Intelは9月27日(米国太平洋夏時間)、自社イベント「Intel Innovation 2022」において、「第13世代Coreプロセッサ(開発コード名:Raptor Lake)」のハイエンドデスクトップ向け製品を発表した。米国では10月20日の発売を予定しており、想定販売価格は294ドル(約4万2500円)〜589ドル(約8万5000円)となる。
なお、一般のデスクトップ向け製品やモバイル(ノートPC)向け製品に関する情報は、後日改めて発表される。
【追記:2時】今後登場予定の製品について追記しました。画像も追加しています。
第13世代Coreプロセッサの最上位モデル「Core i9-12900K」のパッケージを手にするパット・ゲルシンガーCEO
第13世代Coreプロセッサ(Raptor Lake)のアンロック対応デスクトップ版は「世界最速のデスクトッププロセッサ」をうたう
第13世代Coreプロセッサの概要
第13世代Coreプロセッサは、第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)の改良版である。製造プロセスは「Intel 7(10nmプロセス)」で変わりないが、以下の取り組みを通してパフォーマンスの向上を図っている。
- パフォーマンスコア(Pコア)の最大クロックの向上
- 今回発表された製品では最大5.8GHzでの駆動に対応
- 高効率コア(Eコア)の基数の増加
- Eコアの最大クロックの向上
- L2キャッシュの容量増加
- Pコアは1基当たり2MBに
- Eコアは1ユニット(4基)当たり4MBに
- L3キャッシュ(Intel Smart Cache)の容量増加
- より高速なメモリモジュールのサポート
- 今回発表された製品ではDDR5-5600をサポート(DDR4メモリは従来通り)
上記の改良により、最上位製品の「Core i9-13900K」は、従来の最上位製品である「Core i9-12900K」と比べてシングルスレッド性能は最大15%、マルチスレッド性能は最大41%向上したという。
各種の改良を通して、シングルスレッド性能は最大15%、マルチスレッド性能は最大41%向上したという(SPEC CPU 2017を用いて計測した自社測定値)
Pコア(開発コード名:Raptor Cove)は、第12世代のPコア(開発コード名:Golden Cove)と比べて最高クロックを600MHz引き上げた他、L2キャッシュの容量を増やし、ダイナミックプリフェッチャーのアルゴリズムを改良することでパフォーマンスアップを図っている
Eコアは4コア単位で1ユニットを形成することに変わりないが、最大で4ユニット(=16コア)搭載できるようにした他、Pコアと同様の改良を施すことでパフォーマンスを改善している
先に挙げたシングルスレッド/マルチスレッド性能を貢献の度合い別に棒グラフとして表した資料。縦軸は恐らくスコアを示していると思われるが、動作クロックの向上だけでなく、特にマルチスレッド性能ではL2/L3キャッシュの増量やEコアの追加が結構大きな効果をもたらしているようである
各種改良に伴い、CPU自体の最大消費電力(後述)も少し高くなっている。ただし、Intelの説明によると、Core i9-13900Kは65Wの電力でCore i9-12900Kのフルパワー(241W)と同等のマルチスレッド性能を発揮できるという。消費電力を抑えて運用しても、パフォーマンスの改善を期待できるようだ。
PコアとEコアに作業を割り振る「Intel Thread Director(ITD)」にも改良が加えられ、Windows 11 2022 Updateで改良されたタスクスケジューラーと組み合わせることで、特にバックグラウンドタスクの処理効率が向上するとのことだ。
Core i9-13900Kは、65Wの電力でもCore i9-12900Kのフルパワー(241W)と同等のマルチスレッド性能を発揮できるという。マルチスレッドがモノをいうアプリを多用する場合は、(その是非はさておいて)あえて消費電力を抑える設定をして運用しても性能アップを期待できそうである
ソフトウェア面でもパフォーマンスを改良する工夫がなされている
その他の主な仕様は、第12世代Coreプロセッサと変わらない。チップセットとマザーボードや無線LAN/Bluetoothモジュール(※1)は、第12世代Coreプロセッサ向けのものを流用可能だ(※2)。
一方で、Intelは第13世代Coreプロセッサの登場に合わせて、新型チップセット「Intel 700シリーズ」を発表した。Intel 700シリーズは現行の「Intel 600シリーズ」に機能を追加したものだという。概要スペックが出ている最上位製品「Intel Z790」は、現行の最上位となる「Intel Z690」と比べると、以下の改良が施されているという。
