNVMeストレージとの接続を想定)
今まで、AMDではGPUを統合したCPUを「APU(Accelerated Processing Unit)」と呼称していた。今回、Ryzen 7000シリーズはI/OダイにRDNA 2アーキテクチャのGPUを統合しているが、APUではなく「CPU」とされている。
この内蔵GPUの主なスペックは以下の通りだ。
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