最後に、Ryzen 7000シリーズの消費電力を確認してみよう。
今回登場したRyzen 7000シリーズは、モデル名に「X」が付くハイエンドモデルである。それゆえにTDP(熱設計電力)も高めで、Ryzen 5 7600XとRyzen 7 7700Xは105W、Ryzen 9 7900XとRyzen 9 7950Xはさらに高い170Wとなっている。170WというTDPは、過去のRyzenシリーズと比べてもかなり高い。
それゆえに、Ryzen 7000シリーズを使って自作PCを組む場合は電源の容量をどうすべきか迷う所もある。そこで、今回のテスト機でRyzen 7000シリーズの消費電力を計測してみよう。Windowsにログインした後、10分間放置した状態を「アイドル状態」、3DMarkのTime Spy Extremeを実行している時を「高負荷時」として、それぞれの消費電力をワットチェッカーで確かめた結果は以下の通りだ。
TDPが170WとなったRyzen 9は高負荷時の消費電力が500Wを余裕で超えている。GPU自体の消費電力が高め(定格値で最大300W)ということもあるが、Ryzen 9シリーズにハイエンドGPUを組み合わせる場合は少なくとも750W、できれば850W以上の出力を持つ電源ユニットを組み合わせるべきだろう。
エントリークラスのRyzen 5 7600Xでも、高負荷時の消費電力は475Wとなっている。組み合わせるGPU次第だが、Ryzen 5 7600Xでも750W出力の電源ユニットを用意した方が安心できそうである。
Ryzen 7000シリーズは、従来モデルと同様に省電力モード「AMD Eco Mode」に対応している。このモードでは、CPUのTDPをコントロールすることで、消費電力と発熱を抑制できる。AMDが行った自社テストによると、65WのTDPで稼働するように設定したRyzen 9 7950Xは、フルパワーの「Ryzen 9 5950X」と同等か、それを上回るパフォーマンスを発揮できるという。
なお、Ryzen 7000シリーズの発売に合わせて、AMDはEco ModeをSocket AM5における標準的な機能と位置付けると同時に、設定方法を簡単にする。Ryzen Masterアプリも、その方針に合わせてアップデートされる予定だ。
AMDのいう通り、Ryzen 7000シリーズは「最高のゲーミングCPU」といえるだけのパフォーマンスを備えている。2021年冬に登場したデスクトップ向けの第12世代Coreプロセッサに悔しい思いをしていたAMDファンにとって、ある意味で「反撃体制」が整ったともいえる。3〜4世代前のCPUを搭載するゲーミングデスクトップPCを愛用している人にとっても、買い換え(組み替え)先として理想的な選択肢の1つとなるだろう。
ただし、先に触れた通りCPU自身の消費電力が大きめなので、電源ユニットの容量には余裕を持たせた方が良い。加えていうなら、消費電力が大きいということはCPUの発熱も大きいということでもある。
今回は240mmラジエーターの簡易水冷システムを用意した上で、室温を24度まで下げてテストを行ったのだが、特にRyzen 9 7900X/7950Xでは、ピーク時のCPU温度が80度を超えることも多かった。冷却システムは「少なくとも簡易水冷」と考えて検討した方が良さそうである。
電源容量と冷却に余裕を持たせることで、現状のRyzen 7000シリーズは“真の”パフォーマンスを発揮できる。そのことはぜひ覚えておいてほしい。
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