- チップセット側のPCI Express 4.0バスのレーンを8つ追加
- USB 3.2 Gen 2x2ポートの最大数の増加
- DMI 4.0バスの実効通信速度の改善
(※1)Wi-Fi 6E(6GHz帯のIEEE 802.11ax)に対応するモジュールは、現時点において日本国内で6GHz帯を使った通信に対応しません。Intelは6GHz帯を含む認証を取得する手続きを進めていますが、実際に使えるようになるかどうかはマザーボードメーカーの対応次第となります(参考記事)
(※2)第13世代Coreプロセッサを搭載する前に、UEFIを更新しなければならない場合があります
第13世代Coreプロセッサは、第12世代Coreプロセッサ用のチップセット/マザーボードを流用できる。新型チップセットとして「Intel Z790」も登場する
マザーボード(とメモリモジュール)は流用できるものの、第13世代Coreプロセッサを搭載するためには事前のUEFI更新が必要なケースもある。なお、Z790チップセットを搭載するマザーボードは、ASUS、GIGABYTE、MSI、ASRockなど主要なメーカーから登場するという
今回のラインアップ
先述の通り、今回発表されたのはデスクトップ向け製品(Raptor Lake-S)のうち、CPUやメモリのアンロック(≒オーバークロック)に対応するもの(型番の末尾に「K」が付くもの)だ。実際にアンロックできる範囲は、組み合わせるマザーボードのチップセットによって異なる。内蔵GPU(Intel UHD Graphics 770)を備えるモデルの他、内蔵GPUを省いたモデル(型番の末尾に「F」が付くもの)も用意される。
具体的なラインアップは以下の通り。
- Core i5-13600K(F)
- CPU(Pコア):6コア12スレッド(3.5GHz〜5.1GHz)
- CPU(Eコア):8コア8スレッド(2.6GHz〜3.9GHz)
- L3キャッシュ容量:24MB
- 消費電力(ベース):125W
- 消費電力(最大):181W
- 想定販売価格(GPUなしモデル):294ドル(約4万2500円)
- 想定販売価格(GPU付きモデル):319ドル(約4万6000円)
- Core i7-13700K(F)
- CPU(Pコア):8コア16スレッド(3.4GHz〜5.4GHz)
- CPU(Eコア):8コア8スレッド(2.5GHz〜4.2GHz)
- L3キャッシュ容量:30MB
- 消費電力(ベース):125W
- 消費電力(最大):253W
- 想定販売価格(GPUなしモデル):384ドル(約5万5500円)
- 想定販売価格(GPU付きモデル):409ドル(約5万9000円)
- Core i9-13900K(F)
- CPU(Pコア):8コア16スレッド(3GHz〜5.8GHz)
- CPU(Eコア):16コア16スレッド(2.2GHz〜4.3GHz)
- L3キャッシュ容量:36MB
- 消費電力(ベース):125W
- 消費電力(最大):253W
- 想定販売価格(GPUなしモデル):564ドル(約8万1500円)
- 想定販売価格(GPU付きモデル):589ドル(約8万5000円)
アンロック対応デスクトップ向け製品のラインアップ
Intelの研究所での検証では、液体窒素を使ったオーバークロッキングでPコアの8GHz超の駆動とDDR5メモリの毎秒1万MT(DDR5-10000相当)の駆動を確認できたそうである。水冷を組む場合は、第12世代Coreプロセッサにおける同等製品で使えるソリューションを用意すれば良さそうだ
2023年初頭には「Core i9-13900KS(仮)」が登場?
Intelによると、第13世代Coreプロセッサは今回発表した6モデルを含めて50超の製品を用意しているという。先述の通り、そのラインアップは後日発表となるが、2023年初頭に数量限定で最大6GHz駆動に対応するデスクトップ向けCPUを発売することが判明した。第12世代Coreプロセッサにおける数量限定モデルの例に従うと、そのモデル名は「Core i9-13900KS」になる可能性が高い。
2023年初頭に数量限定で6GHz駆動に対応するデスクトップCPUを発売するという。第12世代Coreプロセッサにおける「Core i9-12900KS」にならうとすると、そのモデル名は「Core i9-13900KS」になりそうである
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