ここからは、Ryzen 9 9900XとRyzen 9 9950Xの実力をベンチマークテストを通してチェックする。今回はAMDから借りたCPUと、各種自作PCパーツを組み合わせてベンチマーク環境を構築している。
また比較用として、過去にベンチマークテストを実施したRyzen 9000Xシリーズの下位モデルとRyzen 7000Xシリーズのスコアや、今回のテスト環境と同様に外部GPUとしてGeForce RTX 4080 SUPERを搭載したPCにおけるスコアを掲載している。
直近で行ったRyzen 9000Xシリーズの下位モデルのテストを除き、現在とはテスト環境が異なることもあり、あくまでも参考程度に捉えてもらえれば幸いだ。
まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスを確認できる「CINEBENCH R23」を実行した。スコアは以下の通りだ。
シングルコアのスコアについては、直近で測定したRyzen 5 9600XやRyzen 7 9700Xと大きな差がない。同じアーキテクチャで動作クロックにも大差がないので当然といえば当然だが、Ryzen 7000Xシリーズと比べるとシングルコアの性能は着実に改善していることは間違いない。
マルチコアのスコアに目を向けると、Ryzen 9 9950Xは4万ポイントの大台に乗った。これまでも「Ryzen 9 7950X」や「Core i9-14900K」において4万ポイント近くを記録したことがあるものの、あくまで“近く”だった。
今回、CPUに対するオーバークロックは特に設定していない。標準設定のままでも4万ポイントを超えるとは、新時代の到来を感じる。
余談だが、筆者が先日まで使っていたメインPCのCPU「Ryzen Threadripper 3970X」(32コア64スレッド)も、マルチコアのスコアは4万ほどだった。Ryzen 9 9950Xは半分のコアで同等の演算能力を有すると評価されているわけで、やはり進化の度合いはすごいと思う。
次は、PCの総合的な性能をチェックできる「PCMark 10」の結果を見ていこう。
ここからは、Ryzen 9000XシリーズとCore i9-13900Kを搭載するPCで比較していく。総合スコアは以下の通りだ。
PCMark 10は、Webブラウジングやオフィスソフトの利用といった処理の軽いものから、ビデオ会議や画像編集といった重たい作業まで、PCで行われる多くの作業をまとめてテストする“総合テスト”だ。テスト中は、意図的にいくつかの作業を並行して行うシーンも用意されている。
並行作業は、物理コア(あるいはスレッド数)が多いCPUほど優位に立ちやすい。しかし前回、8コア16スレッドのRyzen 7 9700Xは、合計で24コア32スレッドを備えるCore i9-13900Kを上回るスコアを記録した。1コア当たりの性能改善に加えて、「全部がPコア」という設計方針が奏功したものと思われる。
今回のテストでは、Ryzen 9 9900XはRyzen 7 9700Xに僅差で負けているが、これは誤差の範囲だろう。そして、Ryzen 9 9950XはRyzen 7 9700Xに勝っているものの、そこまで大きな差とはなっていない。
日常利用だけではRyzen 9 9900X/9950Xの性能は持て余す――そういうことなのだろう。
続けて、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」の主要テストを一通り実行してみた。今回はDirectX 11ベースの「Fire Strikeシリーズ」と、DirectX 12ベースの「Time Spyシリーズ」における総合スコアは以下の通りだ。
Ryzen 9000Xシリーズ内で比較をすると、「Ryzen 9 9950X>Ryzen 9 9900X>Ryzen 7 9700X>Ryzen 5 7600X」という感じで上位ほどスコアが向上している。
当初、「Ryzen 9 9900X/9950Xなら、Core i9-13900Kに勝てるのではないか?」と思っていたのだが、DirectX 11ベースのFire Strikeシリーズでは“ほぼ”完勝、DirectX 12ベースのTime Spyシリーズでは全敗という結果となった。惜しい……。
このあたりのスコア差は、今後のOSやデバイスドライバの最適化などで埋まったり逆転したりという可能性もある。一概に「最新世代でも、Intelの1世代前の最上位には勝てない」と判断するのは尚早だろう。
今回は時間の都合で試せなかったが、AMD純正のユーティリティーアプリ「Ryzen Master」などを使えば、スコアをもう少し改善できたかもしれない。
ここまでのテストではっきりと言えるのは、「シングルコア性能の向上の効果は大きく、まだまだ伸びしろがあるはず」ということだ。
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