96MBのL3キャッシュは効果あり? AMD 3D V-Cache搭載の「Ryzen 7 5800X3D」の実力をチェック!(1/4 ページ)

» 2022年05月20日 12時00分 公開
[迎悟ITmedia]

 4月22日、AMDの新型CPU「Ryzen 7 5800X3D」が発売された。想定販売価格は6万3500円(税込み)だが、多くの自作PCショップでは品薄状態が続いている。

 2022年後半にデスクトップ向けの「Ryzen 7000シリーズ」の登場が予告されている中、新機軸のパワーアップを果たしたCPUの実力はいかほどのものか、チェックしていこう。

パッケージ 「Ryzen 7 5800X3D」のパッケージ
右側面 パッケージの右側面の窓からは、Ryzen 7 5800X3Dの姿が見える

Zen 3アーキテクチャを維持しつつ「3D V-Cache」でパワーアップ

 ベンチマークテストを始める前に、Ryzen 7 5800X3DがどんなCPUなのか、新たに分かった情報を交えつつ振り返っていこう。

 Ryzen 7 5800X3Dはデスクトップ向けRyzen 5000シリーズの追加ラインアップの1つとして登場する。既存モデルと同様に7nmプロセスの「Zen 3アーキテクチャ」を採用し、8コア16スレッド構成を取っている。動作クロックは3.4GHz〜4.5GHzで、2020年11月に発売された「Ryzen 7 5700X」と比べるとベースクロックが400MHz、最高(ブースト)クロックが200MHzほど低下している。

 Ryzen 7 5800X3Dは、Zen 3アーキテクチャベースで8コア16スレッド対応のCPUだ。

 動作クロックはベースクロックが3.4GHz、最大ブーストクロックは4.5GHzに設定されている。2020年に発売された従来モデルである「Ryzen 7 5800X」と比較すると、動作クロックはベースクロックで0.4GHz、最大ブーストクロックで0.2GHz低下している。

 ……と、ここまでの話を聞くと「Ryzen 7 5800Xからむしろパワーダウンしているのでは?」と思ってしまうが、Ryzen 7 5800X3Dは独自の「AMD 3D V-Cache Technology」を適用することでL3キャッシュメモリが32MBから96MBに増量されている。

3Dチップレット Ryzen 7 5800X3Dは、3Dチップレット技術によってL3キャッシュメモリを積層的に追加実装している
構造概略図 Zen 3アーキテクチャのCCD(Core Complex Die)の上に、64MBのL3キャッシュメモリを載っけるような構造となっている。積層するために、シリコン貫通電極を用意し、銅材同士を直接接着している
積層は想定していた AMDによると、Zen 3アーキテクチャのCCDは当初からL3キャッシュの積層搭載を想定した設計を行っていたという。積層されるL3キャッシュも(当たり前かもしれないが)7nmプロセスで製造されている
直接接着 銅材同士の直接接着は、AMD 3D V-Cache Technologyの“要”の1つである
9μmピッチ 接着ピッチは9μmピッチとかなり細かい
互換性 3D積層実装によって、従来のRyzen 5000シリーズとの互換性を確保できたという

 L3キャッシュの容量が増えたことによって、低下したクロックを上回る動作パフォーマンスの改善を果たしている。AMDによると、ゲーミングのパフォーマンスは「Ryzen 9 5900X」(3.7GHz〜4.8GHz、12コア24スレッド)と比べて平均で15%向上するという。

 CPUソケットは従来通り「Socket AM4」で、Ryzen 5000シリーズに対応するマザーボードであればそのまま利用できる。マザーボード、電源容量や冷却ソリューション次第ではあるが、Zen 2アーキテクチャのRyzen 3000シリーズからのアップグレードはもちろん、同じRyzen 5000シリーズでも「Ryzen 5 5600X」(3.7GHz〜4.6GHz、6コア12スレッド)からのアップグレード先として期待できる。

 ただし、マザーボードによっては搭載する前にUEFI(BIOS)の更新が必要だ。更新しなくても一応動く場合もあるが、Ryzen 7 5800X3Dの“全力”を引き出せない可能性が高い。搭載前にマザーボードメーカーのWebサイトなどでアップデートの情報を確認しておこう。

見た目は同じ Socket AM4をそのまま使うこともあり、Ryzen 7 5800X3Dの外観は既存のデスクトップ向けRyzen 5000シリーズと変わらない
組み込んでみた Ryzen 5000シリーズに対応するマザーボードであれば、マザーボードにそのまま組み込んで利用できる。ただし、マザーボードによっては事前にUEFIの更新が必要な場合があるので、マザーボードメーカーのWebサイトなどを確認してみよう
CPU-Z 「CPU-Z」で確認したRyzen 7 5800X3Dの情報
AMDによる指標 AMDによると、Ryzen 7 5800X3DはRyzen 9 5900Xよりも平均で15%のゲーミングパフォーマンス改善が望めるという。ただ、さすがにクロックがモノをいう面がある「CINEBENCH R23(シングルコア)」のスコアは少し劣るようだ
AMDの示した指標 競合のIntelの「Core i9-12900K」と比べても、多くのゲームでより同等かより高いパフォーマンスを発揮するという
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