既報の通り、Intelがデスクトップ向け最新CPU「Coreプロセッサ(第14世代)」(開発コード名:Raptor Lake-S Refresh)のアンロック版を発表した。日本でも10月17日午後10時から販売が始まるため、本記事が出る頃にはPCパーツショップやECサイトなどで販売が始まっているだろう。日本での実売価格は、5万6000円程度(Core i5-14600K)〜11万円弱(Core i9-14900K)となる。
発売に先立ち、ITmedia PC USERでは「Core i9-14900K」「Core i7-14700K」「Core i5-14600K」を試す機会を得た。その“実力”をベンチマークテストを通してチェックしていこう。
【更新:12月15日22時25分】プロセッサ名の表記を一部改めました
ベンチマークテストの結果を紹介する前に、第14世代Coreプロセッサの基本的な仕様をおさらいしよう。
「Raptor Lake-S Reflesh」という開発コード名の通り、第14世代Coreプロセッサは第13世代Coreプロセッサ(開発コード名:Raptor Lake-S)のリフレッシュ(マイナーチェンジ)版という位置付けだ。
今回発表された中で最上位モデルとなる「Core i9-14900K(F)」は、パフォーマンスコア(Pコア)の動作クロックが最大6GHzとなっている。これは第13世代Coreプロセッサのスペシャルモデル「Core i9-13900KS」のみが到達していた動作クロックだ。これを通常モデルでも実現している点が一番分かりやすい進化といえる。
最上位モデルだけでなく、他のモデルも動作クロックの引き上げが行われた。「Core i7-14700K(F)」については、Eコアの追加(8基→12基)とL3キャッシュの増量(30MB→33MB)も行われている。
型番末尾に「K」を冠するアンロック対応モデルは、オーバークロックを楽しむための機能に対応している。この点にも改良が施されており、より高速なメモリモジュールへの対応や、コア単位のサーマルスロットル管理の改善も図られている。
単純に考えると、CPUの基本性能面では第13世代Coreプロセッサよりも確実に速くなるであろう進化が盛り込まれた格好だ。
対応フォームファクターは第12世代/第13世代Coreプロセッサと同じ「LGA1700」。ゆえに両プロセッサに対応する「Intel 600シリーズ」「Intel 700シリーズ」のチップセットを備えるマザーボードを流用できる。
ただし、製品によっては事前にUEFI(BIOS)をアップデートしないと第14世代Coreプロセッサを認識できない(≒電源が入らない)場合があるので注意が必要だ。
過去2世代のCPUとの置き換えにも対応できるので、今使っているPCのアップグレード手段としても有効な手段の1つとなるだろう。
次ページからは、ベンチマークテストを通して新CPUの実力をチェックしていく。
ここからは、ベンチマークテストの結果を通してCoreプロセッサ(第14世代)の実力をチェックしていく。
今回のテストではASUS JAPANの協力を仰ぎ、Intel Z790チップセットを搭載する新型マザーボード「ROG MAXIMUS Z790 DARK HERO」と、オールインワン水冷ユニット「ROG RYUJIN III 360」を組み合わせたシステムを用意した。GPUも現行のハイエンドモデルとしてAMDの「Radeon RX 7800 XT」を接続している。
ROG MAXIMUS Z790 DARK HEROは、10月20日に発売が予定されている新型マザーボードだ。フォームファクタはATXで、Coreプロセッサ(第14世代)をフルパワーで動かしても耐えられる20+1+2フェーズ電源設計の回路を搭載している。
電源回路や高速なM.2 NVMe SSDも十分に冷やせる大型のヒートシンクが各部に装着されるなど、ハイエンドパーツで構成する場合には有力な選択肢となるマザーボードなのは間違いない。
今回のテスト機材の主なスペックは以下の通りとなる。
今回のテストでは、上記のCPUのスコアを比べていくが、グラフには参考として1年前に実施した第13世代Coreプロセッサのアンロック対応モデルのテスト結果も記す。
手始めに、3Dレンダリングを通してCPUの性能を確認する「CINEBENCH R23」を実行してみたところ、スコアは以下の通りとなった。
テスト環境では、第13世代Coreプロセッサよりもおおむね好成績となった。
第12世代から第13世代の変化と比べると、今回はアーキテクチャとして刷新された部分は少ない。ゆえに劇的な性能向上が見込めるわけではないが、特にシングルコアは動作クロックの引き上げがプラスに働いていることが分かる。
ただし、Core i9-14900Kのマルチコアスコアは少し落ち込んでしまった。複数のCPUコアをガンガン回すアプリを使う場合は、よりしっかりとした冷却ソリューションを導入した方が安定したパフォーマンスを出しやすくなるかもしれない。
続いて2D/3Dアニメーション制作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリ「Blender Benchmark」のWindows版を使って、CPUによるレンダリングパフォーマンスをチェックする。
今回はベンチマークアプリ内に用意された「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオにおいて、1分間あたりの生成サンプル(オブジェクト)数を計測している。結果は以下の通りだ。
Core i5とCore i9については、第13世代と比べてスコアがほぼ横ばいか、むしろ少し減ってしまった。一方でEコアとL3キャッシュが増えたCore i7は、スコアが確実に伸びている。ある意味で、第14世代ではCore i7が進化を体感しやすい。
余談だが、第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake-S)の「Core i7-12700K」と比べると、Eコアは4基から12基と3倍まで増えている。この結果を踏まえると、Core i7-14700Kはアップレードパーツとして有力な候補になりうる。
次はULの総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」を用いて、普段のPC操作におけるパフォーマンスのチェックを行った。テスト結果における総合スコアは以下の通りだ。
どのCPUも、2022年の第13世代のスコアを上回っている。驚くほどの伸びとは行かないが、やはり最高クロックが上がった効果はある。
クロックが向上すると、アプリの立ち上げが速くなる。そこまでの処理パワーを必要としない場面では、Eコアが多い分だけマルチスレッド処理において有利になるようだ。
特に高クロックやゲーミング性能に注目が集まるCoreプロセッサ(第14世代)だが、普段使いのPCでも積極的に選びたい選択肢になりそうだ。
今回は、PCMark 10と同様にPCの総合パフォーマンスを評価する「CrossMark」も実施している。総合スコアは以下の通りだ。
第13世代のレビュー時は本テストを省いてしまったが、今回のレビューに合わせて第13世代プロセッサでもCrossMarkを実行してみた。当時はなかったテストなので、こちらの値は参考に掲載しておく。
PCMark 10の総合テストと同様に、第14世代は第13世代からスコアが微増という感じで、EコアとL3キャッシュが増えたCore i7では伸びが大きめという傾向にある。
それほど値段が変わらないのであれば、第14世代を買った方がわずかばかり幸せになれそうな予感がする。
続けて、新CPUを使って3Dグラフィックスやゲームに関するテストを実行してみよう。
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