それでは、iPadでの動作を見ていきましょう。記事の執筆時点ではCLIP STUDIO PAINTとProcreateのプリセットを選ぶことができます。
接続するとソフトウェアキーボードの自動表示が解除され、ボタンやダイヤルを動かすと文字入力が発生します。つまり、iPadから見ると「キーボードデバイス」です。動作はアプリのキーボードショートカットに依存するわけですね。ドライバなどでシステムの深くに関与できないiPadでは、妥当な仕様です。
また、Procreate用には現状β版の「ジェスチャーシミュレート」機能も実装されていて、ズームや回転がタッチ操作をしたかのように利用できるとアピールされています。
これはOSの制約の中どうやっているんだろうと不思議だったのですが、実際には「トラックパッド」のフリをしているようです。TourBoxの設定アプリから離れたときなどにマウスカーソルが表示されるのを見ることができますし、実際にダイヤルで回転やズームを使ったときにもマウスカーソルが表示されます。
こういうのを見ると、「よく考えたな」「がんばってるな」という気持ちになりますが、問題もあります。「本物のトラックパッドと動作や設定が競合する」のです。
iPadの設定でトラックパッドの速度をカスタマイズしていたり、iPadの操作にマウスやトラックパッドを利用していると、TourBoxが想定している位置にカーソルが行かず、端の方でズームや回転が発動したり、発動に失敗することもあります。
TourBox Elite Plusは、iPadのようなOSの制限の強いデバイスに対応するために、キーボードやトラックポイントのフリをする能力を身につけました。とはいえ、先にEliteをレビューしたときにも述べた通り、本機のすごさと利便性のキモはドライバアプリにあり、iPad上ではその多くを享受できません。
ざっと試した限りですが、iPadで使う上での現状の制限を挙げると
といったところです。アプリやファームウェアの更新で改善することもあるでしょうが、キーボードやトラックパッドの枠の中でしか動けないことの限界が高くないのも確かでしょう。HUDなどは最近のPC版アプリのアップデートでずいぶん便利になって、チートシート的にも使えるレベルになっていると思うので、なかなか残念な点です。
また、CLIP STUDIO PAINTのようなPC版と同等のアプリを使っていると忘れがちですが、iPadではキーボードショートカットがPC版ほど豊富でないアプリも多く、割り当てたくても割り当てられない機能が出てくるのも注意を要します。
上記のようにドライバアプリの優位性の多くが封じられている状況では、キーボードデバイスそのものや、キーボードのフリができるゲームパッドなどが手ごわいライバルになってきます。
特に、以前レビューした「8BitDo Micro」は、iPadアプリからマッピングをカスタマイズでき、iPadと一緒に持ち歩きやすいサイズと軽さ、その割に多い16キーと、なかなか見どころがあります。
一方で、もしPCでの作業をTourBoxで最適化していて、iPadでも慣れた操作を利用したいならば、TourBox Elite Plusが唯一の選択肢です。
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