PCで行う「重たい処理」は、何もゲームに限ったことではない。写真や動画の編集でもCPUパワーが求められるシーンは多い。時間の都合で、今回は「Adobe Lightroom Classic」を使って写真(RAWファイル)の現像(書き出し)処理に要する時間のみ計測した。
本アプリでは写真の編集時にはGPUもフル活用しているが、写真の現像処理にはCPUを使っている。つまり、現像はCPUのパフォーマンスを見る上で有用なのだ。
テストでは、レンズ交換式カメラ「Nikon Z 7II」で撮影したRAWファイル100枚分を、解像度を維持したままJPEGファイルとして書き出すのにかかる時間を測定した。結果は以下の通りだ。
前回もRyzen 9000Xシリーズの下位モデルの現像スピードに驚いたところだが、Ryzen 9 9900X/9950Xは、CPUコアが増えた分だけさらに高速化していて一層驚いた。
筆者の現在のメインPCは「Core i7-12700F」なのだが、こちらは同じ書き出しに1分以上の時間がかかる。Ryzen 9 9950Xに乗りかえたら、半分以下の時間で書き出しを完了できてしまう――これは本当にビックリするしかない。
仕事柄、筆者は写真を100枚以上現像することが意外と多い。製品発表会などの後は、かなりまとまった数の写真の編集/現像を行う。プライベートでも、子供の学校行事などはベストな写真を数枚選んだつもりが気付けば100枚を超えているようなこともざらだ。
いずれにしても、「少しでも早くデータ(JPEG写真)を送らなければならない」ことも多いため、書き出し時間を大きく短縮できるRyzen 9000Xシリーズは、それだけで魅力的に感じられる。
Ryzen 9000Xシリーズの中でも上位モデルとなるRyzen 9 9900X/9950Xだが、正直にいうとゲーム“だけ”ではその優れた性能を生かし切れないかもしれない。もちろん、1コア当たりの演算性能は高いので、ゲームのパフォーマンスも高めてくれることは間違いないのだが、それなら前回紹介した下位モデルでも十分に役割を果たせる。
ゲームだけでなく、クリエイター系アプリを使う機会が多いユーザーにこそ、Ryzen 9 9900X/9950Xはピッタリだ。まだまだ“余力”を感じるので、今後さらに重たいゲームタイトルやアプリが出てきたとしても、余裕で動かせるだろう。これからPCのアップグレードや新調を行う際に「長く使える1台」を目指すのであれば、両CPUは最有力候補となるのは間違いない。
ちなみに消費電力だが、今回のテスト環境ではアイドル時で「91W」、3DMark(Time Spy Extreme)実行中のピーク時でRyzen 9 9900Xで「546W」、Ryzen 9 9950Xで「573W」となった。さすがに、Ryzen 9 9950Xはやや“電気食い”だが、Ryzen 9 9900Xは思ったよりも消費電力が少ない(とはいえ、Ryzen 7 9700Xよりは大きい)。
Socket AM5に対応するマザーボードやDDR5メモリなど、Ryzen 9000Xシリーズを迎え入れるに当たり、環境を刷新する必要がある人も多いとは思う。しかし、先述の通り、Ryzen 7000Xシリーズから単純に置き換えるだけでもパワーアップを図れる。価格も、Ryzen 7000Xシリーズの登場時と比べると“落ち着き”を感じる。
Ryzen 9000Xシリーズは、先代や競合と比べても、魅力的な高性能コンシューマー向けCPUだと言っていいだろう。
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