続いて、実際のゲームをベースとするベンチマークテストを実行してみよう。
まず、比較的軽量な「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14旧ベンチマーク)」を試してみる。
本来であれば、最新バージョンの「ファイナルファンタジーXIV: 黄昏のレガシー ベンチマーク(FF14新ベンチマーク)」を実施したかったのだが、比較用のCore i9-13900K環境においてテストした時点では同ベンチマークはリリース前だった。そのため、今回はあえて旧バージョンでのテストを実施して比較する。
画質設定は「最高品質」として、フルHD(1920×1080ピクセル)/WQHD(2560×1440ピクセル)/4K(3840×2160ピクセル)の3つの解像度でテストを行った。結果は以下の通りだ。
こちらのテストでは、なぜかRyzen 9 9900X/9950Xのスコアが伸び悩んだ。さすがに「あれ?」と思ったので、設定を見直してみたのだが、おかしい部分は見受けられない(前回の計測と同様に、CPUやマザーボードの標準設定のままとしている)。何度か計測し直したのだが、数値に有意な変動はなかったため、今回はそのまま掲載することとする。
伸び悩んだ原因として考えられるのは、CPUやGPUへの最適化が十分でないことだろう。FF14旧ベンチマークはリリースが古いため、Ryzen 9 9000Xシリーズの多コアを生かし切れないという面もあるかと思う。
では、負荷のやや重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」では、スコアに差が付くのだろうか。今回は画質を「高品質」として、FF14旧ベンチマークと同じ3つの解像度でテストを行った。結果は以下の通りだ。
フルHDとWQHDでは、Ryzen 9 9950XはCore i9-13900Kよりもスコアが高い。Ryzen 9 9900Xも、スコア的には悪くない。全体的にRyzen 9000Xシリーズは、物理コア数で勝るCore i9-13900Kといい勝負をしている。
スコアを細かく見てみると、Ryzen 9000Xシリーズの中で下位モデルが“逆転”して勝利しているケースもある。これは先述の通り、多コアへの最適化がなされていないことが原因として考えられる。
だが、CPUのシングルコア性能の向上が総じてスコア向上に貢献しているという構図は変わらない。後述するが、多コアのメリットを明確に生かせるシーンもある。
CPUだけでなく、GPUにも大きな負荷を掛ける場合、Ryzen 9 9900X/Ryzen 9 9950Xはどこまで“戦える”のだろうか。今回は「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(アーマードコア6)」「Cyberpunk 2077」「Microsoft Flight Simulator」の3タイトルで、平均フレームレートをチェックしてみよう。
アーマードコア6では、フルHD/WQHD/4Kの3解像度で画質設定「最高」にしてテストを行った。表示モードは「フルスクリーン」、上限フレームレートは「120(fps)」として、ゲーム前半の関門ステージ「ウォッチポイント襲撃」をプレイした際の2分間の平均フレームレートを「CapFrameX」で計測している。
結果は以下の通りだ。
アーマードコア6は、比較的最近(といっても1年前)のゲームタイトルで、PlayStation 5などの据え置き型ゲーム機にも展開されている。そのこともあり、グラフィックスの美麗さの割に、CPUやGPUへの負荷は軽めだ。そのため、ある程度強いグラフィックスカード(GPU)を用意すれば、4K解像度でも上限の120fps近いフレームレートを平均して記録できる。
とはいえ、CPUかGPUのどちらかが低性能だと良好なフレームレートは出ない。開発コストを最適化する観点から、最近は大作ゲームタイトルでも据え置き型ゲーム機とPCの両方で楽しめるケースが増えた。
Ryzen 9000Xシリーズを搭載するPCを用意すれば、ゲーム環境の“一本化”も現実的な選択肢になるだろう。
現行のPCゲームの中でも、上位を争う高負荷タイトルであるCyberpunk 2077では、ゲーム内に設けられたベンチマーク機能を使って平均フレームレートのチェックを行った。
ゲーム設定はプリセットの「レイトレーシング:ウルトラ」を選択し、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度でテストした。DLSS(超解像技術)も有効にし「クオリティ・フレーム生成あり」をオンにしている。結果は以下の通りだ。
Cyberpunk 2077で高画質と高フレームレートを両立するには、高品質な超解像技術とフレーム補間機能を備える「高性能なGPU」だけではなく、演算性能の高い「高性能なCPU」も求められる。
今回、Ryzen 9 9950Xはもちろんのこと、Ryzen 9 9900Xも優秀なフレームレートを記録している。GPU(GeForce RTX 4080 SUPER)の優れた性能をしっかり引き出せた結果といえる。
もっとも、このゲームタイトルをもってしても、12基あるいは16基のCPUコアを“全て”生かし切っているかというとそうでもない。ただ、多コアと高クロックによるフレームレートの“底上げ”効果は十分に得られている。重たいPCゲームには、Ryzen 9000Xシリーズが有用だ。
Microsoft Flight Simulatorも、重量級タイトルとして定番だ。高精細に描かれる風景は、さながら実写を見ているかのような再現度だ。一方で、その分読み込まれるデータ量が多いことから、GPUだけでなくCPUにもかなりの負荷がかかる。
今回はDLSSをオンにしてフレーム生成も有効とし、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度においてディスカバリーフライトの「モナコ」をAI操縦し、CapFrameXで2分間の平均フレームレートを計測した。結果は以下の通りだ。
このゲームでも、Ryzen 9 9900X/9950Xの平均フレームレートは優秀……なのだが、前回テストした下位モデルとほぼ同等か、少し下回ってしまっている。これも、ゲーム側が多コアを生かしきれていないゆえの結果だと思われる。
とはいえ、1コア当たりの性能は高いゆえに、肉眼でゲーム画面を見ている限り極端に引っかかるような動作が劣る場面はない。動作は非常にスムーズだ。
各種テストの結果だが、まずRyzen 9000シリーズの底力として、やはりシングルコアの性能向上の恩恵がとにかく大きいということが挙げられる。
さまざまなシチュエーションでシングルコア性能が向上した結果、スコアが先代や競合と比べ大きく伸長している。どんなGPUを組み合わせるかにもよる部分も大きいが、ゲーミング用途に選ぶCPUとして有力な進化を遂げていることは間違いない。
その上でRyzen 9 9900XやRyzen 9 9950Xに絞って話をすると、≪マルチコアをどこまで生かせるかが、選ぶ上での鍵となる。現状では、10基を超えるCPUコアを使い倒せるアプリの数はまだ限られる。
特にゲームはその傾向が顕著だ。多コアCPUは、ゲーム側の最適化状況によって本領を発揮できない可能性もゼロではない(むしろ動作が遅くなるタイトルもありうる)ことは覚えておくといいだろう。
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