続けて、「3DMark」を使って3Dグラフィックスの描画パフォーマンスを確かめてみよう。3DMarkでは複数のテストが用意されているが、今回はDirectX 12ベースの「Time Spy」とDirectX 11ベースの「Fire Strike」を実施した。結果は以下の通りだ。
総合スコアベースで見てみると、先のPCMark 10の総合スコアからさらに差を縮めており、Fire StrikeではRyzen 7 5800XDが“逆転勝利”を果たしている。
Fire Strikeにおけるスコアを精査してみると、Ryzen 7 5800X3Dは「グラフィックススコア」と「混合スコア」でCore i7-12700Kを上回っている。ただし、GPUの処理性能を見た結果であるグラフィックススコアは本当に僅差で、CPUとGPUの両方の処理性能を見た結果である混合スコアで大きく優位に立った。これが総合スコアでの逆転につながった。
先述の通り、CPUに対する命令が立て込んできた場合は、L2/L3キャッシュが多ければ多いほど処理パフォーマンスは改善する傾向にある。L3キャッシュの大きさが、この逆転劇に一役買ったともいえる。
もう考えてみると、この結果は「ゲーミングPCとして求められる性能」を重視してPCを構成した場合はIntel製CPUが性能面で有利とは限らないという証左でもある。AMDは、Ryzen 7 5800X3Dのゲーミング性能について「Ryzen 9 5950X比で最大15%向上する」とアピールしているが、決して大げさな売り文句ではない。
ここからは、実際のゲームタイトルをベースとするベンチマークテストを試してみよう。まずは負荷も軽く、ゲーミングPCの推奨タイトルとして挙げられることも多い「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」で比較をしてみる。設定は「最高品質」、解像度は「フルHD(1920×1080ピクセル)」「WQHD(2560×1440ピクセル)」「4K(3840×2160ピクセル)」の3種類のウィンドウ表示でテストした結果は以下の通りだ。
いずれの解像度でもRyzen 7 5800X3Dの方が高いスコアを記録した。両CPU共に4Kにおいてスコアが急激に落ち込んでいるのは、GPUがボトルネックになってしまった結果だろう。
FF14シリーズは、今となっては比較的負荷の低いゲームである。ただ、メインメモリのアクセス速度やL2/L3キャッシュの容量がスコアに影響しやすいことでも知られる。そのような特性もあり、L2/L3キャッシュの容量が大きいRyzen 7 5800X3Dが優位に働いたものと思われる。
より負荷の高いゲームでのパフォーマンス差も確認すべく、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」も実行してみた。画質は「高品質」とし、フルHD、WQHD、4Kの3つの解像度でウィンドウ表示をした場合のスコアを比較しよう。結果は以下の通りだ。
FF14ベンチマークと比べると、どの解像度も両CPUがデッドヒートを繰り広げた。超僅差でフルHDとWQHDはCore i7-12700Kが、4KはRyzen 7 5800X3Dが勝っている。ただ、ここまで性能差が少ないとなると、実際のゲームでは差が分からないかもしれない。
ゲームのパフォーマンスは、CPUやGPUへの最適化によって大きく変わることがある。その観点に立つと、FF14ベンチマークとFF15ベンチマークはIntel製CPUとNVIDIA製GPUへの最適化が行われているとされる。GPUはさておき、CPUという観点ではRyzen 7 5800X3Dは“不利”になりそうな気もする。
しかし結果の通り、Ryzen 7 5800X3Dは最適化の結果を覆すような好スコアを記録した。多くのゲームを楽しむ上で、Ryzen 7 5800X3Dは最強のCPUの1つであるといえるだろう。
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